「・・・っ!?」


 眩いばかりの召喚の光。
 少しでも眩しさを和らげようと開いていた目を細めた。

 眩しいのは目の前の彼女も同じようで。

 と同じように目を細めていた。

「大規模な召喚合戦だこと」

 自分たちの根城が壊れるかもしれない事態であるにもかかわらず、彼女はを見て笑みを浮かべた。




 光が収まる。





 細めていた目を開くと、開けた視界に長い胴体を持つ灰色の龍を捉えたのだった。




    サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜


    第27話  混戦




「この建物、壊れるかもしれないぞ・・・?」
「問題ないない。だって、この建物は組織全体で作り上げたものだから」

 魔力ビンビンよ!
 そう言って、下げていた大剣を肩へ担ぐカリン。

「そして、万一壊されることがあるのなら・・・」
「あるのなら・・・?」

 彼女は担いでいた大剣を両手で握って、自らの身体の横へ。剣先を地面に向けた。
 は刀を両手で持ち右肩の上へ、刃を上に向けて彼女を見据えた。
























「ガアアァァァッ!!!」

 ヴィ〜〜〜ン・・・

 向こうにいる龍の雄叫びと、こちらにいる機竜の電子音。
 迫力的には向こうのほうが上だが、双方ともに機界、鬼界の上位に位置する召喚獣だ。
 その力は強大であるのは間違いない。

「・・・ここにいたら、マズイんじゃない?」
「うむ、ここは2体の召喚獣のちょうど真ん中のようだからな」

 双方がぶつかり合えば、この場がスゴイことに・・・
 召喚獣たちを倒し、刀を収めたソウシの言葉にユエルの顔色が変わる。

「・・・ねえっ、早く逃げないと!!」
「ここにいたら僕たち・・・みんなお陀仏だね、きっと」
「いりすヤめりる殿のトコロヘ向カウヨリモ、敵方ノ召喚師タチノイル方角ヘ向カッタ方ガ移動時間ハ少ナイヨウデス」
「よしっ、ここで一気に奴らを一網打尽にするのだ!」

 その場で音頭をとり、1人召喚師たちの集団に向かって駆け出すのはソウシ。
 いちもうだじんってなに?と聞きつつあとを追うのはユエルと、アメリカンのアッシュ。
 聞かれてもいないのに、意味を検索し始めつつあとを追うのがクルセルド。

 彼らがその場を離れてすぐに、召喚獣のぶつかり合いが始まった。



















「・・・もうなんでもいいや!」
「はぁ・・・もぉ、ついていけないです〜」

 そう言って、敵方の召喚獣を指差すのはイリス。
 向こうとこっちの召喚獣を見比べ、ため息をついたのはメリルだった。

「いっけー♪」

 目の前で蒸気を噴出す機竜にイリスがそう告げると、機竜は目を光らせて一歩ずつ進み始めた。


















 前へ出た機竜は、胴体の部分にエネルギーを集中させ始める。
 そこはパリパリと音をたてて発光していた。

 相対する龍もその大きな口を開く。
 開いた口から光が漏れ始め、赤みがかった光の球体が姿を見せた。














「壊されたなら・・・張り巡らされた罠が、発動するよ!」

 カリンはそう言うと、大剣の柄にあるなにかの引き金らしきものを引いた。
 ドンッ、という音がしたと思ったら、彼女はすでに目の前で剣を振りかぶっていた。

「・・・うえっ!?」

 慌てて左手を刀の峰へ移動させる。
 支えた刃で振り下ろされた大剣を受け止めた。

 鋼と鋼がぶつかり合い、甲高い音と火花が散る。

「くそぉっ!」

 重い攻撃に、足が地面に数ミリめり込んだ。
 彼女は大剣を振り切ろうと力をこめる。
 はとうとう支えきれずに刀を手放し、大剣の先が頬を掠めた。

「・・・っ!?」

 相手は大剣だ。重量が重い分、動きが遅いと・・・そう思っていた。
 大剣が地面と激突している間に、取り落とした刀を拾い上げ距離をとる。

 ツ・・・と頬から血液が一滴、流れ落ちた。
























「はああっ!!」

 大量の召喚師たちの中で、アッシュはナックルを装備した拳を振るう。
 すでに10人は倒したはずだが、まだまだ召喚師がいる。
 むしろ、囲まれている。

「・・・ちょっと、量が多すぎるよなぁ」

 召喚師たちを殴り飛ばしつつ、ひとりごちた。

「アッシュ、ぼやくな。なんとかなるさ」
「ソウシ殿。計算ノ結果、コノ状況ヲ打開デキル確率ハカナリ低メノヨウデスガ」
「・・・・・・」

 クルセルドの容赦ない声に、ソウシは苦笑いを見せたのだった。





「ソウシ、アッシュ。気をつけてね!」

 2人が振り向くと、その先には手を振っているメリルとぴょんぴょん跳ねるイリスの姿。
 それを横目で見つつ、アッシュもソウシも武器を振るった。






















「なんだったんだ・・・?」

 彼女の行動を思い返す。
 大剣を持っていた彼女は、ドンッ、という音のあと一瞬で自分までの距離をつめてきていた。
 とても、人間にできることではない。

 刀を構えつつ、疑問をめぐらせた。






「銃だよ!この剣には、銃が仕込まれてるの」
「銃・・・」

 ガシャン、と大剣を前へ移動させた。

「威力はそこそこあるんだけど、重いから直接打つことはできない。でも、こうすることなら・・・」


 ドンッ!!


「できるのよ!!」

 発砲の音。
 彼女は一瞬での目の前まで移動し、大剣を振りかぶった。

「っ!?」

 回避のために後ろへ跳躍。
 重力と大剣の重量で空振りした剣先が、地面にめり込んだ。

 は着地と同時に、地面を蹴り刀を振りかぶった。

「はああっ!!」
「・・・残念♪」

 ドンッ!!

 めり込んだ剣先が光る。
 地面の中で大剣に仕込まれた銃を発砲したのだ。
 その反動で彼女の身体が勢いよく浮き上がり、真上にいたの身体へ衝撃を与えた。

「ぐぁ・・・!?」

 彼女の銃を使った体当たりにより、は刀を振りかぶる前に背後へ吹き飛ぶ。

 背中から地面に着地し、肺への衝撃のため仰向けのまま咳き込んだ。

「げほっ・・・げほっ・・・」
「この程度?貴方の力は・・・」

 靴音をならし、彼女が近づく。
 は息を整えつつ、刀を杖代わりにして立ち上がった。

「大会でキミを見たときは、もっと骨があると思っていたのに」

 幻滅ね。
 彼女はに向けて嘲るような笑みを浮かべた。





























 向かい合った2体の召喚獣はエネルギーの充填を終え、ほぼ同時にそれを解き放った。
 双方のエネルギーがぶつかり合う。
 轟音がまわりにこだました。

「ひゃあっ!?」
「うああっ!?」

 機竜のすぐ近くにいた2人の少女は、あまりの大きさの爆音に耳をふさぐ。
 それでもまったく意味がないようで、2人は目をつぶって膝をつくのだった。







 2体の召喚獣のちょうど真ん中ほどで、淡く黒いエネルギーと赤みがかったエネルギーがぶつかり合う。

 2つの大きな力は、その場の地面を大きくえぐりとっていた。









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