バルレルは、以前の子供の姿に戻っていた。
 彼曰く、解除されてしまえばどんな姿にでもなれるらしい。今の子供の姿は巨大すぎる魔力を抑制するための措置なのだ。

 魔力の感知にはどのような姿をとっていても時間がかかるらしく、彼はファミィによって撃沈されてからずっと集中して(させられて)いた。

 彼の邪魔をするわけにはいかない、と考えた周りの人間たちは、ファミィを監視役に残してテントでくつろいでいた。なぜファミィかといえば、裏切りを敢行しようとしたバルレルを口頭であっさり陥落させてしまったからだった。
 ちなみに、ファミィと共にヴァンドールへやってきた金の派閥の兵士は崩壊したヴァンドールで生存者を探して奮闘している。

「なんだか、ヒマになっちゃったね」
「まぁ、バルレルくんが彼女の魔力を見つけない限り、動こうにも動けないのが現状だし。しょうがないよね」

 手持ち無沙汰に足をバタつかせるユエルにアッシュが答える。

「あの女は、大会の賞品として出されていた剣を大事そうに持っていたが、ああいった場に出されるものはたいてい贋作なのではないのか?」
「そうだよね・・・っていうか、がんさくって何?」
「レプリカっていえば、わかるか?」

 さすが子供だ。イリスは贋作の意味がわからなかったらしい。首をかしげる彼女に、は意味を述べた。


「・・・それは、本物ですわ。なにせ、派閥で管理していたものだったのですから」


 ぱさ、とテントの入り口が開き、ファミィとバルレルが入ってきた。
 彼女はすぐに真剣な表情をすると、






「居場所、判明いたしましたわ。いかがなさいます?」






    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第41話  目的と望み






「あのいけ好かねェオンナの集団は、ヴァンドールから一番近い山のふもとにいるはずだぜ」

 バルレルは長時間の魔力捜索の結果として、簡単な地図上を指差した。

「しかし、なんでこんな場所を拠点にしてるんだ?」
「・・・この山は、他と比べると漂う魔力の密度が濃いのです。多分、その関係だと思いますが・・・」

 ファミィの述べた説明に、誰もがうなずく。
 彼女の望みが召喚術にまつわる何かなのであれば、そこを拠点とするにもつじつまが合うのだ。

「ここからだと、そこそこ距離があるみたいだな」
「あっちに見える山が、そうだよね?」

 がつぶやくと、ユエルは天までそびえるその山を指差して飛び跳ねた。かなり近くに見えるようだが、地図上から見れば結構な距離がある。
 準備をするにしても街の状態が状態なので、それほどやることもない。






「そういえばさっき、聖剣が本物だと言ってましたけど、本当なんですか?」
「ええ。あの剣は願いを叶える代償として使用者の命を喰らう魔剣と対を成す剣なのですわ。その効果は、誰も使用したことが無いのでわからないのです」

