たどり着いたところは瓦礫の山。
 そこがどこなのかと問うならば。
 はじまりの場所なのだと答えるだろう。

「ヴァンドールだ・・・」

 つぶやいたのはだった。
 自分たちが不在の間に、数人の人間たちによって壊滅させられた街だった。

 金の派閥のテントがあった場所は、なにもない。
 本拠地のあるファナンに戻ってしまったのか、それとも他の場所にいるだけなのか。

 最悪のシナリオだけは、考えないようにしていたのだが。

「おい、見ろよ。アレ」

 バルレルが指差した先には、黒焦げた布切れが1枚。
 拾い上げれば、それが金の派閥の人たちが広げたものだと理解できた。

「あのデカブツのせいで、動く間もなくヤられちまったんだな」

 紅い目を細めて、頭上を見上げる。


 その先には、巨大な影が頓挫していたのだった。





    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第74話  強大なる力の前に





「これが、邪竜?」
「こんなのと、どう戦うんだよ・・・」

 遅れてたどり着いたイリスもシュラも。
 考えていることは同じ。

 吹き付ける風が、立ち止まる小さな身体に吹き付けていた。


「イリス、シュラ」

 着たのか、と。
 2人の顔と彼女の隣に控えるクルセルドを交互に眺めて、はつぶやいた。

「当たり前だよ。ボクはお兄ちゃんにもらったもの、返しきれてないんだから」
「オレは、漢(おとこ)になるんだァッ!!」

 金棒を振り上げて、叫ぶシュラに苦笑しながら、さらに後ろを見やる。


 やはり、と言うべきか。


 今まで生死を共にした仲間たちが歩いてきていた。

「しかし、私たちがこんなに近くにいるというのに。なぜ気付く素振りもない?」

 集合したとたんに、ソウシは一言。
 人間がここまで近くにいるにもかかわらず、見向きもしないのだ。
 目の前の竜は。

 さほど時間を待たず、ソレはその大きな口をがぱ、と開く。
 息を吸い込むように黒い光が取り込まれると、次の瞬間。

【■■■■■ーーーっ!!!】

 黒い光線を吐き出した。
 それは、荒廃した地面に突き刺さると、轟音とともに抉り出す。
 顔を動かして、光線は遥か遠くへと消えていった。

 発生した砂煙は収まらず、一同はただただその光景に口を開け閉めしていた。





「デタラメな威力だね、アレ」
「あんなのに巻き込まれたら、終わりだね」

 それでも、戦うんでしょ?

 そう尋ねたカリンに向けて、は笑みを浮かべた。

「当たり前。できる限りのことをするさ」
「勇敢なんだか、命知らずなんだかわかりませんわねv」

 和やかな空気が流れるが、それもすぐになりを潜め、消える。
 全員の目は、目の前の巨竜に向いていた。


「行くぞっ!!」


 敵のことなど構わず、全員が武器を手にしたのだった。












「ロレイラルに住まいし機竜よ、破滅への引き金を引かん!!・・・いっくよー、ヴァルハラ!!」
「もしもし、ガルマちゃん。ちょっといらしてくださいなv」
「聖なる加護を受けし龍よ。ここに姿を現し、かの者を打ち砕け!・・・レヴァティーン!!」

 召喚師3人の声が響き、サモナイト石が明滅する。
 機械の鋼を身に纏った召喚獣ヴァルハラは、その巨大な砲身を邪竜に向け、極太の光線を放つ。
 6枚羽を持つ霊龍レヴァティーンは空中に具現すると一声嘶き、その口内より発生した光球を放った。

