「ここは・・・」

 目覚めたのは荒野。
 しかも、元々何かが建っていたような痕跡も残っている。
 空を見上げれば夜ではないようだが、光はなく、暗い。

「みんなは・・・?」

 きょろきょろと周囲を見回すと一面の荒野の中に点々と倒れており、それぞれが地面に伏せていた。

「よォ、起きたかよ」
「・・・バルレルか。目覚めるの、早かったんだな」
「ちげェよ。俺は、もともと気絶なんかしてなかったんだよ」

 吐き捨てるように言うと、地面から突き出た岩に腰掛けると、暗い空を見上げた。

「・・・最悪だな」
「どういうことだよ。・・・ってか、ここはリィンバウムなのか?」

 黒い空を見上げていたバルレルは、何かを見通すように目を細めると、眉をひそめる。
 の問いに「あァ」と短く答えると、

「あの剣に封印されてたヤツが復活しちまってるみてェだ」

 ヤな魔力が残ってやがるぜ。
 空には雲など見当たらないのに、青い稲妻が一帯に鳴り響いたのだった。





    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第71話  邪龍復活





「・・・で、現在の状況はわかるか?」
「とりあえず、ここがあのオンナたちのアジトだった場所だってコトは間違いなさそうだぜ。さっきあそこにあった燭台を見つけたからな」

 バルレルは足元の黒い何かを持ち上げると、その形から燭台であることが確認できた。

「つまり、復活した邪龍はあの大きな山を跡形もなく吹き飛ばして、どこかへ行ってしまった、ということになりますね」
「吹き飛ばして、って・・・なにそれぇっ、ケタ違いだよ、そんなの!」

 現在、全員で輪を作って会議中。
 本当ならばすぐにでも動き出して邪龍をなんとかしたいところなのだが、なにぶん情報がまったくない状態で戻ってきたのだ。
 動こうにも動けないのが現状だった。

「これだけ無差別な破壊活動ができるバケモノだ。動きがあればすぐにわかると思うんだけど・・・あぁっ!?」
「ど、どうしたんだいっ!?」

 カリンを見て驚きの声を上げたは、彼女の言葉を聞かずに立ち上がると、走り出した。

「おい、・・・なにか見つけたのか?」
「みんな、っていうかファミィ!!」

 ちょっと来てくれるか!?
 腕を振り上げて、おいでおいでを繰り返す。
 全員が立ち上がって駆け寄れば、が腕に抱いていたのは。













「メリルっ!?」














 全身に傷を負い、瀕死の状態のメリルだった。
 握り締めている杖は多少欠けたりとか、先端の玉にヒビが入っていたりはしているものの、未だ原型を保っている。

「早く回復をっ!俺もやるから、手を貸してくれっ!!」

 唯一、癒しの召喚術を使えるファミィに向けて叫ぶと、は刀を抜き放った。
 共界線から魔力を受け取り、瞳の色が紫へと変わる。

「わかりました・・・お願いします、答えてくださいな。聖母プラーマ!」

 紫色のサモナイト石が明滅し、光を放つ。
 具現したサプレスの天使は、メリルを見て眉をひそめると、両手を掲げて光を集める。

 集まった光をメリルに向けると、光が彼女を包み込んだ。
 外面の小さな傷や切り傷はきれいにふさがったが、プラーマは目を閉じて、首をゆっくりと横に振ると、光に包まれて送還され姿を消した。

「外面は治ったが、内側まで治すことはできなかったようだな」
「アヴァレス、頼むっ!!」

 ソウシの言葉を耳に入れながら、は刀に封じられたサプレスの龍を喚びだした。
 刀を纏っていた紫の光が刀身を離れると、青い龍の姿を形作る。
 くるくると飛び回ると、メリルを視界に納めた。



『うっわぁ〜・・・。ずいぶんとハデにやられたみたいだね〜』
「そんな悠長なこと言ってないでさ。・・・治せるか?」
『もっちろん。ボクに治せない傷なんてないさ!』

 えっへん、と自慢げに言葉をこぼすと、アヴァレスは目を閉じた。
 メリルの周辺を紫の光が包む。

『これで大丈夫。またなにかあったら、呼んでよね。!』
「あぁ、さんきゅ」

 アヴァレスは満足そうにうなずくと、光の玉へと姿を変えて刀へと吸い込まれていった。
 埋め込まれた紫のサモナイト石が一瞬、光る。
 鞘に収めると、息を切らしたままどっかりと座り込み、息を大きく吸い込みつつメリルを見やった。

「顔色ガ良クナッテイル。数刻ホドデ目ヲ覚マスダロウ」

 生命反応をスキャニングしたクルセルドが、アッシュの心配を消そうと言わんばかりに、そんな言葉を発していた。

























「う、うぅ・・・ん?」
「あ、目が開いたぞっ!」

 いち早く気付いたのは近くにいて彼女の声を聞いたシュラ。
 アッシュはクルセルドの言葉により心配事が消えていたのか、多少なり安心して座り込んでいたのである。
 もちろん、彼女の近くにはいたのだが。

「メリル・・・っ、メリルっ!」
「ア・・・シュ・・・さん?」
「よかった、心配したよ・・・」

 涙で目を潤ませ、寝そべったままのメリルを軽く抱き上げる。

「大丈夫かい?」
「はい・・・」

 心から安心した表情のアッシュとは裏腹に、メリルはきょとんとした表情をしていた。
 瞳だけを動かして、周囲のメンバーを視界に入れる。

「あのぉ・・・」

 上体を起こし、額を抑えながら今度は首を使って周囲を見回して一言。




「私、どうしてこんなところにいるんですか?」




 たしか、フォルネシアのアジトに向かってて、森に入ったらみなさんと別れ別れになってしまっていたハズですよね?




 彼女は、何の気なくそんなことを口にしていたのだった。









第71話でした。
早いかもしれませんがメリルさんとの再会です。
そして、今は平和です。


←Back   Home   Next→


SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送