「おお、さんきゅーな。戻ってくれ、ファブニール」

 気が付いたかのように見上げたがそう言うと、今まで影を作っていたものが音もなく消えていった。
 というより黒い光になって、彼の刀に吸い込まれたといったほうがいいだろう。

 術者であったコートは、予想外の出来事に驚いているようだ。
 心なしか目を丸めているようにも見えなくもない。
 やがて表情を嬉々としたものに変え、

「思いっきり刺したはずなのに・・・やるじゃねえかよ」
「助けてもらったんだよ」

 彼らにね。
 はそう言うと、刀を前に突き出す。
 刃の根元にある4色の小さめのサモナイト石がキラリと光った。

―――約束も、果たしてないしな・・・」

 とりあえず。
 小さくつぶやきつつ刃をコートへ向けると、

「お前は・・・絶対に許さない」

 表情を険しいものに変え、刀を構えた。





    サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜


    第33話  新たな力





「うれしいぜェ・・・」

 双剣を構えつつ、笑みを深める。






・・・っ」

 背後から聞こえる声に、は振り返る。
 声の主は、傷口を抑えたまま目に涙をためていた。

「ユエル、大丈夫か?・・・ケガしてるじゃないか。待ってろ、今治してやるから」
「治すって・・・」

 刃の根元、サモナイト石のある部分に空いた手をかざす。

「・・・アヴァレス」

 叫ぶと同時に刀に埋め込まれた紫色のサモナイト石が光を帯びる。
 瞳の色が黒がかった赤から、青紫に変わる。

 次第に光は強まり、青白い光を放つ龍が具現した。

「・・・あ、あれは・・・」
「知らねえ・・・知らねえぞ、あんな召喚獣・・・」
『は〜いはいはい!いっくよ〜!』
「「しゃべったっ!?」」

 大きな身体の割に合わない声質と口調。
 ソウシとバルレルにとっては、驚きの連続だったのだろう。
 口をあんぐりと開けたまま目を丸くしていた。

 アヴァレスと呼ばれた青白い龍は光を放った。その光は、ひとつになってユエルへと注がれていく。

「あ・・・傷が、治ってる!?」

 斬られた腹部をさすりさすり。
 服に血液がこびりついているだけで、傷跡も残っていない。

『もーいいのかな?』
「ああ。さんきゅ」

 一言お礼を言うと、召喚獣は満足したかのようにうなずき、光の塊に収束して刀に吸い込まれていった。
 同時に青白かった瞳が元の赤い瞳に戻る。

「なんだったの、いまの?」

 瞳の色が、変わってたよ?
 心配そうに見つめるユエルに苦笑いを向けると、は頭を掻きつつ、

「瞳の色が変わるのか?・・・それは知らなかったな・・・ちなみに、今のはサプレスの召喚獣アヴァレス。この刀、ミカゼに宿る召喚獣だ」
「アヴァレス・・・」

 いまだにさすりさすりしているユエルを見てから、コートに向きなおる。
 改めて刀を構え、



「反撃、開始だっ!!」
「いいぜ、来いよ!」






















 一足飛びで距離を詰める。
 互いの刃が交わり、火花が散った。

「はあぁぁぁっ!!」

 交わった刃をはじき、さらに上から振り下ろす。
 振り下ろされた刀を双剣を片側の手で受け止め、もう片方で斬りつけようと剣を振るった。

 それをは、後方へ跳躍することでこれを回避した。
 着地と同時に地面を蹴り、開いた距離を詰める。
 下から上へ斬り上げるように刀を振るうと、双剣を交差させてこれを受け止めた。


「・・・最高だ。最高の気分だぜ!!」
「お前はそうでも、俺はお前を許さない・・・」

 無意識のうちに刀に力がこもる。

「人間や召喚獣を道具のように扱って・・・絶対に許さない!!」

 さらに力を込め、

「くっ!?」
「だあぁぁぁっ!!!」

 力任せに刀を振り切る。
 切っ先が、コートの眉間をかすめた。

「ちいっ!?」

 血が流れる眉間を抑えて、コートはをにらみつける。
 しかし、すぐに表情を嬉々としたものに変えた。

「久しぶりだ・・・自分の血を見るのは・・・」

 彼の身体から、黒いなにかが立ち上り始めた。
 頭上に熱を帯びたように、彼の周りがゆがんで見える。





「あれは・・・」
「魔力だ・・・スゲェ禍々しい力だぜ。しかもかなりでかい・・・」
・・・!」

 の背中を見つめ、名前をつぶやくがもちろん聞こえないわけで。
 表情を読み取ることはできない。
 3人は、ただただ見守ることしかできないのだった。







「負けてたまるか・・・」

 は、刀を天に向けて掲げた。














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