「ふぅ・・・」

 は1人、草原にたたずんでいた。
 食料などが入ったカバンを背負い、左の腰には5つの穴が空いた刀を携えて。


 邪竜は世界へと封印された。


 漆黒の派閥との戦い以降からずっと力を借りつづけていた4体の召喚獣たちと共に、リィンバウムの大地へと封じられたのだ。
 刀の穴とは、元はサモナイト石が埋め込まれていた部分のことで、封印と同時に石は消えてしまっていた。

 封印の証拠として、現在ヴァンドールのあった場所に一本の樹が立っている。

 召喚師であるファミィやイリスが言うには、

「この樹には、召喚獣たちの心を和ませる力があるようですね」
「ボクよくわかんなーい!!」

 だ、そうで。
 イリスのほうは説明になっていないのだが、それはまぁ仕方ない。


 現在では、街の復興作業をしている隣ではぐれ召喚獣たちが身体を休める場となっていた。















「ほらほら、木材が足りないよっ!」

 テキパキと、復興を手伝ってくれている人々に指示を下す。
 手伝っている人々とは、ほとんどが金の派閥から派遣された兵士たちで。
 金の鎧が無駄にピカピカ光っていた。

「精が出るな」
「当たり前でしょ。一刻も早くヴァンドールを復興させなきゃいけないんだから」

 流れる汗を拭いながら、カリンはソウシに向けて言い放った。

「ほらほら、アンタも手伝う手伝う!」

 はい、コレ。

 ソウシに渡されたのは、一本のつるはし。

「はいはい、どこをどうすればいいのだ?」
「じゃあ、アッチの瓦礫をどかしてきて。アンタならできるでしょ?」

 実力を認めた戦友には、遠慮がないらしい。
 ソウシは一息ついて、指示された方角へと足を向けたのだった。

 人間と召喚獣が共存できる、そんな街づくりができることを目指して。
















「ここは、どこですか?」
「僕に聞かないでくれよ。勝手に進んでいった君が悪いんだから」

 アッシュとメリル。
 今までどおり、2人は互いによき相棒として、旅をしていた。

 もっとも、現在は自分たちの居場所もわからず、2人して迷っているのだが。

「まぁ、いつか街に辿り着くだろ。さ、メリル。行こうよ」
「ハイッ!」

 仲睦まじいことは良いことなのだが。
 そんなんで本当に旅を続けていられるのだろうか?















「よかったわねぇ、イリスちゃん。派閥を抜け出したこと、不問になってv」
「なに言ってるの。ファミィ姉さんがそうなるように訴えてくれたんでしょ?」

 ファミィ、イリスの両名は、金の派閥に戻ってきていた。
 もちろん、イリスはクルセルドを伴っているのだが。

「トニカク、とらぶるモナクスンデ僥倖トイウモノダ。彼女ニ感謝スルノダゾ」
「わかってるよ・・・」

 クルセルドの指摘に、イリスは頬を赤らめ頭を掻いた。
 そんな彼女の反応に、ファミィは笑みをこぼす。

 本当に強くなってくれた。

 姉妹弟子であり姉代わりだったからこそ、ファミィはそう思わずにはいられなかった。

「ま、イリスはなんだかんだ言って調子いいからな。きっとまた抜け出すぜ」
「な、なに言ってるんだようーっ!!」

 シュラの呟くような声に反応し、イリスは両手を振り上げた。

 なぜシュラが金の派閥にいるのかというと、邪竜が封印された後にイリスと共にいることを望んだからである。
 元々仲が良かったうえに、前の召喚主から逃げてきた彼の処遇もあってか、リィンバウムに知り合いの少ない彼のことを思ってのことだとか。
 とにかく、仲がいいのはよいことである。

 シュラの召喚主が彼女たちの前に現れれば、徹底抗戦するのだと。
 イリスは意気込んでいたのだった。


「ココハ派閥ノ中ナノダゾ、静カニシナイカ」
「うぐ・・・」

 クルセルドに諭され、イリスは肩をすくめた。

「あらあら・・・」

 ファミィは1人、コントのようにも見えるその光景を見て、笑みをこぼしていたのだった。


















 ちなみに、サプレスの悪魔バルレルはファミィとイリスとメリルの3人の力でサプレスへ還っていっていた。
 祝勝会と称して始まった宴会でいくら飲んでも顔色1つ変えないと共にお酒を大量に飲みまくり、次の日には頭痛に悩まされていたのが彼らしくて笑えるのだが。
 ここで、彼との酒盛りの約束は果たされたことをここに記しておこう。
 飲み比べに負けて、かなり落ち込んでいたのは、また別の話。

 送還されてからの足取りは当たり前と言えば当たり前なのだが、さっぱりわからない。
 今も、サプレスのどこかであばれまわっていることだろう。


 さらに、とソウシが同じ世界の出身でも生きていた年代が違うことを、旅立ちの際に爆弾発言として公言してしまっている。
 もちろん、アッシュが驚くことはなかったが、その場にいた全員が驚いていたことは言うまでもないだろう。








「さて、と」

 新しくもらった、リィンバウムの地図を広げる。
 新アイテムとしてファミィから賜った方位磁針を突きつけ合わせて、唸り声を上げた。

「いやぁ、方位磁針がこんなに便利だったとはねぇ・・・」

 早く気付けよ、と。
 ツッコみたい衝動に駆られてしまうかもしれないが、それも今さらのことである。

「・・・待ってろよ、ユエル」

 必ず、探し出してやるからな。

 当面の目的は、コレである。
 戦いの最中に消えてしまった彼女を探す。
 自分の家に戻って父と話し礼を言う、という目的が果たされた今、行方不明の彼女を探す以外にやることがないとも言えるのだが。
 この世界での仲間であり、家族である彼女を探してまわるのはにとっては大事なことなのだ。


 ざあ、と柔らかな風が吹き、黒い髪を揺らす。

 風が頬を撫でるのを感じつつ、は歩き出す。







「さぁ、行くぞっ!!」










    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    エピローグ








というわけで、エピローグです。
別れのシーンは皆様の想像にお任せ、ということであえて書きませんでした。
さらにくん、アンタ10代後半なんだから、方位磁針くらい知ってろよ、といってやりたいと思います。



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