「なるほどな。その魔剣っていうののせいで、こっちに来ちまったと」
「簡単にいえば、そうなる」

 親子の感動(?)の再会の後、一行はの父親である男性に先導されて家の敷地内へと足を踏み入れた。
 門と同様に敷地内も和風一色。
 米国出身であるアッシュも、リィンバウム出身のメンバーも興味本位でか視線を次々に移動させていた。
 そして、現在地は家の中。畳の敷かれた『居間』という名の部屋であった。

 自己紹介の際にの父親であるリクトと名乗った男性は、実のところリィンバウム出身である。
 そのため、名もなき世界ではありえない『魔剣』や『召喚術』といった言葉に驚きを示すことなく、特にこじれることもなく現状の説明を行うことができていた。

「なんとか、リィンバウムに戻る方法は無いものだろうか?」
「あー・・・俺自身シルターンから喚ばれたクチだからなぁ・・・あいにく召喚術なんか基本的なこと以外、全然知らねえんだよ」

 すまねえな。

 リクトはそう言って苦笑いを浮かべた。





    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第61話  これから





「とりあえず、リィンバウムに戻れる手立てが見つかるまで、ここにいればいい」

 の思惑通りというか、さすが親子というべきか。
 リクトは笑ってその言葉を口にしていた。

「申し訳ありません、お言葉に甘えさせていただきますわ」
「かたじけない」
「助かります。ありがとうございます、リクトさん」

 そろって頭を下げるメンバーに、リクトは豪快に笑い声を上げた。

「気にすんなって。困ったときはお互い様、ってな言葉もあるワケだしな」

 自分の家だと思って、ゆっくりしてくれ。

 笑い声を止め、彼は歯を見せて笑みを浮かべた。






『道路の中心に突然現れた集団は、その行方をくらましたまま・・・』

 テレビの画面に、つい先ほどまで自分たちがいた場所が映り、はため息を吐いた。

「やっぱり、こうなっちゃうか・・・」

 がココまで移動する際に、気がかりだったことだった。
 自分たちが見つかってしまえば、自分も含めて異世界の存在が公になってしまう。どのような行為をしても、リィンバウムへの道を見つけ出してしまうだろう。
 それだけは、避けたかった。

「うわっ、スゲー!こんな箱の中にニンゲンが入ってるぞ!!」
「大変だっ!おにいちゃん、助けなきゃ!!」
「いりす、しゅら。コレハもにたート呼バレル機械ノ一種ダ。中ニ人間ガ入ッテイルワケデハナイ」

 彼の悩みとは裏腹に、テレビに映る映像を見て目を輝かせた子供2人。
 ぺたぺたとテレビに触りまくる彼らに向けて、ロレイラルの出身であるクルセルドが説明を施していた。
 子供は無邪気でいいよな、とつぶやく声が、誰かの耳に入ることはなく。



「とりあえず、これからどうするかを考えねばならんな」
「そうですね・・・僕たちは事故とはいえ、未知の世界に来てしまったワケですし・・・」
「何とか、あたしたちだけで向こうへ戻る方法はないの?」
「強ェ魔力の衝突で来ちまったンだからよ、おなじコトすればいいんじゃネェのか?」

 大人組+バルレルで、今後の行動を決めようと輪になっている。
 輪の中で司会進行を務めるのはメンバーの中でも最年長のソウシである。眉間にしわをよせて、カリンは緑の髪をなびかせ、尋ねた。
 面倒くさそうにあくびをしながら、バルレルは彼女の問いに対して反応を示す。

 は、その中に混ざっていた。さすがに、テレビを見てはしゃぐような年でもないし、見慣れているものなので。

「向こうはどうなっているのだろうな?」
「剣の中の龍が復活してるのかもしれないね・・・」

 アッシュの言葉に、黒い何かに飲み込まれた青い髪をなびかせた女性の姿が浮かぶ。
 あの光景を見ていれば、なにか悪いことが起こっても無理はない。

「一刻も早く戻ったほうがよさそうではあるな」
「こっちにいつまでもいたら、近いうちに帰ろうにも帰れなくなるだろうし」
「?・・・どういうことだ、?」

 ソウシの声に、は背後へと首を向け、テレビの画面を指差した。

「あの箱がどうかしたの?」
「箱はどうでもいいんだよ、カリン。アレに映っている画面と音声を聞けばわかると思うけど、大変なことになってる」

 が指差したテレビの画面には、自分たちが覚醒した場所が映し出されていた。
 そして、そこにはカメラを持つ人間や、紺色の制服を着た警察と呼ばれる人間たちやマイクを持つアナウンサーの姿がある。