 ちなみに、魔剣の名は『レイヴァルド』。かつてリィンバウムをところ構わず荒らしまわっていた邪龍を封じた剣(つるぎ)ですわ。

 ファミィの話を聞いたは、過去へと思考を巡らせる。
 島を出る前、その話にまつわる文献を読んだ記憶がかすかにあったのだ。

「・・・さん?」
「ん、ああ・・・何?」
「その・・・何かご存知なんですか?」

 メリルの問いに、まあね、と答える。
 そのまま、思い出そうとしても思い出せないことを彼女に伝えた。

「金の派閥で厳重に保管していたはずなのですけど・・・以前、何者かに盗みに入られまして・・・」
「厳重じゃねえじゃねェかよ」

 右手を自分の頬に当てて、困ったようにファミィはつぶやく。バルレルのツッコミはもちろん無視されていた。
 ふてくされるバルレルの肩をが叩いてなだめる。

「とにかく、奴らが何を考えているのかわからない以上、行動しなければ道は開かん」
「・・・行動あるのみ、だねっ!!」

 ソウシの声にユエルが続き、彼女が拳を振り上げた。









「オレはどうすりゃいいんだよっ!?」

 今後の方針も決まりかけた矢先、声が全員の耳に響いた。
 助けてからこっち、ずっとほったらかしだった鬼っ子
――シュラだった。

 不満そうな顔をしてあぐらをかいて座り込んでいる。

「・・・ご、ゴメンネ〜」
「あらあら・・・」

 みんながみんな、困ったなと首をひねる。

 もともと、彼は部外者なのだ。これから起こるであろう戦いに巻き込むわけにはいかなかった。

「・・・君は、どうしたい?」
「え・・・」

 つぶやいたに視線が集まる。
 彼はシュラを見つめていた。

 対するシュラは、視線を地面に落としていた。

「オレは・・・オレは、アンタたちの手伝いがしたい!」

 シュラは、その場から一歩を踏み出し、

「オレ、自分を召喚したニンゲンからここまで逃げてきてさ。あそこで倒れたんだ」

 かろうじて残っていた門らしき瓦礫を指差す。
 全員で指差した方向を見れば、そこだけ周りより損傷が少なかったのか門の形をかたどっていた。

「それで、次に目覚めたらさ。住人のおっちゃんやおばちゃんがオレにすごく良くしてくれたんだ」

 その命の恩人たる住人たちは今、街の瓦礫の下。金の派閥の兵士たちが生存者の捜索をしているが、無駄、ということになりそうだ。
 上げていた腕を下ろし、彼は大粒の涙を流し始めた。

「・・・孫がっ、できたみたいだって・・・オレに言ってくれたんだっ!!だから・・・」

 みんなの仇討ちをするんだっ!!

 大きな目に涙をためつつ、顔を上げ叫んだ。涙が頬を伝って地面に落ちる。
 茜色の瞳には、強靭な決意が芽生えているのだろう、と誰もが感じた瞬間だった。

「お前が今まで体験したことのないような危険なことも、待ち受けているだろう。それでも・・・私たちと行くと言うのか?」

 彼に近づいたソウシは、涙を流しつづけるシュラと向かい合って片膝をつきつつ、たずねた。
 流れ出る涙をぐい、と拭って、彼はうなずいた。


「お前の覚悟はわかった。一緒に来ることに私は賛成しよう」
「・・・!」

 シュラの表情が嬉々としたものに変わる。

「まぁ、イリスもいることだし、大丈夫だと俺も思うよ。・・・一緒に行こう」
「・・・よろしくね、シュラくん」
「もーっ、おにいちゃん、”イリスも”ってなによーっ!!」
「オサエロ、いりす」
「よろしくおねがいしますね。」
がいいならユエルもいいよっ!!」

 口々に歓迎の言葉を述べていく。彼は、嬉しそうに「よろしく」と頭を下ろした。










「・・・で、バルレル。キミはどうするの?」

 シュラが仲間に入り、ユエルは彼に振り向く。
 ぶすーっ、とした表情の彼は「ケッ!」とふてくされたように言うと、

「俺は、まだとの約束を果たしてねェからな。断られてもついていくからな!!」

 彼の声に、は酒盛りをすることを忘れていたらしく思い出したように頭を掻く。
 その行動に、バルレルは声を上げた。




「わたくしも、お供いたしますわ」
「いいのですか?金の派閥の議長さんが、私たちと一緒に来るなんて・・・」 

 兵士さんたちは・・・?

 メリルが当然のように放った質問は、「大丈夫ですよv」の一言で却下された。理由は、

「議長といってもなりたてですから、彼らは彼らでどうにかすると思いますわ」

だとかで、とりあえず、このことを伝えてきますねv。と言うや否や、彼女はそそくさとその場から去っていった。






「それでは、今日はこれで解散にしよう。決行は明日で問題ないか?」
『ないっ!!』
「では、解散っ!!」





 ソウシの号令で、この場は解散となった。







 ここに、即席の凸凹パーティが結成された。








第41話でした。
2話連続更新を敢行してみました。
文章がおかしい部分が多々あるとは思いますが、
私も必死でした。





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