深夜。
 は、自分の部屋で布団の上に寝転がっていた。
 一緒にいた仲間たちは、父親のリクトが家の案内と同時にあてがわれた部屋で眠っていることだろう。
 ごろりと寝返りをうち、

 父親に聞いたところによれば、が行方不明になってから約1年が経過しているのだとか。
 この世界とリィンバウムでは、時間の流れはほぼ同じらしいことがここでわかっていた。

 最初に部屋に入ったときに驚いたのは、机の上のノートの山だった。
 規則正しく、とはとても言えない積み方で、今にも崩れ落ちそうなのになぜか落ちない。

「それはな、アヤちゃんがわざわざ持ってきてくれてたんだぞ」

 問いを投げかけ、返ってきたのはこんな答えだった。
 アヤ、というのは、の幼馴染である。
 あの娘に感謝するんだな、とリクトは言って、バンバン背中を叩いて来た。

 そういえば、彼女は今、何をしているんだろう・・・

 そんなことを考えつつ、は意識を手放していた。





    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第62話  この世界





「おに〜ちゃ〜んっ!!」

 ばぁんっ!!

 勢いよく部屋の扉を開けたのは、誰よりも早起きをしたイリスだった。
 彼女はどこにあったのか子供サイズのシャツと半ズボンを身に纏い、一つに束ねた金髪をなびかせ、

「お〜」

 ずかずかと部屋へ侵入し、

「き〜」

 寝ているの上へ、

「てっ!!」

 ばふっ!

「ぶぇっ!?」

 ダイブした。

 彼女の全体重を掛けたボディプレスを余すところなく受け止めたは、吸い込んでいた空気を吐き出し、目を見開きつつぐぐもった声を上げた。
 横になったまましばらく動けず、衝撃による影響を和らげようと必死に呼吸を繰り返し、なんとか平常の状態へと戻すことに成功。
 イリスを布団越しにひっつけたまま、むくりと身体を起こし、大きくあくびをした。

「・・・・・・」
「・・・へへ〜」
「イリス」
「なぁに?」

 いまだにくっついたまま、イリスは伏せていた顔を上げる。

「起こすならもっとソフトに起こしてください」
「は、はひぃっ!」

 黒いオーラを纏わせたはイリスに向けてにっこりと笑みを浮かべると、彼女は青ざめた表情をして慌てて飛びのいた。
 は自分の現在の服装を見ると、夕べはそのまま寝てしまったらしく、度重なる戦闘によってできた汚れが目立っている。

「ボッ、ボク、先にゴハン食べてるからっ!」

 言い切ると部屋から一目散に飛び出していった。
 は空気を吸い込み、息を吐くと、自分の服が入っている引き出しを引っ張り出した。




















「おい、。今日は買い物行くぞ」
「・・・なんだよ、やぶからぼうに」

 朝食を終えたは、リクトに声を掛けられていた。順番に朝食を終えていた他のメンバーは、女性、男性の順番で風呂に入っている。
 は起床が遅かったため、全員が出た後に入浴となっている。
 もちろん、家にはリィンバウムの貴族が入るような浴場があるわけではない。1人、もしくは2人1組で入浴中なのである。

 ちなみに、朝食を作ったのはリクトである。

「お前やアッシュならともかく、他の連中はこの世界のコトまったく知らねえだろ?」

 ぴ、と人差し指を立て、

「しばらく居る予定なんだからよ。身の回りのものが必要だろうが」
「あ・・・あぁ、なるほど」
「だから、お前が先導して買いモンしてこい」
「えぇっ!?」

 はとにかく驚いていた。今の自分たちは、この世界を堂々と歩けるような状況ではない。しかも、付近が全国ネットで流れてしまっているのだ。いつ、どうなるかわかったものではない。

「いや、マズイだろ・・・」
「だいじょうぶだって。なんとかなるモンだぜ、こういうのはよ」

 彼はどうしても買い物に行かせたいらしい。

「・・・買い物はいいとして、金は?」
「俺を誰だと思ってんだよ。気にすんな」



 は、結局全員を引き連れて買い物に行くことになってしまった。







「・・・というわけで、これから買い物に出かける」
「ホントっ!?」
「おぉ〜〜〜〜っ・・・」

 買い物宣言に、イリスとシュラは好奇心が強いためか、飛び上がって喜んでいた。

「・・・本当に行くのかい?」
「仕方ないだろ、俺だって不本意なんだ」
「その・・・ますこみ、とやらに見つかってはいけないのだろう?」

 ソウシの問いには大きくうなずいた。
 万一、見つかってしまえば、おそらくリィンバウムには戻れない。
 リクトは、それでも行って来いと言っているのだ。

「・・・無理、あるんじゃないの?」
「俺だって、そう思ってるさ。でも・・・」
「あら、わたくしはうれしいですよ?召喚師として、名もなき世界のことを知ることができるのですからv」

 ほぼ全員に質問攻めにされたは、ガシガシと頭を掻いて視線を地面に落とす。

「で、全員で行くのかよ?」
「・・・いや。バルレルと、クルセルド。君たちは家で父さんと留守番」
「あーあー。そのほうがいいぜ。面倒くせェのはキライだからな」
「ダガ・・・」

 バルレルはくるりとに背を向け、部屋を出て行く。仲間はずれにされたせいなのか、他の要因かはわからないが、その背には哀愁が感じられ、は冷蔵庫に酒があるからと彼に伝えた。
 そして、クルセルドはイリスと離れるのが心配なのだろう。しっかりとした返答が返ってきていなかった。

「君は機械兵士だ。この世界では、ロレイラルほどに機械技術が発達してないんだよ。そんな中、君が出て行ったら、絶対に捕まってバラバラにされるだろうから・・・」
「クルセルド。ボクは大丈夫だから、安心してココで待っててよ」

 おみやげ買ってくるから。

 イリスはそう言って、クルセルドに笑みを向けると、しぶしぶながら了承の意を見せた。

「あと、全員武器は置いていってくれよ。犯罪者になって捕まりたくなければ、ね」
「うん。サモナイト石は持って行ってもいいと思うけど、刃物系統のものはやめたほうがいいね」

 の忠告の後、アッシュが付け加えるように言った。彼は日本のことを知っているようで。自分かの近くに必ずいるように、と全員に伝えていた。




「さて、それじゃあ・・・行こうか」




 を先頭に、バルレルとクルセルドを除く全員が家を出たのだった。










第62話です。
お買いモノです。浅葱家は金持ちです。




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