「ちょっ、ここどこぉっ!?」

 に続いて目を覚ましたイリスは、とにかくあせっていた。
 見たこともない地面や、ロレイラルの機械のようなものがすごい速さで通り過ぎていく。
 極めつけは頭上の天井。
 何もかもが見たこともないものばかりだったので、叫ばずにはいられなかった。

「イリス、ちょっと落ち着けって」
殿の言ウトウオリダ、いりす」
「おにいちゃん、なんでそんなに落ちついていられるんだよぉっ!?」

 こんなワケのわかんないトコに来ちゃったんだよ!?

 意識を取り戻した、というよりも再起動を果たしたクルセルドもと同様にイリスをなだめようと声をかけるが、彼女がそれを聞くわけもなく。に顔を近づけ、まくしたてた。
 その形相に驚きながらも彼女の顔に冷や汗が見て取れる。
 見たこともない場所で不安なんだと考えたは、

「大丈夫だって。ワケわかんないなんてコトはないからさ」
「・・・え?」

 イリスの両肩に手を置いて、笑って見せた。

 きょとん。

 そんな言葉が当てはまるかのように、彼女の表情は変わっていく。

「それってどういう・・・」
「んぅ・・・、イリス・・・って、ここどこさっ!?」
「な、なんと面妖な・・・」
「なんというか、怖いところだね・・・」
「あらあら、みなさんがわたくしたちを見てますよ?」
「うぉ〜、なんだあれーっ!?」
「あ゛〜っ、うるせェうるせェ・・・うるせェっつってンだろぉがっこの野郎っ!!!」
「うわぁ、やめろよぉっ!」

 イリスの言葉を遮ってアッシュ、ソウシ、カリンの順で目を覚まし、現在自分の視界に映る光景の第一印象を述べていく。無敵のおっとりさんであるファミィは突然現れた自分たちを野次馬のごとく見物する周囲の人間たちににっこりと微笑み手を振っていた。まだ子供であるシュラは黒い目を輝かせて叫び声を上げている。
 その隣でバルレルが嫌悪感を丸出しにしつつ耳をふさいでいたが、納まらない騒音にキレて暴れだそうというくらいにイラついていた。



「アッシュは知ってるだろうが、他のみんなは知らないだろうな・・・」
、もしかしてここって・・・」

 確信めいた表情でアッシュが尋ねる。は彼を見てうなずくと、

「ここは俺のいた世界だ。リィンバウム風に言えば、『名もなき世界』って言えばわかるだろ?」


 の発言にアッシュ以外の全員が声を上げたのは言うまでもない。





    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第60話  とりあえず





「こんなところが、日本だというのか・・・?」
「ソウシは今から百年くらい前の人間だから、信じられなくても仕方ないかもしれないね」

 の発言に全員が目を丸めた。
 ソウシが百年前の人間であることを知らなかったからである。

「と、とりあえず!」

 咳払いをして、

「ここにいたら何かとマズイから・・・とりあえず、移動しようか」
「移動って・・・どこへですの?」
「俺たち、運が良かったよ。ここ、俺の家の近くだから」

 みんなで家に来ればいいよ。

 尋ねたファミィに向けてはそれだけ言うと、先頭をたったか歩き始めていた。というより、走っていた。



『ま、まってよ〜』



 残ったメンバーは、慌ててについていくのだった。




 その後、十数分ほどでその場に警察やマスコミが現れたことを、一行は以外は知る由もなかったのだった。








「しかし、危なかったなぁ・・・あの機械。ボクたちの前をスゴイ速さで駆け抜けてっちゃうんだもん」

 左から右へ、両手を動かしながらイリスはつぶやいていた。
 あの機械とは今の時代では移動手段欠かすことのできないもの ――― 自動車だった。

「そうだな・・・馬より速い乗り物など、今までにみたことなどなかったぞ・・・」
「オレ、あれに乗ってみたい!!」
「お前、ちょっと黙っとけ」

 興奮気味のシュラを黙らせようと、バルレルは彼の口元に腕を強く当てた。
 鼻も同時に押さえてしまったため、呼吸ができず顔を赤くしている。

「でも、ここは・・・さきほどのところよりも静かなところですねぇ・・・」
「場所によってあれが通る量が違うんですよ。ここは少ないみたいですね」

 頬に手を当てて、つぶやくファミィに以外にこの世界の出身であるアッシュが説明を施した。

「あの天井みたいのはなんなんだよ・・・」
「あぁ、あれか。あれの上に、さっきの・・・自動車、っていうんだけど、それがさっきの所と同じように走ってるんだよ」
『へぇ・・・』

 アッシュを除く全員で、感心したような声を出した。









「さて、ついたよ」
「ほぉ・・・」
「おっき〜」
「壊しがいがありそうだナァ、ケケケッ」
「・・・壊すなよ」
「内部ニ生命反応、アリマセン」
「そんな、敵の本拠地とかじゃないんだから・・・」

 は歩いていた足を止めて、向き直った。目の前には堂々とした、少し古めの門。
 それを見たソウシは顎に人差し指と親指を当てて、イリスは門の大きさに顔を頭上まで動かして。バルレルはいかにも物騒な言葉を口にした。そんな彼にツッコミを入れたのはもちろんである。
 そして、中をスキャンしたクルセルドに見て、アッシュはため息を吐いた。

「こういうの、純和風っていうんだよね?」
「まぁ、そうだろうな。いまどきの日本じゃ、珍しいと思う」
「中はどうなっているんでしょうねぇ?」

 ファミィの言葉で、は再び門へと向き直り、

「じゃ、開けるから」

扉に手をかけた、そのときだった。
















「おい、テメエら・・・人ン家の前で何やってやがる?」
『っ!?』













 背後からの低めの声に、全員が顔を向ける。
 その先には、深緑色の着物を纏った男性だった。『人ン家』といっていることから、が開けようとしていた門の奥にある家の人間なのだろう。
 そして、彼は額に薄く青筋を浮かべていた。



「テメエら、というのはひどすぎるだろ・・・せっかく戻ってきた実の息子に対してさ」
『はぁ!?』



 男性に向いていた全員の視線がへと移る。




「・・・なんだ、か。いつ戻ってきたんだ?」




 額の青筋を消し、男性は笑みを浮かべた。


「ついさっきだよ・・・ただいま、父さん」
「おう、よく戻ったな」


 実に1年以上ぶり。


 親子は再会を果たしたのだった。





・・・実に緊張感がないのが玉にキズだが。









第60話、更新いたしました。
随分と久しぶりですが第3部、始まりました。
親子の再会です。
ちなみに、誓約者たちは、すでに召喚されている、という設定(のつもり)です。





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