「早く、私を助けんか!」

 ユエルに攻撃をされている中、召喚師さんはサモナイト石に魔力を注いでいる。
 光を帯びたそれを、頭上に掲げた。

「・・・チッ、おい!」
「・・・?」

 目の前の悪魔くんが、苦しそうな表情でを見つめた。

「本当に、アイツを何とかしてくれるんだろうなァ!?」

 その問いに、は笑顔でうなずくことで返答した。

「じゃ、じゃあ・・・グゥゥッ!!??」
「お、おい!どうしたんだ!?」

 槍を落としてひざまずく彼に、は駆け寄ろうと刀を収めた。

「来るんじゃねェ!!」

 駆け寄る前に、彼がをにらみつけながら怒鳴る。
 額から汗をにじませて苦しそうにしているのに。

「早くあの野郎をなんとかしろ!俺が俺でいられる間に!!」
「・・・どういうことだ!?」

 その意味深なセリフに、は彼に聞き返した。




     サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第16話  支配するもの




「・・・ンなことは終わってから話す!」

 未だ苦しそうな顔つきのまま、さらに強くをにらむ。
 少なからず殺気も感じられた。

「・・・わかった。気をしっかり保ってろよ!!」

 は、一直線に離れた場所にいるユエルと召喚師の下へ向かった。














「うひゃあっ!?」

 掲げたサモナイト石の光に、ユエルは思わず顔を隠す。
 しかし、彼女自身にはなんの衝撃もない。
 おそるおそる顔を覗かせると、杖を振りかぶった男の姿が見えた。

「はああぁぁぁっ!!!」
「ぐうっ!?」

 振り下ろされた杖の先端部分を脳天に受けて、ユエルはその場に倒れこみ頭を抱える。
 痛みに耐えながら、男を見る。
 にやけた表情で杖をさきほどと同じように振りかぶっていた。
 これから来るであろう衝撃に備えて、涙でにじむ目をぎゅっと閉じた。


「ユエルに何やってんだ、このやろ!!」


 げし。


「ぶろあぁっ!?!?」


 聞きなれた声と、変な音と、目の前の男の悲鳴。
 あおむけに寝そべったまま薄目をあけてまわりを見渡す。
 目の前には、召喚師の男ではなく彼女の召喚主が立っていた。

っ!?」
「・・・平気か、ユエル?」

 彼は、笑顔でユエルに手を差し伸べた。














「くそ、待ってろよ!」

 一目散に武舞台の上を走る。
 武舞台はあまりにも広い。召喚師のために広く作ってあるのだろう。
 なかなか目的地にたどり着けずに小さく舌打ちをした。

 ある程度2人が見えるくらいの距離に縮まったところで、召喚師がユエルを杖で殴りつけているのが見えた。
 ユエルは上から頭部に打撃をもらい、その場に倒れた。

「あんにゃろ、ユエルになんてことを!!」

 すでに、召喚師は倒れたユエルの上にもう一撃加えようと杖を振りかぶっている。
 は、一刻も早くかけつけようと身体をかがめた。


「ユエルに何やってんだ、このやろ!!」


 ユエルに向かって杖が振り下ろされる直前で召喚師に向かって飛び蹴りを加える。
 「ぶろあぁっ!?!?」という悲鳴と共に彼は吹っ飛び、少し離れたところに落ちた。

っ!?」

 ユエルが頭を抱えたままを見て声をあげた。

「・・・平気か、ユエル?」

 彼女に向かって笑みを見せながら手を差し出す。
 その手を取って彼女は立ち上がった。

「うううぅ〜っ!」

 立ち上がったユエルは脳天を手でさすっている。
 は彼女の手をどけて攻撃を受けた部分をまじまじと見つめた。

「こぶになってるな。後でメリルに召喚術、かけてもらおうな」
「・・・うん」

 返事を聞くと、俺はもだえている召喚師をにらみつける。

「悪いな。今は一刻を争う。手伝ってくれ」
「わかった!!」

 つかつかと彼に近づき、襟元をつかむ。

「ひいぃっ!」
「彼を元に戻せ!」

 の声を聞いて何がおかしいのか、さきほどまでおびえていた召喚師は表情を変え
 なにか裏のある笑みを浮かべる。
 その笑みに、はもう一度強く彼を解放するように告げた。

「そんなことしてていいのかな?」
「なんだと・・・?」

 そのとき、背後からユエルの慌てたような声と殺気を感じて、とっさに彼から手を離して飛び退いた。

 刹那。
 その場所、もともと俺がいた場所を槍が通りぬけた。

「あ、危な・・・」

 槍の所有者は、先ほど苦しそうな顔をしていた護衛獣であるサプレスの悪魔。
 槍が空を切ったことを認識すると、こちらを殺気のこもった目でにらみつけた。

 彼の紅い瞳には、光がない。

「彼になにをした!?」
「・・・ケホッ。なぁに、言うことを聞くように細工をしていたのだよ。所詮、召喚獣などただの道具にすぎんからな」
「なっ・・・!?」
「・・・ひどいよっ!!」

 乱れた襟元を正しながら、召喚師は答えた。
 そして、彼から放たれた答えは、以前戦った組織のそれと似通っている。

 は内からふつふつと湧き上がる怒りを感じながら、彼をにらみつけた。
 隣のユエルは、涙で目をにじませながら全身の毛を逆立たせている。

「・・・絶対に許さないぞ!」

 ユエルの声とともに彼をにらみつけたまま、刀を抜き放つ。
 2人の視線に、彼は数歩後ろへあとずさり、召喚術の詠唱を始めた。

「・・・絶対に彼の誓約を解除させてやる・・・」

 操られた護衛獣の少年の動きをユエルが封じこんでいる間に、は召喚師に向かって走り出した。
 すでに彼はサモナイト石を構えて詠唱を始めている。

「・・・くそぉっ!!」

 狙いをユエルたちに向けていることを悟り、召喚術の発動を阻止せんとスピードを上げた。
 それが功を奏してか、詠唱が終わる前に彼のもとにたどりついた。

「はああぁぁぁっ!!」
「・・・ぐっ!?」

 刀を横に薙ぐ。腕から刺激される痛みに、光を帯びていたサモナイト石を地面に取り
 落とした。注がれていた魔力は霧散して消えていった。


「・・・む?・・・うわあっ!?」


 彼の集中力が切れたせいか、ユエルに抑えられていた悪魔の彼が正気に返った。
 ユエルがのしかかっていたせいか、妙に慌てているのが見て取れる。

 は、腕を抑えている召喚師に向き直り、刀を首元に押し当てた。



「・・・これで最後だ。彼にかかっている誓約を解除しろ」






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