現在、家では、宴会が執り行われている。
の父親であるリクトが、
「久々の客だ。もてなしてやろうじゃねえか」
と言いながら2時間ほどで準備を済ませ、どんちゃん騒ぎの大騒ぎだ。
そんな中でアッシュは外の風に当たろうと、縁側へと移動してきていた。
すぐ近くの部屋からは収まることなく声が響いているが、それを気にせず、頭上に輝く月を見上げた。
「・・・・・・」
”今までありがとうございました”
”私、無事に記憶が戻りましたよ”
”私は姉さまについていきますので・・・ここでお別れです”
「・・・っ!!」
仲間だと思っていた少女と最後に交わした言葉が頭の中へ甦ってくる。
悔しさに表情を歪め、拳を握る。
さらに右手を浮かせ、床へ向けて思い切り振り下ろした。
「・・・大丈夫か?」
「っ!?」
かけられた声はこの家の住人であった青年のもので。
彼は歯を見せて笑うと、アッシュの隣を陣取った。
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜
閑話 失ったもの
「あの子のこと、考えてたんだろ?」
「・・・・うん」
彼の質問に、アッシュは正面を見据えたまま首を動かす。
「まぁ、考えるのも仕方がないよな。今まで仲間だった人間が敵になったんだから」
「・・・・うん」
青年 ―― は足を縁側からたらし、背中から後ろへと倒れこみ、後頭部で手を組んだ。
風が吹き、庭の緑を揺らす。
「でもさ、あきらめちゃいけないと思うんだよ」
紡ぎだされた言葉は、アッシュを驚かせるものであった。
彼は、もうメリルが自分の隣には戻ってくることはないと思っていたから。記憶を失っていた彼女を拾い、連れ立って旅をした仲だ。簡単に割り切れるものでもなかったのだが、蘇ってくる彼女の言葉には嘘偽りがなかったように感じていたのだ。
「俺の中で定義として決まっちゃってるものの一つとして、『リィンバウムはなんでもあり』っていうのがある」
「なんだよ・・・それ?」
「俺が初めて召喚されたとき、最初に会ったのが鬼人の親子でさ。その後には二足歩行の犬(失礼なっ by パナシェ)とか、妖精とかが出てきて」
「うん。僕は目の前に召喚師がいて、喚ばれてワケもわからないまま『戦えっ!!』てさ」
まったくサッパリだったよ。
両手を自身の横でひらひらさせて、アッシュは苦笑い。
も同様に「大変だったなぁ・・・」と苦笑いを浮かべた。
「・・・まぁ、そんな感じでさ。あの世界って、強く望めば結構叶ったりすると思うんだ」
もちろん、本人の努力次第だけど。と付け加えるように言うと、苦笑いの代わりに唇の片方を軽く吊り上げた。
「・・・・・・」
「だからこそ、俺はユエルを探し出す・・・探し出してみせる。何があっても」
アッシュは目を見開いた。
も敵ではないにしても、大事な仲間を失っているのだ。首を横へと動かすと、はいつのまにか緑色のサモナイト石を右手に持ち、それを頭上にかざして月の光に透かしている。
その石に、誓約の証はない。誓約するとなにかしらの刻印が付くというのを聞いたことがあり、以前メリルのサモナイト石を見せてもらったことがあるのをアッシュは思い出した。
「これ、ユエルを喚んだときのサモナイト石なんだ」
はつぶやいた。
よく見れば、その石の表面はボロボロで、一概に綺麗と呼べるものではない。
「戦闘中でさ。俺も必死だったんだよ」
「・・・そっか」
寝べっていた上体を起こし、サモナイト石をポケットへとしまうと、空を見上げた。
「まぁ、なんだ。彼女をどうしたいのか、強く願ってみるといいよ。その願いはきっと・・・叶うから」
「うん、そうだね。ありがとう、。僕、願ってみるよ・・・メリルとまた、旅ができるように」
アッシュは拳を握り締め、自身の身体の前に移動させると、に向けて言い放つのだった。
というわけで閑話です。
メリルとユエルの話ですね。短いですけど。
アッシュはメリルにホの字ですか?
←Back Home Next→
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||