敵である邪竜の名を冠するかの召喚獣が告げたその言葉は、その場にいる全員を驚愕させた。

【同じ喚ばれた者ならば、わかるだろう?】

 まるで説得をするかのように聞こえる敵の声。
 そして、自分たちの中に召喚された者がいることを、ラグナスは理解していた。

「確かに、人間たちの中には自分の都合で喚び出した召喚獣を切り捨てるようなひどいヤツもいるさ」

 僕を召喚した主だって、そうなのかもしれない。

 アッシュは、そう口にすると顔を伏せた。



「でも、それだけじゃない」



 顔を上げ、言い放つ。

「中には召喚獣を大切に扱ってくれる人間だって、いるはずだよ」
【そのようなことは・・・有り得ない】

 ラグナスは、確信めいた口調でそう述べたのだった。





    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第78話  天を穿つ剣





「なぜ有り得ないと言い切れる?」

 反論するように言ったのはだった。
 サク、と地面に刀を突き刺し顔を上げる。

「なら聞くが、主すらいない召喚獣はどうすればいい?」

 はそういった境遇の存在を知っている。
 今も平和に暮らしているだろう、島の仲間たちの表情が脳裏を駆けた。

「無機質なただの建物から強引に喚びだされた召喚獣はどうなる!?」
【・・・・・・】

 ラグナスは答えない。

「本当なら主がいるはずなのに、それすらいない俺たちはどうなるというんだ!?」

 俺たち、という彼の言葉に、事情を知らないカリンとシュラ、バルレルにファミィの4人は目を丸めた。
 答えを発することのないラグナスに、は笑みを浮かべる。

 それは嘲笑。

 他人を嘲るような、見上げているのに見下したような笑みだった。

「わかるワケないよな。お前は悪い召喚師に捨てられた召喚獣たちの集まりなんだからな!」

 悪い、を強調するように叫ぶと、一歩前へ身を乗り出す。
 大きく息を吸い込んで、

「人間を悪いだけの存在にするな。そういうコトを言いたいなら、人間の根底にあるものまで全部を知ってから言え!!!」

 叫んだ。



【・・・貴様などに、我の何がわかる?】
「はっ、わかりたくもないね。自分を不幸だと思い込んでるだけのヤツの気持ちなんか!!!」
【人間のいいように使われ、捨てられた我らの気持ちが】
「俺には主がいない。親切な連中がいたから、今の俺がココにいる。そうでなきゃ、俺だって1人だったんだ!!」

 捨てられていたのと同じだろう!!

 繰り返される言葉の応酬。
 傷のえぐり合い、と言っても過言ではないだろう。

 ラグナスの気持ちと、の気持ち。
 どちらもほとんど変わりはないはずなのに。

 経験や考え方の違いから、1人と1体は言葉をぶつけ合っていたのだ。

【所詮は運が良かっただけのこと。悪ければ貴様とて我と同じだっただろう】
「そうだろうな。でも、もし運が悪くても、俺は今の俺でいるはずだ」
【・・・なんだと?】

 矛盾している。

 捨てられた状態で、今この場にいると同じになれたのかと。
 島の仲間がいたからこそ、彼はここにいるはずなのに、だ。
 ラグナスの疑問は最もだった。

「自分から歩み寄ればいい。自分という殻に閉じこもらず、心を開いて、な」

 なぜ、お前はそうしなかった?

 やはり、答えは返ってこない。
 はラグナスに背中を向けると、目の前にある自分の武器を右手で掴み、引き抜いた。


 ひゅ、と。


 空気を切り裂くように真右へと刀を振りぬく。


「手段なんかいくらでもあったはずだ。それなのに、考えることをせず・・・自分は不幸だと思い込んで」


 真下へゆっくりと移動させると、左手を柄尻に添えた。


「こうやって勝手なコトされるのは、迷惑以外の何者でもないっ!!」


 風切り音を立てて、刀を真上へと振り上げる。

 その瞬間。





「な、なんだっ!?」
「風・・・?」

 突如発生したのは突風。
 急に吹き始めた強い風に、全員が顔を腕で覆い隠した。





「お前のすべてを否定してやる!!」

 風の源はの持つ刀だった。
 彼にそのような特殊な力は備わっていないはずなのだと、誰もが思っていたのだが。

【・・・面白い。やれるものならやってみせよ。真っ向から受けて立つぞ】

 がぱ、と口を大きく開く。
 それは、先ほども放った黒い光線だろう。
 は目の色すら変えず、ラグナスをにらみつける。

 大量の汗を流しつづけながらその場を駆け出し、巨体へと一直線。

っ、よせっ!!」

 叫んだのは誰だっただろう。
 今のにとって、そのようなことはどうでも良かった。

 ただ、目の前の敵を斬る。

 それのみを考えていた。



【■■■■■ーーーーっ!!】



 放たれたのは一条の黒い光。
 高速で飛来する光線は、10秒を待たずにを襲った。

っ!?』

 全員が叫んだのは同時。
 彼の姿は黒に飲まれ、見えなくなっていた。



「天を穿つ、一子相伝の剣・・・」



 ズバァ、という音と共に黒を切り裂き、中から飛び出す人影が1つ。

 空中へと飛び出したのは、光線に飲まれたはずの青年だった。
 焼け焦げた服の裾をばたつかせながら風をまとい、ゆっくりとラグナスへと近づいていく。
 頂点から落下と同時に刀を振り上げ、





「天牙穿衝っ!!」





 彼の使う剣術で唯一の技名を叫び、刀を振り下ろした。






第78話でした。
会話イベントとともに、主人公の新技、初公開です!
・・・いや、彼もうすでにヒトじゃありませんから!!



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