結局、洞窟内に足を踏み込んでしまっていた。
 相棒の悲鳴を聞いて真っ先に洞窟に飛び込んだアッシュを先頭に、ユエル。さらに突然のことでクルセルドの右脇に担がれたイリスで、その左脇に天下無敵のおっとりさんであるファミィ。最後尾をソウシが駆けていた。

 入った瞬間、大きな廊下が目の前に広がった。
 内部は薄暗く、壁の天井際を炎が剥き出しの燭台が点在している。
 床は洞窟らしくなく綺麗に磨かれているらしく、まるで鏡のように自身が映りこんでいた。

「どこだよ・・・どこにいるんだよ・・・!?」

 アッシュはキョロキョロと首を振り、先ほどの悲鳴の主を必死になって捜索していた。

「アッシュ、ちょっと落ち着けって!!」

 アッシュはの声を無視し、1人で猛然と内部を駆けて行く。
 額には汗が浮かび、どれだけ彼が必死になっているのかが見て取れる。

「しかし・・・広い廊下ですねぇ・・・とても山の内部とは思えないです・・・」
「ってかクルセルド、いい加減ボクたちを降ろしてよぉっ!!」
「あら、いいじゃない。わたくしたちと他のみなさんでは、体力の差は歴然です。無理は禁物ですよ?」

 イリスはまだやソウシに比べたら、身体の大きさは半分ほど。ファミィは外見からして先頭を走るアッシュに追いつけるはずが無い。
 イリスと同じくらいの体つきをしているシュラを見れば、彼は金棒を引きずったまま涼しい顔をして彼らに着いていっている。

「むぅ〜・・・」

 ファミィのもっともなセリフに、イリスはいかにも納得いかない、といった表情をするものの返す言葉が見つからず、口をつぐんだ。





    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第56話  再会







 私が、消えていく・・・




 自分を消そうと、『なにか』が自分を押しつぶす。
 私はそれに耐え切れず、潰されようとしている。潰されてしまえば、私は私ではなくなってしまう。
 それなのに、なんだかとても、あたたかい。




 『なにか』って・・・なんだろう?




 今にも潰されようというのに、自分はそんなのんきなことを考えている。
 私の今の最優先は、自分が潰されないように頑張ることだと思っていたのに。

 恐れることはない。
 すべてを委ねてしまえと、『なにか』は言う。
 委ねてしまえば、怖がる必要はなくなると。

 ・・・そんなこと、できるワケがない。
 私には、まだやらなきゃいけないことがある。

 大切な、大切な・・・探し物。

 見つかったら、例え自分がどうなろうとも。
 私は、それを見つけたい。




 見つかった先にはきっと、楽しいことが待っているから。




 でも・・・それでも自分を押し付ける『なにか』は、私に囁きかけるのをやめようとしない。
 怖い・・・けどあたたかい『なにか』。




 もしかしたら、これが・・・私の
―――


















「あ・・・ァあァ・・・」

 メリルの額に手を置いた瞬間、フォルネシアはその手に淡い魔力を纏わせた。
 その魔力はメリルの身体を包みこみ、彼女に吸い込まれるかのように消えていった。
 光が消えていくたびにメリルから放たれていた悲鳴は小さくなり、すべて消えたときには彼女から言葉が発されることはなくなっていた。

「・・・・・・」

 フォルネシアは満足気な笑みを浮かべつつゆっくりとメリルに近づいていく。メリルの身体は恐怖に駆られることなく、首だけが近づくフォルネシアを見上げていた。
 メリルのすぐ前までたどり着いたフォルネシアは懐から先端に青い石がついた紐を取り出し、それを首に掛けると、先端の石が明滅する。


「・・・これから・・・いえ、貴女は昔も今も私の妹・・・メリル・ヒルベルトよ」

「はい、姉さま・・・」


 返事をするメリルをフォルネシアは嬉しそうに目を細め、ひざまずいて彼女を腕の中に納めた。






















「メリル
――― っ!!」

 ひたすら、ただひたすらに相棒を呼びつづけていた。

 かなりの距離を走ったはずなのだが、彼女の姿はいっこうに見えてくる気配を見せない。
 外まで聞こえるほどの悲鳴だったのだ。見つからなければおかしいはずだった。

「くそっ!!」

 表情を歪め、舌打ち。

「なんだか、この中ってとっても・・・広いよねぇ」
「そうだな、もう結構な距離を走ってるはずなんだけど・・・」
「・・・っ!?みんなっ!!」

 とユエルの話を遮り、アッシュは前方を指差す。
 前方は、行き止まり。壁の中心に、扉があるだけだった。

「なんだよ〜、アレだけ走って行き止まりなんて・・・」

 ぼやくのはシュラ。自分よりも長い金棒をひきずりながら長時間走るのは、さすがに辛かったらしく、肩で息をしていた。

「おい、気をつけろよ。この先から、魔力がプンプンしてやがるぜ」

 表情を歪め、バルレルは目の前の扉をにらみつける。
 つまりこの先には、当初の目的であった人物がいるということを意味していた。

 魔力に当てられンじゃねェぞ。

 自分の武器を握り締めて、吐き捨てるようにバルレルは忠告してきていた。

「つまり、だ。ヘタをしたら入った瞬間に魔力に当てられてどうにかなっちゃうと」
「くわしくは知らねェが、そういうこった」

 魔力にめっぽう弱いことを自覚しているが冷や汗を流しつつ尋ねれば、バルレルは彼の望んだ答えを返してきた。
 それを聞いたはうへぇ、と顔をしかめた。

「この先にメリルがいるかもしれないからね。には悪いけど、開けさせてもらうからね・・・っ!!」

 扉は押して開けるようになっていたため、アッシュは取っ手に手をかけて、ひねりながら扉を押す。
 ギギギィ・・・と重い音を立てつつ、扉はゆっくりと開いていった。


「ぐっ!?」



 開いた瞬間、吹き付ける魔力に耐えながら前へと足を押し出す。
 魔力がほとんど0に近いにとって、耐えがたい状況に顔を歪めながらもなんとか堪えていた。
 扉の先はこれでもか、と言えるくらいの広い部屋になっていて、やはり薄暗い。唯一の明かりは、廊下同様炎が剥き出しの燭台のみだった。
 そして、真っ先に視界に入ってきたのは、無数に折り重なる死体と、そのふもとにいる数人の人間たち。

 その中の1人、フォルネシアは隣にたたずむ探し人の肩に手を置いた状態でにっこりと微笑んでいた。





「長い道のり、ご苦労様でした。みなさん・・・そして、いらっしゃいませ。ようこそ私たちの城へ」
「フォルネシア・ヒルベルト ・・・」




 名前をつぶやいたのはソウシ。
 その隣で目的の人物を見て身体を震わせているのはアッシュだった。



「メリルっ!!」



 彼女は服と靴を履いた状態で、フォルネシアを含む数人の男女に囲まれていたのだった。








第56話でした。
アッシュ目立ちまくりです。






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