「おにいちゃん!」
さん!」

 背後の2人が叫ぶ。
 目の前の巨大な竜から放たれた光線は、が喚んだロレイラルの召喚獣により受け止められていたのだった。
 しかし、相手は地面を軽々と吹き飛ばすほどの威力を持つ光線。
 身を呈して盾となるには相手が悪すぎた。

『この力は、我だけでは受けきることは不可能だ』

 かけられた言葉に、は汗を伝わらせながら表情を歪めたのだった。





    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第77話  原初




「あの野郎、なにバカなことやってンだよ・・・」
「いくらあの力を以ってしても、相手が悪すぎるというものだ」

 眉間にしわを寄せて、バルレルとソウシは思ったことを口にしていた。
 空を見上げれば、ファミィとイリスによって召喚されたレヴァティーンとヴァルハラの姿が見てとれる。
 エネルギーを溜め込み、攻撃を加えようと狙いを定めていた。

「早く攻撃を!アイツの行動を止めるんだ!」

 叫ぶように声を発したのはアッシュだった。
 ラグナスの大きく開いた口を指差す。

「今、あの3人を助けられるのは、君たちだけなんだ!」

 言葉が通じているのかいないのか。
 それすらわかるわけがないのに、言わずにはいられない。

『撃てーーっ!!』

 3人を除いた全員が叫ぶように声をあげる。
 その声に同調するかのように、2体の召喚獣は最大まで溜め込んだエネルギーを力に変え、放ったのだった。












「く、そ・・・っ」
、そろそろ限界だ。これ以上は我の身体が保たない』

 無機質なその声に、さらに表情を歪める。

さん」
「おにいちゃん」
「ファミィ、イリス。悪い。これ以上はもたないみたいだ」

 かけられた2つの声に、は振り返ることなくそう告げた。

「大丈夫ですよv」
「きっと、助かるよ」

 ボクたち、さっきまで何してたか忘れたの?

 おちゃらけたような声でイリスはそう口にする。



 何をしていた・・・か?



「あぁ・・・っ!!」

 確信を得た瞬間、の表情は笑みに変わる。

 そう。彼は目の前のことに躍起になりすぎて、忘れていたのだ。
 直前まで2人が何をしていたのかということを。



「ファブニール。悪いんだけど、もう少しだけ耐えてくれないか?」
『・・・よかろう。元より我は盾となる存在。期待に応えて見せよう』

 ガシャガシャと、光線を受け止める轟音の合間に音が鳴る。

 身体を強化したのだろうか?

 にはそれを理解することはできなかったが、ファブニールのその気持ちに深く感謝したのだった。

【■■■■■■ーーーっ!?】

 爆音とともに悲鳴のような声が響き、今まで立っていた轟音が掻き消える。
 ファブニールにかかる力が消え、同時に彼の身体も徐々に透けていき、刀へと戻ったのだった。

 その先には、口から煙を上げる敵の姿。
 攻撃を加えた2体の召喚獣は自らの役目を果たしたのか、それぞれの世界へ還っていったのだった。

「やった、やったぜ!」

 金棒を振り回し、シュラはその場をピョンピョンと跳ね回る。
 そして、の背後で聞こえるのは2人が杖を取り落とした音だった。

「ファミィ、イリスっ!?」

 慌てて駆け寄ると、倒れ掛かる2人を支えようと両手を広げた。

「魔力切れぇっ・・・もぉクタクタだよぉ」
「さすがに・・・っ、無理があったかしら・・・?」

 息切れで荒い呼吸を繰り返す2人は力すら残っていないのか、立ち上がろうとはしなかった。

「いりすハ、自分ガ」
「あ、あぁ・・・」

 いつの間にやって来たのか、クルセルドは動けないイリスを抱え上げる。
 もファミィを抱き上げると、仲間の元へと歩き始めた。

「まったく、キケンなことすんだから・・・」

 ファミィを地面に横たえたところで、カリンはそう呟いた。
 他にどうしようもなかったんだ、と答えれば彼女から返ってくる言葉はなく。
 あきれたように笑んだのだった。





「まだ、みてェだぜ」





 聞こえたのはバルレルの声だった。
 未だ煙を上げるラグナスをその紅い瞳に納め、今までの雰囲気をぶちこわしにするような内容で。

「あんなんでヤられちまうようなタマじゃねェよ。アレは」

 そう言うと、彼は光に包まれて元の姿
―― 狂嵐の魔公子の姿へと変化したのだった。




【なぜ・・・守ろうとする?】




 低い声が響き、黒い影が動く。




【このような世界など、あってはならないというのに・・・】




 世界に絶望した召喚獣は、そう言葉を発した。
 まるで世界のすべてを拒絶するかのように。




【同じ喚ばれた者ならわかるだろう・・・】




 聞こえてきたその言葉に、全員が目を丸めたのだった。




【我は、ニンゲンの都合で切り捨てられた数多なる召喚獣の集合体だ】
『っ!?』



 だからこそ、許せないのだと。



 ラグナスは、その場にいる全員にそう告げたのだった。






第77話でした。
ちょっと、短めですね。



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