「ガルマちゃん。お忙しいところ申し訳ないのですが、ひとつお仕事を頼めるかしら?」

 どっかーん、と地面を揺らしてくださいなv。

 ファミィはにっこりと微笑むと、喚びだされた身の丈ほどの槍を持った女性型の悪魔は小さくうなずき、宙へと舞い上がった。

「ぐらぐらぐら・・・どっかーん♪」

 高さをとり、槍の刃を地面へと向ける。
 急降下し、地面へとつきたてた。



 しかし。




 3体の召喚獣の攻撃はたしかに命中していたのだが。

 身体がぐらついただけで、ダメージはほとんど受けていなかった。

「うっそでしょぉっ!?」
「あらまあ・・・」
「参りましたね・・・」

 3人とも、現在使用できる最大の術を使った。
 そうでなくとも、どの召喚獣もランク的には最高位に位置するのだが。

 その攻撃が、まったくといっていいほどに効果がなかったことに、全員が驚いていた。



「はぁぁっ!!」

 渾身の力を込めて、ソウシは刀を振るうが、硬い皮膚にはまったく歯が立たない。
 アッシュが殴り、シュラが戦斧を振るい、カリンが銃声とともに大剣を振り下ろし、クルセルドが自慢の銃を構え引き金を引く。
 しかし、やはりと言うべきか、まったく効果を出すことはできなかった。

「・・・っ!!」

 刃がダメなら居合はどうだ、ということでが居合斬りを放つが、これでも効果はほとんどない。

「どうやって戦えばいいんだよ・・・」

 呟いたその声に、誰1人として答える者がいるわけでもなく。
 無情にも時間だけが過ぎていった。



 なぜ、ダメージが与えられない?


 ソレだけが全員の思考を支配していた。
 そのとき。





【愚かなる人間どもよ・・・】
『っ!?』

 聞こえてきたのは、頭に直接響いてくるような、低く太い声。
 そろって頭上を見上げると、巨体を動かして見つめているのがわかった。
 目の部分が赤く光を帯びている。

【滅びることがわかっていてまでなぜ、抗おうとする?】

 投げかけられた問い。
 それは、自らの持つ力の強大さを知っている証拠だった。

 黒い光線を放ち、見せつけた。
 にもかかわらず、抗おうと武器を振るう。

【なぜ、抗う?】
「・・・・・・」

 チャキ、と。
 聞こえたのは鋼の音。
 が、見下ろす邪龍をにらみつけて刀を自らの肩口に掛けていたのだ。

「決まってるだろ」

 笑みを浮かべているはずなのに。
 巨体を見つめる瞳には、殺気をも混じり合っているようだった。




「なにがあっても、俺は・・・俺たちは、お前に負けちゃいけないんだ。絶対に・・・ッ!」




 みなが心から笑っていられる世界のために。
 リィンバウムが再び『楽園』と呼ばれるように。



「俺にとって、それが彼らとの約束であり、俺の意思だッ!!」



 叫んだ。
 眉を吊り上げ、声に力を込めて。

 息を一度吸い込み、吐き出す。
 刀を下ろして、空を切るように横へ。
 右手に刀を持った状態で、立ち方は自然体になっていた。

 背後を振り向けば、仲間たちはそろってうなずく。


【よかろう・・・貴様らを、我が障害として・・・排除する】


 声が響くと同時。
 周囲に触手のような異形が地面から伸び上がり、うねうねと動き始めた。

「これで、最後だ。終わったら、祝勝会だっ!!」
「うわぁ〜いっ!」
「もちろん、酒も出るんだよな?」
「周囲に街はない。無理だろう」
「あら、大丈夫ですよ。ファナンから特急でもってこさせますから」
「ファミィさん、それマズくないですか?」
「いいじゃない。後があれば、俄然やる気も出るってものよ、アッシュ?」
「オレも、うめぇモン腹いっぱい喰ってやる!!」
「おなか壊したら、私が治しますよ〜」
「自分ニハ極上ノオイルヲ・・・」

 口々に叫ぶ。



「行くぞ!!」
『おぉっ!!!』



 言っていることは違えど、声に応じるときはほぼ同時。
 全員は再度、武器をしっかと構えなおしたのだった。





【我が名はラグナス。この黒き5世界に絶望した召喚獣である】





 世界の命運をかけた戦いが、開始された。







第74話でした。
文法が73話に輪をかけてものすごいことになっています。
敵との会話も成り立ってないし・・・

あぁ・・・



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