光が消え、目をゆっくりと開けば。
青い空に、白い雲。
見渡す限りの荒野に、崩壊したヴァンドールの街が見えていた。
「っ・・・、みんなっ!」
背後を見やれば、仲間たちは地面に倒れこんだまま微動だにしていなかった。
慌てて一番近くにいたソウシへと近づく。
「おいっ、しっかりしろって!!」
「む、むぅ・・・」
の声に反応してか、周囲の全員の身体が動き始めていた。
「てっ、てきはどこだぁ〜っ!」
「シュラうっさい!!」
げし。
耳元で叫ばれ、イリスは耳を抑えつつシュラを蹴り倒した。
「どうやら、終わったようですね・・・」
「殿。一体、何ヲシタノダ?」
「あぁ・・・」
何をしたか、という問いに説明を加えようとしたそのときだった。
『その説明には、ボクが答えよう!』
宙に、身体の薄くなったアヴァレスが浮かんでいたのだった。
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜
第84話 すべてはここから
『アイツは、ボクたちで封印したから。もうキミたちの前に現れることはないと思うよ』
アヴァレスは自分の名前と、今までの刀の中にいたことをまず話してから、本題へと入っていた。
「封印って、どこへ?」
『剣に封印することはもうできなかったから、リィンバウムそのものに』
ほら、あそこに樹が立ってるでしょ?
顔をその方向に向ければ、それはそれは大きな樹が一本立っていた。
普通の樹よりは断然大きなもので、島のユクレスの樹ぐらいはあるだろうか。
『もう時間がないから手短に話すけど、魂の存在であるラグナスは数人の人間を寄り代にして肉体を持ったんだ』
レイヴァルドを発動したとき、何人か近くにいたでしょ?
まるで見ていたかのように、アヴァレスは誰にともなく問い掛けた。
全員が思考を巡らせて、名もなき世界へ飛ばされる寸前までさかのぼると、
「あ、そういえば。フォルネシアと一緒に何人かいたよね」
「えぇ・・・」
唯一、その光景を目の前で見ていたメリルは表情をゆがめる。
『もう、彼らは助からない。だから、ボクたちが一緒に連れて行ったから』
どこへ、とは誰も聞くことはなかった。
なんとなく、どこに行ったのかは検討がついていたから。
『そういえば、その中にいた青い髪の女の人から伝言があるんだ。1つはみんなへ、もう1つは・・・キミへ』
「え?」
アヴァレスの視線がメリルへと向く。
急な展開に驚き、あたふたきょろきょろと首を回すが、特に意味はなかった。
『まず、一つ目。叶 遥っていう女の子を見つけたら、送還してあげてくれって』
召喚師であるファミィに、アヴァレスは一粒のサモナイト石を投げ渡す。
その色はやはりというか、なんというか。
名もなき世界の召喚獣であるからか、その色は無色。
「わかりましたわ。わたくしが必ず、元の世界へと還します」
『うん。続いて、二つ目』
アヴァレスはそこで一息つくと、メリルへと視線を向けて、
『「幸せに」だって』
「っ!?」
メリルの表情が歪み、目からは涙があふれ出る。
寄り代として利用されていた間も、彼女はメリルのことを考えつづけていたのだ。
すでに両親もおらず記憶を失っていたとはいえ2人きりの家族だったのだから。
「アイツ、実はイイヤツだったのかもな」
「そうだね・・・なんで名もなき世界に行きたかったのかは結局謎のまんまだけどね」
呟くシュラに、カリンは同調するかのように言葉を紡いだ。
『さて、もう時間みたいだ。行くことにするよ・・・!』
「・・・?」
薄れゆく中で、アヴァレスは宿主だったを見やり、
『今まで、ありがとう・・・元気で』
そう口にしたところで、光となって消えていった。
あたりが静寂に包まれ、は流れる涙を拭い去る。
「おにいちゃん・・・」
「大丈夫だって。さて、と」
ぐ、と両手を上げることで身体を伸ばし、息を吐き出す。
「戦いは終わった。みんな・・・」
「酒盛りだぜっ!!!!」
の声を遮り、待ちきれずにいたのだろうバルレルは嬉しそうに声をあげていた。
セリフを横取りされたははしゃぐバルレルを見てため息を吐くが、表情は晴れ晴れとしていて。
あっけにとられていたその場の全員は数秒硬直してから我に返り、顔を見あわせると、満面の笑みを貼り付けて腕を振り上げた。
『祝勝会だぁっ!!!!』
第84話でした。
短いです。83話と比べるとホントに短いです。
ですが、話のキリがよかったので、ここで分けることとなりました。
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