ざくざくざく・・・
歩くたびに枯葉や折れた枝が音を鳴らす。彼がいるのは深い深い霧の中。1人、森の中をさまよっている男性がいた。
・・・彼の名は沖田総司。江戸時代は幕末の日本から召喚され、召喚主を失ったはぐれ召喚獣である。
目の前もほとんど見えない霧の中で彼は歩みを止めて側の木に片手をついて、大きく息を吐いた。
「時間はどれくらい経過している・・・むぅ、この霧ではわかるわけがないか。かなり歩いているとは思うのだが・・・」
彼の感覚はあながち間違いではない。
仲間がいないことに気づいて、探し始めてから1時間が経過していた。
疲れなどは見せていないものの、代わり映えのない景色に彼は歩く気をすっかりとなくしているのだった。
地面に向けていた顔を正面に向ける。もちろん視界は霧に覆われて景色はほとんど見ることはできない。
「せめて音が聞こえればいいのだが・・・」
日本にいた頃は、夜に行動することが多かった。それはまだ維新志士との小競り合いだけが起こっていたころで。
視界の悪い夜中に、明かりもない状態で森で戦闘は何度も行っていく中で、彼は生きてきた。
視界が悪くて目がつかえなければ、音を頼ればいい。
数々の戦いを生き抜いてきた剣士にもたらされた知識だった。
「ふう・・・この森・・・いや、霧にか。音まで遮ってしまうものなのだろうか・・・?」
知識を活かすことができず、ソウシはがっくりと肩を落とす。
その後、数秒とせずに彼の耳に銃声が飛び込んできた。
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜
第48話 一時の別離 4
「機界の盟友よ、いでよっ!!」
虚空に具現したロレイラルの召喚獣は、その力を以って目の前に迫るはぐれ召喚獣たちを吹き飛ばした。
宙を舞った召喚獣たちは、淡い光を放って消えていった。
召喚術を行使した金髪の少女は額に汗を浮かべ、両手に黒いサモナイト石と杖を持って表情を歪める。
「・・・もーっ、なんでボクたちがこんな目に合わなきゃイケナイんだよーっ!!」
『敵召喚獣、10時ノ方向ヨリ30、4時ヨリ15。コチラヘ接近中』
「あーっ・・・もぅっ!!」
敵勢力を分析し、クルセルドはただひたすらに銃を撃ち出した。
小さい身体のどこにこんな力があるのか、イリスはクルセルドの肩で長い杖を振り回して叫び声を上げた。
「イリスっ、クルセルドっ!!」
召喚獣の鳴き声しか聞こえない中、低い男性の声がイリスの耳に入る。
杖を振り回すのをやめて、キョロキョロと見回す。もちろん、霧で視界はほとんど遮られているので、ただ仲間が来たと期待しているだけ。
「どこっ、誰っ!?」
「私だっ!!」
さらに声がイリスにかかる。
「・・・ソウシ?」
『召喚獣ノ中ニ、ニンゲンノ反応ヲ確認。照合・・・』
銃を召喚獣に向けつつ、クルセルドはピピピピ・・・と人工頭脳をフル稼働させる。
『・・・一致。コレハ、ソウシ殿ダ、いりす』
クルセルドが言った瞬間、霧の中から現れたソウシは刀を振りかざして召喚獣を斬りつけた。
振り下ろし、その隣に向けて斬り上げる。さらに左右に刀を薙ぎ、蹴り飛ばす。
「・・・ぇぇぇえええいっ!!」
『Gya,Gyyyyっ!?』
ある召喚獣は血を流して倒れこみ、またある召喚獣は飛ばされた勢いで背後の同胞たちと激突して気絶した。
「無事かっ!?」
「うん、ボクたちは大丈夫。他のみんなはっ!?」
「知らんっ!!」
イリスは、ソウシの返事にしょげ返るように肩を落とした。
『シカシ、貴方ト合流デキテ幸イデス。コノ戦力ナラ、ココニイル召喚獣タチヲ退ケルコトガ可能』
「イリス、しょげるのは後にしろ。今は召喚獣たちを何とかするのが先だっ!!」
「・・・う、うんっ!!」
刀を振りかざし、ソウシは群がる召喚獣たちを切り裂いていく。クルセルドは両手の銃を乱射し、1体ずつ確実に戦闘不能にしていく。
イリスはサモナイト石に魔力を注ぎ、
「いっくよ〜っ!!」
杖を頭上へと掲げた。
程なくして、3人ははぐれ召喚獣たちを全滅させることに成功したのだった。
「うぇ〜、疲れたよぉ〜・・・」
「ケガとかはしていないのか、イリス?」
抑揚のない声で尋ねられたイリスは、だいじょうぶだよ〜、と首を縦に振った。
『シカシ、本当ニ助カッタ』
「なに、困ったときはお互い様だ」
戦場だった場所から少し離れた広場のような場所で、3人は腰を落ち着けて話していた。
魔力を使い切ったイリスは、服が汚れようがお構いなしと言わんばかりにごろんと地面に寝そべっている。
ソウシとクルセルドは互いに同じ方向を向いて、口だけを動かした。もちろん、クルセルドには口などあるわけが無い。男性の声と、電子的な声が広場に響いていた。
「これからどうする?」
『ココデ取レル行動ハ2ツ。他ノ方々ト合流シテカラ目的地ヘ、マタハ直接目的地ヘ向カウカ・・・』
「ボクどっちでもいいよ〜・・・」
提示された2つの案に、イリスはやる気なさげにつぶやく。ソウシはあごに手を添えて、顔をしかめた。
今自分たちがこうしているように、他の人間たちも同じように少数か1人でいるだろう。もしかしたら、同じように召喚獣たちに囲まれているのかもしれないし、とバルレルが戦った連中と鉢合わせしているかもしれない。
しかし、合流するにしても誰がどこにいるのかすら定かではない。
「・・・むぅ」
考えをめぐらせ、ソウシはうなる。
「・・・目的地はココからどのくらいだ?」
目的地とは、最終目標であるフォルネシアのいる場所である。生命反応のある洞窟を森に入る前に調べており、場所自体は全員が知っているはずだった。だが、みんながみんな森に入った瞬間にいなくなってしまったため、もしかしたらわからなくなっているかもしれない。
『ココカラ歩いて15分ホドノトコロニ』
「よし、それじゃあ先に目的地へ行くか。他の連中も今に来るだろう」
彼らを信じよう。
ソウシは言って、笑みを見せた。
「ボク、もう召喚術できないよ。魔力すっからかんだから〜」
「・・・まぁ、アレだけ召喚術連発してれば仕様がないな。ここで休むことにしよう」
「クルセルド〜、薪とかお願い〜」
『了解』
ガション、と立ち上がり、クルセルドは森に入っていった。
「う〜・・・」
「少し寝ておいたらどうだ?」
ここは私が見ておくから。
イリスは気だるそうに「わかった〜」とつぶやくと、あっという間に夢の中へ入っていった。
静かになった彼女を見てから、両手を地面について霧に囲まれ見えない空を見上げる。
「無事だといいが・・・」
ソウシは小さく、消え入るような声でつぶやいた。
第48話でした。
飛ばされてからのみんなの行動は今回で一応終わりです。
次回からしばらくはほとんどが戦闘、という形になるかと。
戦闘シーンは正直、苦手です。
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