地面から生えた3身1体の触手は、とにかくうねうねと動きつづけている。
 ラグナスを守るように、無数に布陣されていた。
 さらに、それらは離れている敵には1直線の光線放ち、近くの敵にはコンビネーションによる物理攻撃を展開。
 どこからでも攻撃可能という、厄介な敵である。

「っ・・・なんなんよ、コイツらっ!?」

 金棒を振り回し、シュラが叫ぶ。
 武器が超重武器であるせいか、彼の攻撃はまったくといっていいほど当たることはなく、疲労だけが積み重なっていた。

「柄を短く持つんだ、シュラ!さすれば、多少は楽になるはず・・・だっ!!」

 アドバイスを施すソウシは、どこから持ってきたのか両手に一振りずつ刀を持ち、振るう。
 ふわりとそれを回避した触手は、一瞬だけ身を引くと、ソウシへと3身の体当たりを敢行していた。

「しっかりしなよ。人のこととやかく言ってる場合じゃないだろ!?」

 ソウシと触手の前に立ちはだかったカリンは、銃口を地面に向けた。
 以前、に向けてとった独特の構えで、

「ええぃっ!!」

 突進してくる触手に向けて、地面に銃弾を発射すると共に大剣を大きく振り回す。
 回避が遅れたのか、触手はまとめてその刃の餌食となり、真っ二つに分かたれたのだった。





    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第75話  切り札





「っ!!」

 勢いよく抜刀。
 体内に内包する気を用いて放つ居合の剣。

 気を纏った見えない刃は、触手の群れを一直線に薙ぎ払っていく。
 その刃を追いかけるように地面を駆け、は刀を振るった。
 居合の刃が消えたところで、代わりに襲うは鋼の刃。
 それは目的である敵を捉え、両断した。

「敵は3体で1組みたいだな。まとめて倒せば楽だ!」

 触手は3身で1体。
 3体の中で1体でも生き残ったのならば、斬られた2体も生き長らえることができるのだ。

「ンの野郎っ!」

 バルレルの槍が2体の敵を貫けば、

「うおっ、生き返りやがった!」

 倒された2体の触手はすぐさま再生したのだった。
 眉をひそめると、

「ケッ、の言うとおり、まとめてヤらねェとダメみてェだ・・・なっ!」

 槍を薙ぎ、3体を根本から切り倒すと、再生されることなく動きを止めていた。

「バルレル、後ろだっ!」
「あァ?」

 アッシュの声に振り向けば、そこには彼を捉え光線を放った敵の姿があった。
 紫の光線は一直線にバルレルへと向かっていく。
 彼がそれを回避も対処もする術はなく、

「チィッ!」

 舌打ちをしつつ、ダメージを最小限にとどめようと身体を傾げた次の瞬間。
 周囲は黒いひかりに包まれていた。



「アーマーチャンプっ!!」



 光線とバルレルの間に、黒光りを放ち召喚獣が具現した。
 ロレイラルの召喚獣アーマーチャンプ。
 守りの力として召喚された彼は身体の各所から蒸気を噴出し、紫の光を受け止め無効化したのだった。


「斬ル」


 クルセルドは光線を放った触手に向け、右腕に搭載された青白く輝く剣で両断。
 左腕のガトリングガンを乱射することで、自らの主に近づこうとする敵の足を止めていたのだった。



「タケシーちゃん、おねがいね?」



 杖を振り上げ、サプレスの雷精を召喚したファミィは、

「ウフフ・・・vv」

 黒いオーラを放出しながら、自分の腕へと魔力を収束していく。
 始めは白く輝くだけだったが、次第に光は大きくなり、数秒と経たないうちにバチバチと音を立て始めていた。


「いきますわよ、タケシーちゃんv」


 オーラを放つ召喚主を見て、多少引き気味にタケシーはうなずいた。


「お仕置きですわ・・・」


 意味もなくそう言葉にし、襲い掛かろうと突進する数体の敵に目を向けてニヤリと唇を吊り上げると、







「すぺしゃる・・・カミナリどか〜んっ!!!!」







 最大まで溜めた魔力を大放出。
 同時に放たれるタケシーの雷撃とともに、2つの雷が敵を襲った。
 広範囲に広がる雷は、敵を飲み込んでは根本から消し去っていく。

 砂塵が瞬く間に広がり、視界を覆っていく。

「・・・すす、すっごいなぁ」

 轟音に掻き消されるくらいに小さな声で、はつぶやいた。
 周囲に敵がいるにもかかわらず、だ。

 なぜか、小刻みに身体が震える。

「な、なんだろう。なにか悪寒が・・・」

 刀を持ったまま自分を抱くように両手に腕を回すと、震えを止めようと力を込めた。
 一度彼女のお仕置きを喰らってしまえば、当然と言えば当然かもしれない。
 ふと見やれば、イリスも同様に両腕を身体に回し、冷や汗を流しつつ震えていた。

 我に返り、ポケットへ手を突っ込む。
 手の平に包みこんだのは、紫色のサモナイト石だった。

「メリルっ!」
「え?」

 手のサモナイト石を彼女へ投げ渡す。

「これは・・・?」
「さぁ、知らない。でも、もしかしたらそれが、俺たちにとってこの場を打開する切り札になるかもしれないから」

 俺は召喚術が使えないから、頼む。

 それだけ言うと、は刀を振るい敵を薙ぎ払った。

「・・・・・・」

 メリルは受け取った石を覗き込む。
 そこには、見たことのない刻印が刻まれていた。

 つまりは、使ってみなければわからない、と。

 そういうことであった。











―― いざ来れ。我が呼びかけに応えよ!」

 今までに聞いたことのない、詠唱のような呼びかけのような。
 言葉を紡ぐのは記憶が戻り膨大な知識を得たメリルだった。
 ひびの入った杖を虚空にかざし、目を閉じている。

―― 我、汝を喚ぶ物。契る者」

 彼女の周囲を魔力の光が覆い包み、空へと立ち上る。
 そう、まるで炎のように。
 
「っ!?」

 しかし、立ち上る魔力は彼女のものではなく。
 サモナイト石から漏れ出ているものであると、驚きに目を丸めた。

「くっ・・・御身をここに、力を与えよ!」

 身体を包んでいた魔力が、掲げた杖へと収束していく。

「なっ、ナニコレーッ!!」

 彼女らしからぬ、奇声が響く。








「な、なんだぁっ!?」

 このデケェ魔力はぁっ!

 メリルのいる方角へ目を向け、目を見開く。
 サプレスの悪魔であるバルレルだからこそ、敏感に反応していたのだ。







「出るぞ・・・」

 虚空に放たれた光が、空中で静止。
 それは、1体の召喚獣の姿を形作っていく。

 その姿は
――








『なんだ、ここは・・・』

 黒い一対の翼を背負った、天使がそこにはいた。








第75話です。
1話限りの新キャラ登場です。
もちろん、オリキャラです。
次回のみの出演です。ご了承ください。




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