目を覚ますと、見慣れない天井が視界を支配した。

 ゆっくりと身を起こす。見渡せばここがテントの中でであることがわかる。

 出入口から光が差し込み、今が朝か昼間であることを告げている。


「俺・・・なんで、こんなところに・・・」


 つぶやいてみる。
 もちろん、その問いに誰かが答えてくれるはずもなく。ただ虚空に消えた。


「ってか、ここ・・・どこなんだろう?」


 外に出てみようかと、簡易ベッドから地面に足を下ろすと、



「あらあら、お目覚めのようですね。おはようございます」



 おっとりとした声。

 入り口に、金髪の女性が立っていた。





    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜
    第39話  金の派閥





「・・・え、え〜と??」
「あら、申し訳ありません。わたくしは・・・」
「あ〜〜〜っ!!」

 彼女の後ろからひょっこりと顔を出したユエルがに特攻。
 は声にならない声をあげた。

「あらあら・・・」

 彼女が頬に手をあてて、困った顔をする。

「なかなか起きないから、心配してたんだよぉ?」
「わ、わかった・・・わかったから、とりあえず離れてくれ」

 ベリィッ、という音が聞こえてくるかのようにはユエルを自分の身体からはがすと、地面に正座をした。

「えっと、その・・・よくわからないんですが、ありがとうございます」
「いえいえ、わたくしたちはただ・・・こうしてテントをお貸ししただけですわ。こちらとしても、貴方がたにはお聞きしたいことがありましたので・・・」

 ここはヴァンドールの脇の荒野ですわ、と女性は言った。

 ヴァンドールで魔力の異常な高まりを感知したので調査しろ、との依頼を受けて、わざわざファナンからで向いてきたらしい。そして、ヴァンドールに到着したところで、倒れているたちを見つけた。

 そんなことを女性は口にして、外に出ますか?、とに向けて尋ねてくる。
 は、そうします、と彼女に返した。



















 テントの外に出れば、すでに彼以外の全員がいた。
 の姿を確認すると彼にかけよって、互いの無事を喜んだ。







「改めて、感謝します。助けていただいて、ありがとうございます」
「いえいえ、先ほども言いましたが、わたくしたちとしても貴方がたにお聞きしたかったことがありましたので・・・」

 まずは自己紹介が先ですね。
 彼女はそう言って自己紹介を始めた。

「わたくし、金の派閥の議長を務めさせていただいております、ファミィ・マーンと申します。イリスちゃんがお世話になったようで、ありがとうございます」
「いや、たまたま一緒にいただけですから・・・」

 自己紹介のはずなのに、ファミィは深々と頭を下げた。つられて、やアッシュ、ソウシが頭を下げた。イリスはの隣でなぜか冷や汗を流している。

「俺はです・・・ってイリス、なぜにそんな顔してるんだ?」
「ひっ!?・・・べべべ別にっ!」

 急に声をかけられた彼女はを見ると、両手を使って一生懸命否定した。

「イリスちゃんとは派閥での先輩後輩なんですよ」

 ファミィがそう言うと、イリスは何かを感じ取ったのか背後へとあとずさった。



 アッシュ、メリル、ソウシ、ユエル、バルレル、シュラの順で軽く自己紹介をする。バルレルだけは最後まで渋っていたが、結局はぶーたれながらも名前だけを名乗った。

 そして、彼女は本題を切り出した。

「実は、わたくしたちの目的は『ヴァンドール周辺で発生した強大な魔力の調査』なのですわ」
「ねぇ、それって・・・」

 ユエルがを見る。
 ファミィも不思議そうな顔でこちらを見ている。

「あ、あぁ・・・それ、たぶん俺です」
「あらあら、そうなのですか・・・?」

 強大な魔力の張本人が目の前にいるというのに、まったく動揺する様子が無いファミィ。
 はそんな彼女を、大物だ・・・、などと思いつつ、事の顛末を話して聞かせる。

 その間の彼女は、やわらかい笑みを完全に消し去り、真剣に耳を傾けていた。






「・・・そのようなことがあったのですか。それはさぞ、大変だったでしょう?」
「ええ、まぁ・・・」
さんの持っているその剣は、どこで?」
「えと、言ってもわからないと思いますが、それでも?」

