「なに言ってんですか、相手は弓使いですよ!?」
「大丈夫ですよv」

 詠唱中は、くんが守ってくれますからvv

 サモナイト石を取り出しながらファミィはを見てにっこりと笑った。
 満面の笑みを見せ付けられ、は顔をそらし、地面に刺さった刀を抜いて両手で握ってファミィを守るように背を向けた。

「それじゃあ、いきますねv」

 杖を片手に紫色のサモナイト石を掲げると、目を閉じた。

「それじゃ、あたしも・・・っ!!」
「はあぁぁっ!!」

 遠慮なく撃ち出される無数の矢を、はファミィを守るように刀を振るう。
 自分の前方を守ることができれば、同時に後ろのファミィも守ることができると考えた結果であった。
 主には居合を用い、再び降り注ぐ光矢の雨をがむしゃらに叩き落していく。幸いにも矢は彼の正面からのみ襲ってくるので標的の特定は容易だった。


「おねがいしますね、ガルマちゃんvv」





    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第50話  地割れとおしおき





 サモナイト石が光り、黒い鎧に身を包んだ女性型の悪魔が彼女の隣に具現した。
 右手には身長ほどの突くことのみに特化した銀色の槍、左手には盾をそれぞれ携えて、悪魔は宙へと舞い上がる。
 ファミィは杖を頭上に掲げると、にっこりと笑った。

「ちょっ、ウソでしょ!?」
「魔臣・・・ガルマザリア・・・」

 慌てたハルカの声と、空中の悪魔を見て名前をつぶやくの声が重なる。

「ごめんなさいね、ハルカちゃん」

 笑みを浮かべたまま、彼女は謝罪の言葉を口にする。
 そして、はファミィの背後に浮かぶどす黒いオーラを目の当たりにし、冷や汗を流した。

「ぐらぐらぐら・・・」
「い、イヤアァァァっ!!!」
「これって、俺もヤバイのでは・・・?」

 は悪魔を見上げて苦笑いを浮かべ、ファミィへと視線を移動させる。
 その先には、変わらず笑顔のファミィがいて。彼女の手の中にあるサモナイト石は絶えず強い光を放っていた。

くん、がんばって逃げてネv・・・どっか〜んvvv!!」

 ぱこーん!!

「ふぎゃっ!?」

 ズガガアァァァァ!!

 ファミィの振り下ろした杖の先がの頭に直撃した後、悪魔は自らの槍を地面に突き立てた。
 同時に地面を大きな振動が襲い、ハルカは立っていられず地べたに座り込んでしまった。

 座り込むハルカに向けて地割れが襲いかかった。

「ひゃあぁぁぁっ!?」
「・・・っ」

 痛む頭を抑えながら、は彼女へと目を向ける。両の足を地面にべったりと付けたまま、腰が抜けたかのように動かない。
 表情だけは迫る地割れの恐怖に歪められている。
 は頭の痛みによる涙を目に溜め刀を納めると、舌打ちをしつつハルカに向けて地面を蹴った。






「いやあぁぁぁ・・・っ!?」

 地割れは悲鳴をあげるハルカに向けてまっすぐに向かっていた。彼女はすでに携えていた弓を取り落とし迎撃すらできない状況で、は地割れに襲われる前に彼女の横にたどり着くと、小脇に抱えて茂みへと飛び込んだ。
 紙一重の差で、地割れがハルカのいた場所を通り過ぎる。弓は地割れと同時に奈落の底へと落下し、次第に見えなくなっていった。



「あら、あらあら?」

 オーラを消したファミィはしきりに周囲を見回した。
 彼女の正面の地面は割れ、底は見えない。周囲を砂煙が覆い、手を伸ばした先すら見えなかった濃い霧を跡形もなく吹き飛ばしていた。

















「なんで助けたのよ?」

 茂みの中で当然のようにハルカはに尋ねる。自分は敵である目の前の青年に助けられたのだから、尋ねるのは当然だった。
 はゆっくりと立ち上がってファミィを視界に入れると、

「ファミィさん、やりすぎですってー。死ぬかと思ったですよ!!」

 衣服についた埃を払いつつ、あきれたかのような声を上げた。

「ごめんなさいね〜。大丈夫でしたか〜?」

 のんびりとした声がすぐに返ってきて、は茂みから歩み出た。
 ハルカは慌てて立ち上がり、にらみつけると、声を荒げた。

「ちょっと、聞いてるの!?」
「・・・別に、目の前で死なれると困るだけだ」

 ハルカに顔を向け何の抑揚もない声で一言、彼はそう答えてから視線を正面に戻した。
 地割れの手前まで歩いてから、ぴたりと立ち止まると、


「もう君の武器はないんだ。悪いけど先へは行かせてもらう。それから・・・」

 ゆっくりと振り返ると、

「せっかく生き長らえた命、大事にしてくれよな」

 つぶやくように声にすると、笑みを浮かべた。






 1人残されたハルカは傷だらけの後姿を見つめ、

「・・・、か・・・ヘンなヤツ」

 敵である人間を助けるなんて。

 彼の名前を復唱しつつ、呆れたような笑みを浮かべた。


















「ファミィさん、ひどいですよ〜。杖で頭、叩くなんて・・・」
「あらあら、コブになっちゃってますわね」

 ファミィの元へたどり着いたは、早速彼女に向けて抗議を開始した。
 もちろん、被害をこうむった脳天を見せ付けながら。

「別に叩く必要、なかったんじゃないですか?」
「痛かったですね〜、いたいのいたいのとんでけ〜」
「飛ぶかよっ!!」

 まるで子供をあやすような言い方に顔を赤らめつつ、ツッコミを入れた。
 全く動じることのない彼女の様子を見て、からかわれてるなと頭で考えつつ、ため息を吐いて周囲を見回す。
 召喚術が炸裂した直後は砂埃が舞っていたものの今ではそれは見る影もなく、晴れわたった空が天を染めていた。

「じゃ、行きましょうか。ファミィさん」
「そうですね・・・って、わたくしたち、ほとんど同年代なんですから、わたくしのことは呼び捨てでも構いませんよ?敬語もいらないですし・・・」
「いや、なんか同年代って感じがしなくて・・・」
「それって、わたくしが老けて見えると・・・?」
「い、いやっ、ちがっ・・・」

 ファミィの虚空へと掲げた手が光を帯びる。
 はこれがなんなのか知っていた。つい先日、イリスがこれを【おしおき】と称されて喰らっていたものであると。
 そして、これから自分に降りかかる災いを予感していた。

 【おしおき】されるな、と。

「問答無用v」
「わーっ、笑ったまま黒いオーラ漂わせるのはヤメテーッ!!」


 カミナリどか〜ん、ですvv


「うわあああぁぁぁ・・・」





 晴れわたった空に、断末魔の叫び声がこだました。








第50話でした。
ファミィさん最強です。
2で見た限りではガルマと仲良しっぽいので・・・





←Back   Home   Next→

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送