サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜
「おおぉぉぉっ!?」
仲間たちが巻き込まれぬようにと、とバルレルは必死に足を動かす。シオンの放ったシルターンの召喚術が炸裂し、岩を粉々に粉砕したのを見て声を上げた。
「おい、どうすンだよ!?」
「サムライさんとは俺がやるよ。刀は小回りが利く。槍じゃ不利だ」
召喚術の余韻が消えたところで、2人は警戒するように周囲を見回す。少女の姿は確認できたが、サムライのそれは見当たらない。
バルレルは槍を片手に笑みを浮かべて少女の元へ駆けていく。
「はあっ!!」
「っ!?」
一振りの刀がに迫る。慌てて受け止めようと腕を上げるが、間に合わない。は咄嗟に腰をかがめて後ろへ下がった。そのおかげか、肩口を浅く斬られただけにとどまり致命傷を避けることができた。
傷口から服に血がにじみ、瓦礫の中からやっとの思いで見つけ出した服に侵食していく。
「はぁ、はぁ・・・」
息を荒げて、肩口を手でおさえる。
「すまんな。恨みはないが彼女に手を出す以上、死んでもらわねばならん。おぬしも、奥でのんきに眠っている連中も」
「彼女って・・・フォルネシア・ヒルベルトのことかっ!?」
両手に刀を持ったまま、彼はうなずく。
「サムライとは、武芸をもって主君に仕えるもの。すべては我が主、フォルネシアのためだ」
当然のことだ、と彼は下ろしていた刀を再び構えた。
第44話 青年と少女
槍を水平に構え、突き出す。さらに横から薙ぐ。しかし、それらをことごとく避けつづけ、彼女に届くことはなかった。
それはまるで夜空に舞う蝶のようであった。
チッ、とバルレルは舌打ちをする。
もともと気が短い性格な上に、酒が入っているためか繰り出す攻撃を難なく避ける目の前の少女に対して彼は苛立ちを感じていた。
「己が力を解き放ち、彼の者を焼き払え・・・ジップフレイム」
「しまっ・・・!?」
彼女の手に納まる黒いサモナイト石が光り、宙にロレイラルの召喚獣が具現する。
それは、モーターが回るような音を発しながら片腕をバルレルに向けた。
炎がバルレルの周りを焼き払う。そして、それは彼自身をも飲み込んだ。
赤い光に包まれる。
その中で、とハヤテは刃を合わせていた。
両手に携えた刀が確実に急所を捉え、繰り出される。
右手の刀と左手を巧みに動かして、迫る刃を受け止め、受け流す。
嵐のような彼の攻撃を、は目と身体をしきりに動かして応戦していた。
「・・・なかなかやるではないか」
「それはどうも」
流れる汗を拭いつつ、言葉を返す。近くで戦っているバルレルを気にしながら、目の前で同じように汗を流す男性を見つめた。
「彼女が何を企んでいるのか・・・知ってるな?」
「さあ・・・俺はあの御方の御心のままに行動しているだけだからな」
シルターンのサムライと彼は言っていたから、彼女の護衛獣なのだろうとはそこで理解した。さらに、護衛獣である彼が、なぜ彼女を護らずにここにいるのだろう?という疑問が頭に浮かぶ。
しかし、その疑問が言葉になるはずもなく。
2人は再び激突した。
刀同士がぶつかり合い、火花が飛び散る。
はこちらからと言わんばかりに腰をかがめ、刀を振るった。
「はぁっ!!」
「っ!?」
の振るった刀の刃が左手の刀の柄を捉え、ハヤテはたまらず刀を手放した。その刀は宙を舞い、少し離れた地面に刺さった。
それでも彼は右手の刀のみで構えた。
ちらりとバルレルと少女を見やると、騒ぎに気づいたクルセルドの姿が見えた。クルセルドは、苦戦しているバルレルの援護のために銃を構えている。
視線を目の前のサムライに戻すと、一言。
「ここはおとなしく、退いてくれないか?」
「・・・チョロチョロチョロチョロとっ・・・うっとおしいんだよっ!!」
槍を頭上で振り回し、遠心力を乗せて斬りつける。しかし、やはりというべきか彼女はひらりと身を翻して避けてしまう。その際に、スカートの裾を刃がかすめ、切り裂いた。
なんて身軽なヤツだ、と内心舌打ちをしつつ、紅い瞳を光らせ槍を振るう。
輝きのない、引き込まれそうに蒼い瞳をもつ少女は少し離れて自分の服を見やると、斬られた裾の部分に触れてぽんぽんと何かを払うような仕草をした。
無表情のまま行われたその行為のせいか、バルレルは自分がバカにされたような気分になったのだろう。怒りの表情を露わにした。
「てめェ・・・いい加減にしやがれ!!」
槍を振り上げ、突っ込むバルレル。恐怖を微塵にも感じさせない彼女は、赤いサモナイト石を手のひらに乗せて前に突き出した。
すぐに召喚術の詠唱がはじまる。
シオンはバルレルが彼女の元へ到達するよりも速く、詠唱を終わらせようとしていた。
「誓約の元・・・シオンが命じる・・・っ!!」
「・・・なんだっ!?」
ガァン、ガァンッ!!!
2発の銃声。放たれた銃弾はバルレルとシオンのちょうど中間に着弾し、地面をえぐり出していた。
2人が銃声の方角を見やる。
その先には右腕アームに携えた銃口から白い煙を立たせたクルセルドの姿があった。
「おい、てめェ・・・なんのつもりだァッ!?」
「オチツケ、ばるれる。感情ガ昂ブッテイルヨウダ」
未だ煙を上げつづける銃をシオンに向ける。
「退ケ。コノ場ハスデニ自分ラガ有利ダ。退カナイナラ・・・撃ツ」
緑の目を光らせ、クルセルドから声が発された。
機械兵士の銃さばきには目を見張るものがある。さすが機械、とでも言うべきだろう。これと決めた箇所には必ず銃弾を当てる。
銃の正確さを知っているのか、シオンはサモナイト石を腰の小さなカバンに戻した。
「・・・どうやら、我らが不利のようだな」
「それじゃあ・・・」
「仕方あるまい。この場は退くが、次は命がないものと思うがいい」
は2,3回刀を振ると、鞘に納めた。
「あ゛〜・・・納得いかねェッ!!」
2人がいなくなると、バルレルは頭を抱えてうめきはじめた。
「ったく、大丈夫って言ったの誰だよ・・・」
「マッタクデスネ。自分ガ気ヅイタからヨカッタモノノ・・・」
「あー、うるせェうるせェ」
とクルセルドの言葉をバルレルは耳をふさいで聞こうともしない。
まさか夜中に襲ってくるとは思わなかったため、仕方ないといえば仕方ないのだが。
「・・・まぁ、今回は何とかしのげたけど、次にこんなことになったらどうなるかわからないな」
「ソウデスネ。警戒ヲ強メタホウガヨイデショウ」
3人は、ほっと息を吐いて、のんきに寝ている仲間たちを見やる。
クルセルドが2発も銃を撃ったというのに、彼らは目覚める気配すら見せなていない。
アッシュに至っては、
「もう食べられないよ〜」
ありきたりな寝言を言って寝返った。
「なぁ、・・・」
「・・・ん?」
「明日、コイツがおきたらシメていいか?」
「そうだな。いや・・・」
は言葉を切って、
「・・・別に明日じゃなくてもいいだろ」
へっへっへっへっへ・・・
アッシュくん危うし。
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