それは、ユエルがコートと戦っているころ。





「なーんか・・・前にもなかったか、こういう展開」


 気が付けば、そこは一面黒い世界。
 それにもかかわらず、自分の身体だけはしっかりと見える。

「あ、父さんと最後に会ったときだったかなぁ・・・」
『関係ねーよ、そんなの』
「うわあっ!?」

 突然かけられた声に、思わず飛び上がる。
 きょろきょろと見回すものの、姿はない。

『ここは、我らが創った世界だ』
『もちろん、キミと話をするためだけにね』
『私たちのことがわかりますか?』

 いきなりなんなんだろう。
 自分の前に姿を見せず、ただ声だけで話をはじめている彼らは。

 聞こえる限りでは4つ。
 ひとつめは、バルレルの口調とよく似た低い声。
 ふたつめは、堅苦しい口調でしゃべる芯の強そうな低い声。
 みっつめは、くだけた感じで話しやすそうな子供っぽい声。
 よっつめは、大人びた女性っぽい声色。

 自分に問い掛けているような感じではあったものの、なぜか4つの声の話に華が咲いたようで
 会話に割り込む隙がまったく見当たらない。

 待つこと数分―――


『あ、つい会話に華が咲いちゃった!』

 気づいてもらえてよかったです。

『さて、単刀直入に言うと俺たちは・・・』
『オマエの刀だよ』
『もう、そんなこといきなり言われたって、だってわかんないよ!・・・というわけで、とりあえずキミのことだ』
「俺?」
『まず、そなたは死んではならぬのだ』


「・・・はぁ?」



    
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第32話  彼を救う者たち



 死んではならない、という声に、子供っぽい声の主が声を荒げた。

『さっきも言ったけどさ、そんなこと言ったってわかるわけないでしょ!』

 まったく・・・

 聞いていれば、ボケである3つの声に突っ込んでいるようにも感じられた。

『まずは、自己紹介!!・・・ボクは、サプレスのアヴァレス』
『我はファブニール。ロレイラルの者だ』
『私はアマテラス。シルターンの者ですわ』
『俺ぁユグドラース。メイトルパの者だぜ!』

 彼らはどうやら四世界の召喚獣らしい。
 詳しくたずねれば・・・昔々にスゴイ召喚師に封印されたんだとか。
 えらく簡単に話すから、本当かどうか定かじゃないが。

「とりあえず、君たちは俺の使ってる刀・・・ミカゼ、だったか?それにに宿る召喚獣ってことで、いいんだな?」
『そうそう。神風と書いてミカゼと読む。伝説と言われた魔剣鍛冶師と呼ばれたカリバーン家のニンゲンが鍛えた至高の一品だよ』

 アヴァレスの声で、今までの奇怪な出来事が判明した。

 死にかけていた抜剣者を完全に治した時の龍と、レヴァティーンの攻撃を防いだ大きな鋼の物体。
 あれはアヴァレスとファブニールだったということ。

 それを話せば、

 『正解ーっ!!』

 などと言って『ぱちぱちぱち〜』と拍手を声で表現してるし・・・

『それで話ははじめに戻るのですが、あなたは、ここで死んでしまうつもりは・・・』
「そんなもんあるわけない。でも、俺が弱いばっかりに・・・」
『そんなオマエに朗報だぜ』
「・・・・へ?」
『我らが・・・力を貸そう』

 ファブニールいきなりの申し出に、は混乱。
 頭を抱えてうなり始めてしまった。

『はははっ、わりいわりい。いきなりで混乱しちまったんだな。まぁ、簡単に言えば俺たちがオマエを気に入ったってコトだな』
『ボクたちは、それぞれのサモナイト石の中からずっとキミをみてたんだ』
「ということは、島での戦いのことも・・・」
『知ってたよ』
『あの戦いと、今までのあなたを見て、あなたなら私たちを使いこなすことができると』

 それ以前に、あなたのことを気に入ってしまったので、有無を言わさずに私たちは力を貸します。
 付け加えて話をするのはアマテラスの声。

 ひとしきり考えた後、

「本当に力を貸してくれるんだな?」
『うむ、嘘ではない』
「それじゃあ、君たちの力を・・・俺に貸してくれ」
『よっしゃ契約成立だ。さあマスター?まずは何をしてほしい?』

「まずは・・・」






























「・・・っ!!」

 光に包まれ始めたの身体を、バルレルがゆする。




「つまらねえな。てめえらまとめて・・・死んできな」

 コートが双剣を振り上げる。
 両手の双剣は強い光を帯びて空のかなたへ消えていった。しかし、数秒の後建物にかぶさるように
 黒くにごった空が広がって、視界はあっという間に黒で覆われた。

 やがて黒い空が光を放ちつつ、無数の矢に変化していく。

 バルレルは、膨大な魔力を感じ取り表情をゆがめ、ソウシへと呼びかけようと声をあげる。

「ヤベェ、おい・・・っ!?」

 ソウシを視界に捕らえたはずが、颯爽と歩いていくの姿があったため、思わず言葉を止めた。

 ゆっくりと歩いていく彼はバルレルと距離を開けて立ち止まると、刀を地面に突き刺した。

















 同時に視界をさえぎったのは、コートのものとは違う、黒い光。












「さんきゅ、ファブニール」













 気が付けば、自分たちのいる空間全体を大きな影が覆っている。
 黒き無数の矢は、いっこうに降りかかる気配はない。

 バルレルが目を開けば、視界には先ほどまで死にかけていたニンゲンの姿が見える。






っ、テメエ、なんで復活してンだよ!?」






 彼は思わず、声を上げてしまった。









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