「はああぁぁぁっ!!」
虚空へと身を投げ出し、刀を振り上げた。
刃は天へ向き、振り下ろされるのを今か今かと待ちわびている。
は眼下の黒い巨竜を見下ろし、
「天を穿つ、一子相伝の剣・・・」
ゆっくりと落下しながら呟く。
目を閉じ、集中。
体内を循環する気は流れ、刃へと収束していく。
「俺にはできなかったが、お前にならできるはずだ」
今はいない父の声が聞こえ、目を見開いた。
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜
第79話 奥義伝承
「お前、居合は使えるか?」
「は・・・?」
リクトとの一騎打ちに勝利し、さぁ稽古を始めようといった、そんな時。
彼の口から、そんな問いが発されていた。
「なんでそんな事・・・」
「いいから、使えるのか。使えねえのか?」
「つ、使えるけど・・・」
彼の剣幕におされながら、はうなずく。
なぜ、そんなこと聞くんだろう?
そう考えるのは当然のことで。
「じゃ、ちょっとやってみせろ」
疑問と共に向けた視線をあっさり無視して、リクトは5メートルほど離れたところに、いつの間に作ったのかカカシのような木造りの人形を置いた。
そして、数歩背後へと下がると、
「遠慮することはねえぞ」
思いっきりやれ。
わけもわからず腰の刀に手をかけ、意識を集中。
沈黙がしばらく続いた、次の瞬間。
「!!」
柄に手をかけ、抜刀。
放たれた気の刃は、一直線に人形へと向かい、真っ二つに切り裂いていた。
「へぇ・・・」
見ていたリクトは、ただ感心したかのように声を発する。
トコトコと人形に近づくと、二つに分かたれたそれの切り口に触れ、「よし」と声を漏らした。
「お前、今の誰かに習ったのか?」
「端的に言えばそうなるね。もっと簡単に言えば、盗んだっていうのが正しいけど」
いつなのかと問えば、島での戦いまで時はさかのぼる。
島へと侵入してきた無色の派閥。
彼らに客分として扱われていた剣士の放った居合斬りを見様見真似に稽古をし、自分のものとしたわけである。
覚えたての頃は中々成功しなくて、困ったものだったのだが。
今では失敗することなく放つことが可能となっていた。
「いいか。お前の中にある気は、お前がガキの頃から俺がやらせてきた精神集中の稽古の賜物だ。今のお前は、現役時代の俺をも凌いでるだろうな」
予感ではなく、確信。
たった1回の居合斬りを見ただけで、彼はそこまで言ってのけたのだ。
嘘のようにも聞こえるが、今の状況で彼が嘘を言うはずもない。
俺にできなかったことも、お前ならきっとできる。
彼はそう言って、カラカラと笑ったのだった。
「まず、目を閉じる。そしたら意識を天井に掲げた刀に向けろ」
両手で柄を握り締め、刀を頭上へ。
目を閉じて、いつものように意識を研ぎ澄ませた。
「そのまま、気を練る。とにかく練る。どんどん練る」
言い回しが気になったが、とにかくイメージを膨らませた。
体内に溜まったソレを、粘土を練るように動かす。
気を練る。とにかく練る。どんどん練る。
練った。
それこそ、今まで居合斬りを放ったとき以上に。
そのとき。
「そしたら、それを刀へ流し込め・・・ぶわっ!?」
突如、道場内を風が吹き荒れた。
そこらじゅうに散らばっているホコリや、立て掛けてあった額縁や、多数の木刀を巻き込んで。
「おい、気を抑えろ。暴走だ!!」
「そ、そんなコト・・・言ったって・・・!」
細く目を開き、刀へと視線を向ける。
刀を中心に風は渦巻いており、そのまま・・・
ズガァッ!!
道場の天井を貫き、その穴から風が飛び出していった。
巻き込まれたホコリや額縁や木刀ごと。
風が収まると、キレイになった道場の床にはバッタリと仰向けに倒れこんだ。
「ぶはぁっ、はぁっ、は・・・」
「バカ野郎。気の制御くらいできるようになっとけよ。ったく・・・」
どーしてくれンだよ、アレ?
太陽ののぞく天井を指差し、リクトは眉間にしわを寄せた。
「そんなこと急に言われたって・・・」
「・・・まぁ、いいか。今お前が天井を突き破った技、アレが俺が教えたかったヤツだ」
やっぱ、俺の目に狂いはなかったな。はっはっはー!!
なにやら嬉しそうに高笑い。
乱れた息を治しつつ、目の前で笑う父親を見上げて、
「こんなに疲れるんじゃあ、役に立たないじゃないか・・・」
「バーカ。それはお前が未熟だからだよ」
まだまだ、努力不足だぜ。
リクトはそう言うと、声をあげて笑った。
風が吹き出すほどの力を自分が保有していたことには驚きだが、本当に努力しないといけないなと。
そばで笑う彼をじとりと眺めながらは決意したのだった。
「父さん」
「ん?」
ふと、気になったことが1つ。
「今の技、名前あるの?」
そう尋ねられたリクトは、ニンマリと唇を吊り上げる。
「あるぞ。とっておきのがな。いいか・・・」
それは、天を穿つ牙。
持ち得る『気』を最大限にまで発揮し、肥大し形作る不可視の剣で周囲を薙ぎ払う、殲滅の剣技。
本来なら、周囲を敵の大群に囲まれたときに用いる切り札となる技である。
ひとたび使用すれば使用者の気をほぼすべて使い切ってしまうため、使いどころは選ぶ必要があったのだが。
「天牙穿衝<テンガセンショウ>っ!!」
暴走覚悟で形作られた巨大な剣は、放たれた黒き光線をも切り裂き、邪竜の黒い身体を深々と切り裂いたのだった。
第79話です。
とりあえず、主人公の回想イベントと共に、父再登場です。
ってか、その2人しかでてきません。
もぉ、主人公最強でしょうか?
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