「アッシュは知ってるかもしれないけど、テレビっていうのは、簡単に言えば最近起こった出来事をありのまま伝える情報伝達用の機械なんだ」

 今に、ここもバレるぞ。
 の言葉に、その場の全員が顔をしかめる。

「っつーことは、あのニンゲンたちが近いうちにココに来るかもしれないってことなんだな・・・面倒くせェ」
「まぁ、それは大変ですねえ・・・」

 吐き捨てるようにバルレルはつぶやくと、ファミィは右頬に手を当てて、困ったような表情を浮かべた。

「ってことは、お前らはすぐにでも戻らないといけねぇってコトか」
「・・・父さん」

 全員の視界に深緑が揺れる。
 見上げた先に、リクトの姿があった。

「そういうことになりますね」
「・・・で、その帰る方法ってのはどうすンだよ?」
「先ほどのバルレル君の案を採用したほうがいいかもしれないですね〜」

 ほかに方法はありませんから・・・

 ファミィはそう言って苦笑いを浮かべた。

「でも、その魔力はどこから・・・」
「それなのですが・・・くん。あなたの力で何とかなりませんか?」

 アッシュの問いに答えるように、ファミィはへと視線を移動させた。
 全員の視線がへと向かう。その中でリクトだけが、目を細めて険しい表情をしていた。

「う〜ん・・・」

 共界線の流れは感じられる・・・少しなら引き出しても大丈夫かな・・・

 そんな考えが頭をよぎる。魔法や召喚術といったファンタジーちっくな概念が存在していないはずのこの世界で、共界線の存在を感じられることには疑問を感じたが、ぶんぶんと首を振って、その考えを吹き飛ばした。


「・・・大丈夫だけど、全員で向こうに行くならもっと魔力がいると思う」
「それなら、何とかなると思うぜ。この俺様がいればな」

 えっへん、とバルレルが胸を張る。

「どういうことだ?」
「テメェら、覚えてねェだろ・・・俺様はっ、こんなナリでも、サプレスじゃ高位の悪魔なんだぜ!!」

 尋ねたソウシへと顔を近づけ、叫ぶようにまくしたてていた。


『あ・・・』
「テメェら、全員で忘れてんじゃネェーッ!!」


 バルレルの叫び声はテレビに夢中になっていた子供組をも震え上がらせていた。







「と、とりあえず」

 息切れを起こしたバルレルは、顔を赤くしながら呼吸を整え始めた。
 こころなしか、うっすらと汗もかいているようで。
 そんな彼をなだめながら、はゴホン、とわざとらしく咳払いをした。

「君なら、足りない魔力を補うことができるんだな?」
「ゼェ、ゼェ・・・あ、あぁ」
「それは今すぐにでもできるの?」

 カリンの最もな問いに、全員はまだ荒い息のままであるバルレルを見た。
 ぐい、と額の汗を拭い、彼は首を横に振る。

「今の状態じゃ、無理だな。少なくとも、満月の夜じゃねェとダメだ」
「父さん、次の満月まで・・・どのくらいかわかる?」
「たしか・・・1週間ぐらいだと思うがな」

 この部屋にはカレンダーがないため、答えはどうしても曖昧になってしまう。


「じゃあ、次の満月に向こうへの扉をつなぐ、ということで・・・おのおの、よいな?」


 ソウシの全員に対する問いに、全員が同時にうなずいた。








第61話でございました。
内容のとおり、名もなき世界での滞在期間は1週間です。
イコール、第6章は名もなき世界で1週間分、ということになります。




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