「・・・いらっしゃい、くん。ユエルちゃん」


 数十人の召喚師たちに囲まれたたちに、彼女は微笑む。
 以前と変わらない服装と背中にはあの大剣。

 向けられた微笑みは、背筋に冷たいものを走らさせた。

「なんで、こんなところにいるんだよ・・・」
「決まってるじゃない」

 の声に、彼女の表情が真剣なものに変わる。
 理解したかのようにバルレルは目をまるめているが、誰も彼に問い掛けない。

 彼女は、軽々と独特の形をした大剣を背中から抜き、両手で持つ。
 銀色の刃が、たち向けられた。

「アタシは、この組織・・・漆黒の派閥の幹部、カリン。他の何者でもないわ」
「「!?」」

 彼女がここにいる時点でわかってはいたのだが、信じたくなかった。

 自分たちが迷っているときに、笑って先導してくれた彼女を。



    サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜


    第26話  立ちはだかるものたち



 カリンの言葉に、とユエルは言葉を失った。

、ユエル!なにやってる。来るぞ!!」

 ソウシの怒号が飛ぶ。我に返ったとユエルは、慌てて己が武器を構えた。
 召喚の光が、たちと彼らを照らす。
 その眩しさに目をつぶり、再び開く。
 すると、目の前は敵である召喚師と召喚獣であふれ返っていた。

「ねえ、コレちょっとマズいんじゃない?」
「相手が人間じゃないうえに、この人数差は・・・」
「そんなこと今更言っても、遅いですよぉ・・・」

 イリス、アッシュ、メリルの順に弱気な声が聞こえる。

「ウオオォォォォッ!!!」
「グルアアァァァッ!!!」

「・・・イリスとメリルを囲むんだ。2人は、召喚術を」

 召喚獣たちから雄たけびが聞こえる中でから放たれた言葉に、2人は慌ててうなずき、移動する。そしてそのまわりを残り全員で囲むように武器を構えた。

「後ろの召喚師に注意するのだぞ。クルセルド、召喚術を察知したら・・・頼むぞ」
「了解シマシタ」

 召喚師たちとの距離は、多少なり離れている。剣や刀を武器としている者では間に合わない。ソウシはそれを見越してクルセルドに声をかけたのだ。
 唯一、銃を使える存在の彼に。

「グオオオオォォォッ!!!」

 轟音とともに、召喚獣たちが襲い掛かってくる。
 は振り下ろされる武器を刀で受け止めて相手に拳を叩き込む。
 しかし、次々とひっきりなしに召喚獣たちが目の前に立ちふさがった。






 イリスとメリルは召喚術の詠唱に入った。イリス曰く、
 おっきいの使って一気にやっちゃうから、しばらく我慢してね!
 とのこと。

 メリルは、傷ついた仲間たちに治療を施していた。

「・・・っ!!」
「ギャアッ!?」

 飛び掛ってくる幽霊のような召喚獣をアッシュは思い切り殴り飛ばす。
 召喚獣は、「ぷーっ!!」と叫びながらサッカボールよろしく、遠くへ飛んでいった。






「なんか、ぜんぜん向こうの数、減ってない気がするんだけど・・・っ!!」
「彼奴ら、戦える召喚獣ばかり無差別に誓約しまくっているのだ!」
「対応ガ間ニ合イマセン!!」

 両手に銃を構えたクルセルドから声があがる。
 彼らは戦える召喚獣のみを召喚しているため、かなりの数を召喚しているようだ。

 魔力がなくならない限り、無限に敵が増えていく。

 ただ思いついたその言葉に、ソウシは表情をゆがめた。





 がメイトルパの召喚獣から攻撃を受け、腹部から血を流しながらもなんとか召喚獣を撃退し、ひざをつく。

さんっ!・・・お願いします・・・」

 メリルの持つ紫色のサモナイト石が光を帯び、サプレスの天使が姿をあらわす。
 手を虚空に振り上げ、光を発した。その光は彼女を中心に降りかかり、傷が癒えたは刀を杖代わりに、ゆっくり立ち上がった。

「助かった!」

 は彼女にそれだけ声をかけると腰を落とし、刀を薙いだ。
 召喚獣たちが数体、自分の背後へ倒れこむ。スキができたを守るように、好機とばかりに彼に襲い掛かる召喚獣をユエルが殴り倒した。














「・・・誓約のもと、我が呼び・・・っ!?」

 詠唱が、途中で止まった。彼女のまわりでは、仲間たちが必死に戦っている。

「・・・・・・」
「・・・イリスさん?」

 詠唱をしているはずのイリスの声が聞こえず、メリルは彼女に声をかけた。

 武器の音が木霊する中で・・・彼女は気まずそうに笑った。
























「・・・まちがえちゃった☆」























 しっぱいしっぱい〜・・・
 頭を掻いて、ぺろっと舌を出した。

「だ、ダメじゃないですかぁ!」
「ふやぁっ!?」

 いきなりまくし立てるメリルに、イリスは思わず驚きの声を上げた。




















「なんだ?」

 召喚獣をなぎ倒し、頭上を見上げる。そこに見えるは、1つの白い光。
 その光は徐々に強さを増し、その空間を覆い尽くそうとしていた。

「・・・ユエル、アッシュ、ソウシ、クルセルド!」

 その声に、召喚獣の相手をしている彼らがの方へ視線を向ける。
 はなにも言わずに頭上を指差し、

「伏せろっ!!」

 ただ、それだけを叫んだ。

「「「「!?」」」」























「だって、しょうがないでしょ!?」
「しょうがないじゃないですよう・・・っ!?・・・イリスさん!」
「うひゃあっ!?」

 光の存在に気づき、メリルはイリスを押し倒して地面に伏せる。

















 光が覆い尽くし、1体の召喚獣が具現した。
























「な、なによぅ・・・」
「だいじょうぶですか?」

 頭上から、聞きなれない音が聞こえる。
 モーターが回る音。
 蒸気を噴出す音。
 ガションという地面を打ち付ける音。

 目の前に、大きな鉄の塊。

「・・・ボク、こんなの誓約した覚え・・・ないよ」
「え・・・」

 イリスの小さな声が、隣のメリルにかすかに届いた。






















「・・・助かった?」
「そのようだな」
「まったく、なにがなんだか・・・」
「膨大ナ魔力ヲ感知」

 に叫ばれ伏せた4人は、光から現れた機竜の名を持つ召喚獣を見ていた。
 それはとても大きくて、近くにいるはずのイリスとメリルがとても小さく見えた。








「ガアァァッ!!」
「・・・っ!?」

 は、伏せたところを召喚獣に襲われ、刀で攻撃を受け止めていた。
 目の前にいるメイトルパの召喚獣は腕力が強く、刀を支える手も力が入らなくなってきている。

「このおぉぉぉっ!!」
「グガァッ!?」

 歯を食いしばり、のしかかっている召喚獣を蹴り飛ばす。
 空中で身動きの取れない召喚獣に向けて、力をこめて刀を振るった。
 腹部に斬り傷を付けて、召喚獣は回転しつつさらに上へ飛び、背中から地面に着地したのだった。

















くん」
「カリン・・・っ!?」

 剣を交える音。攻撃を加えた女性を見て、は表情を歪めて舌打ちをした。

「闘技大会の2回戦、ここでやっちゃいましょう?」
「っ!?」

 彼女は、そう言って・・・笑う。








 妖艶な笑みを浮かべる彼女の背後で、召喚師たちが詠唱を終え、イリスのときと同じ強い光が放たれた。


















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