 質問に質問で返すと、彼女は「構いませんよ」なんて言って笑みを見せる。

「・・・これは、帝国領海にある小さな島で、とある人にもらったんです」

 刀を差し出し、彼女に渡す。
 彼女は鞘から刀身を少し出し、ふむ・・・と顎に手を当てつつ刀を見回し、元に戻した。

「・・・なにか、特殊な魔力が流れているようですね。本当だったら、危険因子として派閥で拘束させていただくところですが・・・」

 は警戒心をあらわに彼女を見つめる。
 頬に手を当てつつ、うーん、と考えるしぐさをすると、

「話に聞いた限りでは、貴方は間違った方向に力を使ってしまうような方ではなさそうなので・・・わたくしたちだけの秘密、ということにしておきましょうか」

 頬を当てていた手を口元に移動させて、ファミィはうふふ、と笑う。
 そんな彼女のしぐさに安堵してか、は警戒心を解いた。


「それでは、なぜ貴方がたはヴァンドールで倒れていたのですか?」

 彼女のその質問に、彼女を除いた全員が顔をしかめる。

「・・・フォルネシア・ヒルベルト、という名を貴女はご存知か?」
「えー・・・と、あぁ!」

 彼女は少し考えて、ぽん、と両手を合わせた。

 フォルネシアは元々金の派閥の召喚師だったらしく、先代議長との意見の食い違いから派閥を抜けたはぐれ召喚師なのだと、彼女は言った。


「それではヴァンドールの街を壊したのは、彼女と数人の仲間たちだった、というわけですね?」
「ええ。僕たちは、あそこで彼女たちに殺されかけたんです」

 彼女たちに見逃されたんですよ、とアッシュは悔しそうに唇を噛んだ。

「デスガ、コレカラドウスルノデスカ?」
「あの剣、奪われたままじゃマズいんじゃないの?」
「でも、彼女たちがどこへいったかわからないし・・・」

 剣を取り戻しに行くにしても、今となっては彼女たちの居場所がわからない。
 探すにしても、リィンバウムは広すぎる。目撃情報もないため、手の打ちようがないのは事実だった。

 八方塞とはこのことだな、などとは思いつつ、彼女たちを見つけ出す術を考えた。

「サプレスの魔力だったら、オレが探せるぜ」
「本当かっ、バルレル!?」
「・・・誓約が解けさえすれば、だけどな」

 まぁ、誓約が解けちまえば、こんな世界とはおさらばするけどな!

 バルレルはソウシの期待をぶち壊すように言うと、ケケケと笑った。
 眉間にしわをよせたソウシは、口をつぐんだ。

「よし、それで行こう」
「え?」
「バルレルに探してもらうんだよ。フォルネシアはサプレスの召喚術、使えるんだろ?だったら・・・」

 彼女の試合で、クルセルドが言っていた言葉を思い出す。

「・・・そうだな。それしかないようだ」
「それでは、誓約をとかなければいけませんね」

 メリルの言葉に、バルレルが抗議の声をあげているのを無視して話を進める。
 他の召喚師がかけた誓約を強引に解く方法として正式なものはないらしく、イリスが知っていた”荒技”を使うことになった。ファミィもその方法は知っているようで、

「あまりおすすめはしませんが・・・」

と言っていた。


「これ以外には、方法って無いのか?」
「そうだね〜。ボクが知ってるのは、これだけだよ」
「わたくしも、微力ながらお手伝いをさせていただきますね。彼女には、ヴァンドールの街を壊した、責任を取ってもらわないといけませんから・・・」
「・・・・・・・」

 は見た。
 ファミィから、なにか黒いものが立ち上っているのを。そして、それを見たイリスが、異常なまでにおびえていた。












「・・・と、とりあえず。今日のところはこれで解散にしようか。バルレルの誓約の解除は明日ってことで・・・ファミィさん、ここのテントは、俺たちが使わせてもらってもいいんですか?」
「ええ、もちろんです。そのために建てたものなのですから」

 ご自由に使ってくださいね。
 彼女の了解を得て、皆それぞれの場所に散ろうとした。












「・・・イリスちゃん」






  びくぅっ!!!






 イリスの動きが止まる。そして、ぎぎぎ・・・と首を回すと、

「な・・・なにか?」
「わたくしや師範に、なにも言わずに派閥を出たのはなんででしょうねぇ?」
「・・・!?!?」

 イリスのは顔を青くした。

「貴女は見習いですし、特別な任務が与えられたわけでもありませんし・・・師範、心配していましたよ?」
「・・・・・・」

 彼女の身体が小刻みに震え始めた。

「これは・・・おしおきを、しなければなりませんね・・・?」
「!?!?!?!?」

 ファミィが虚空に手を掲げる。
 黄色い光が、収束していく。その光は、さらにバチバチと音を立て始めた。

「いっ」
「いきますよ、イリスちゃん。よけちゃダメ、ですからね?」
「いやだああぁぁぁっ、かみなりドカーンだけは・・・いやだよおぉぉぉっ!!!!」

 イリスは悲鳴を上げて逃げ出そうと踵を返す。
 しかし、周りは自分の仲間たちが壁になっており、逃げようにも逃げることはできそうにない。

「どっ、どいてっ・・・どいてぇっ!!」
「かみなりドカーン、ですっ!」










「ぎっ、ぎにゃああぁぁぁぁっ!?!?!?」











 荒野にイリスの悲鳴が響き渡り、巨大な雷音が轟いた。












第39話でした。
あの人・・・登場しました。
おしおき・・・やっちゃいました・・・
かみなりドカーン、サイコウですか?





←Back   Home   Next→

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送