「うっわぁ〜〜・・・っ!」
「スゲエなぁーっ!」
「おい、お前達。少し黙らないか」

 一行はデパートを訪れていた。
 フロアは人々でごった返し、喧騒が尽きることはない。客に品物を買わせようと店員が必死に放つ宣伝の声がその空間を響いている。
 その人々は心なしかちらちらと一行を視界に入れているようには感じていた。
 無理もない。外国人のような外見の男女が、集団でデパートを闊歩しているのだから。
 突き刺さる視線にまったく気づかずはしゃぐイリスとシュラをソウシが諌めようと声をかけていた。

「みんな。とりあえず服、買いに行くからしっかりついてこいよ」

 この世界じゃ、リィンバウムの服は目立ちすぎるからな。

 は連れてきた全員に向けて声をかけ、なにくわぬ顔でエスカレーターへと足を動かしたのだった。





    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第63話  買い物と調べ物





「あらあら、これは・・・何かしら?」
「階段が動いているぞ」
「これは、エスカレーターって言って、上に乗れば自動で2階に連れて行ってくれるんだよ」

 物珍しそうにきょろきょろと首をひねるメンバーにアッシュがそんな説明を施しながら、エスカレーターに足を乗せる。
 リィンバウム出身のファミィやカリン、幕末を生きていたソウシは足を乗せるタイミングがつかめず、しどろもどろしていたのを見て、とアッシュは顔を見合わせて噴出した。
 イリスとシュラは子供のせいか順応性が高いのか、飛び乗ってははしゃいでいる。

 上の階へと足を踏み入れたのはその後10分ほど後のことだった。

















「ここが、服の売り場だな」
「アメリカとはほとんど変わらないよね」

 アッシュのコメントにはうなずく。

「男性服はあっち。女性服はこのひとつ上の階だから、ファミィとイリスとカリンはちょっと待っててくれるとうれしいんだけど」

 あちらこちらをが指差し、女性3人に顔を向ける。

「それじゃあ、買う予定のないさんに一緒に来ていただく、という形をとりませんか?」
「・・・え?」

 ファミィの発言に冷や汗。それをなぜかと問うならば、は男だからである。女性服売り場など行く必要性のない場所であり、一人で行けば恥ずかしいことこの上ない。
 もちろん、いまいる世界、というかこの街はの地元である。家も近いため、彼の服ならばいくらでもあるのだ。

「でっ、でででも、マズいだろ。さすがにさ。ほら・・・な?」

 は慌てまくり、声にしているのはすでに日本語ですらない。
 それだけ、女性服売り場に行くことに抵抗を感じているのである。

「こちらには、一緒に服を買うアッシュさんがいますから。さんは、彼にこの世界のお金をお渡しすれば、お暇でしょう?」
「いやっ、それは・・・そうだけど・・・」
「わーい、おにいちゃんと買い物だっv」
「恥ずかしいってコトはわかったけど、もう覚悟決めなよ」

 イリスの喜ぶさまを見て、は大きくため息をはくと両肩をがっくりと落とし、

「・・・わかりました。お供します」

 アッシュに数枚の一万円札を手渡して、上の階へと足を運ぶのだった。
















「えっと、とりあえず服を見て回ろうか。ソウシには珍しいものばっかりだから、もし何かあれば僕に言ってよ」
「わかった。確かに見たこともないものばかりで気が滅入っていたところだ。助かる」
「オレ、これがいい!!」

 シュラは早速、ひとつのシャツに手を伸ばしていた。
 白い薄手のシャツ。いわゆるTシャツというものだ。ちなみに彼は、それ以外にはなにも手にしていない。

「・・・うん。それじゃあ、あとは下に履くヤツだね。お金結構もらってあるから、もういくつか選んでいいよ」

 シュラは白い歯を見せて笑みを見せて、一目散に店内に姿を消していた。

「おい、アッシュ。手伝ってくれ」
「はいはい・・・」

 彼は声の方へと体を向けたのだった。
















「えーっと・・・服は、向こうみたいだな。俺、ここで待ってるから、服決めてきてください」
「何を言っているのです?さん、あなたも来るのです。こういう類のものは男性に見てもらうと言うのが通説ですし(?)」

 微妙に黒いオーラを纏わせたファミィに数歩たじろぐ。頬を汗が伝う。

、アンタなにやってんの?」
「い、いや・・・別に」

 は結局、未知の領域である女性服売り場へと入っていくのだった。




 その後、女性3人に囲まれて、これは似合うかあれはどうかと質問攻めにあったことをここに記しておく。




















「全員、服は買ったか?」
「うん、男性陣はOKだよ」

 は全員を一瞥し、満足げにうなずくと、

「じゃ、ここを出ようか。とりあえず、目的は果たせたし」

 一行は、そろってデパートの出口を目指したのだった。












 さて、とデパートを出たところでアッシュは全員の前に出てくるりと振り向く。

「とりあえず、これで帰ったほうがいいよね。いつまでもいたら何があるかわからないし」
「いや、ちょっと待ってもらえないだろうか?」

 発された声に全員がそちらへ顔を向けると、声の主は申し訳なさそうに苦笑いをした。

「悪いのだが、。歴史を知れる場所は近くにないか?」
「あぁ、それなら近くに図書館があるけど」
「そこへ、連れて行ってくれないか?」

 あれからどうなったのか、知りたいんだ。

 あれとは、もちろん幕末でのことである。
 彼は戦闘中に喚ばれてきているためどうなったのかが知りたい、とまっすぐにを見つめた。
 はしばらく思案して、

「それじゃあ、俺はソウシを図書館に連れて行くから。アッシュ。道、わかるよな?」
「え・・・うん、たぶん大丈夫」

 よし、とうなずき、ソウシの肩を押す。

「それじゃ、先に帰っていてくれ。アッシュ、後よろしく」























「さて、と。到着」

 目の前に建っているのはガラス張りの建物だった。
 太陽の光に反射して、2人を照らしている。もちろん、建物の中は見えないようになっている。

「これが、としょかんというものか・・・」
「ここには、いろんな本を貸し出してくれる場所だな。勉強にきたり、暇をつぶしにきたりと目的はさまざまだけど」

 感心してか建物を眺めたまま動かないソウシを引きずって、建物内へと入っていった。
 その間、ソウシは自動ドアに歓声を上げ、本の検索用にと設置してあるパソコンを見て眼を丸めたりと、今までの彼にはありえない奇怪な行動をしていたのだった。

「歴史書は・・・ここだな」
「ほぉ、たくさんあるのだな」
「ここよりも大きい図書館に行けば、本の量も増えるよ・・・あ、この本がいいかな」

 は一冊の本を手にとり、パラパラとめくり始める。
 目次を見て、目的のページを開くと、そのままソウシへと手渡した。

「・・・これは?」
「年表。これが一番見やすいと思うけど・・・どうだ?」

 ソウシは見開きに広がる年表を凝視し、ある一点で止まると、目を丸めた。

「・・・・・・」

 今度はその一点を凝視すると、ぱたんと本を閉じた。
 彼が見ていた部分には、『1867年 15代将軍徳川慶喜 政権を朝廷に返上、大政奉還をした』と書かれていたのだった。



「さて、事は済んだ。戻るとしようか」
「もう、いいのか?」

 の問いにソウシは首を縦に振ると、悲しげなのか微笑んでいるのか、あいまいな表情を浮かべていた。







第63話でした。
お買いモノ風景はありません。表現の仕方がわからなかったのですっ飛ばしました。
そして、歴史のお話でございました。
この一言をみて、彼は何を思ったのでしょうか?

なんだか日本語がおかしいような気がします。



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