ざ、と地面を踏みしめる音。

 たちは漆黒の派閥の本拠地である建物の入り口にたどり着いた。
 『漆黒』というだけあって、建物の表面は黒い。最初に見たときに、どこが入り口なのかわからなかったくらいだ。

「昨日も言ったが、こん中は迷路になってる。迷ったら最後だからな」

 一歩前にでたバルレルが念を押す。
 全員同時に、ゆっくりとうなずいた。

「わかってるよ、バルレル。僕たちはそれを承知でここまで来たんだし、ね」
「俺とユエルは恥ずかしながら方向音痴だ。でも、いざとなったら壁をぶち抜いていくから大丈夫」
「自慢になってないではないか、それは・・・」
「でも、ならやっちゃうよ、きっと」

 の発言にソウシがうなだれ、ユエルが確信めいたように自分の主人を指差す。

 その場で、どっと笑い声が上がった。

「ナルベク1ツノ場所ニ固マッテ行クノガ得策デショウ」
「はぐれないようにしないとね」

 イリスはそう言ってとユエルを見つめる。
 とユエルは、苦笑いをして頭を掻いた。


「それじゃあ・・・突入だ!!」




     サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜


     第25話  たいして広くないくせに





 中に入ってから、数分。
 延々と続く一本道をただひたすら走っていた。

「な、長くない!?」

 もっともなユエルのみなに向けた問い。

「たしかに、もうすいぶんと走った気がするのだが・・・」
「ボクぼうへとへとだよ〜・・・」
「しかも入り組んでないし」

 アッシュのつぶやきが耳に入ったのか、バルレルが彼にくってかかっている。
 そんな彼ををなだめつつ、一度目の作戦会議を行うことにした。

「結局、どうなってるんだ?これ」

 が発した言葉に、全員が視線を落とした。
 原因がなんなのか、まったくわからないようだ。もちろん、も同じである。でも、ここを突破して、先へ進まねばならない。

「なにか、魔力的なものなのではないか?」
「魔力的?・・・それって一体・・・?」
「魔力で作り出した罠なのではないか、ということだ。メリルよ」

 説明されたメリルは、理解したのか手をぽんと叩いた。

「そういった類の罠や仕掛けはこの世界にはあるのか?」
「うーん・・・できないことはないと思うけど・・・」
「前例ガナイノデ実際ノトコロハヨクワカラナイ」

 ふむ、とソウシは手を口元へ。
 数秒の後いつも持っているのだろうか、懐から紙と鉛筆を取り出してなにやら書き始めた。



「よし」



 満足そうな一言。
 なにかを書き入れた紙をにんまりと笑って見つめ、メンバーの前に広げる。

「・・・・・・」

 そこに描かれたているのは、奥行きのある筒のような絵で、ところどころに日本語で文字が書かれている。

「これなあに?」
「この一本道の図だが」

 ユエルの問いにあっさりと答えたソウシは、一本道と思われる絵のはじを指差した。

「この道のどこかに、もしかしたらこのようなつなぎ目があるかもしれない。前に本で見たことがある」

 絵を横に切るように指を動かして、彼は説明を行った。
 なんでも、魔力で空間そのものをつないでいるらしい。この一本道をつないであるから、延々と走らされてていたということだとか。

「ああ、知ってる!前に本で読んだこと、あるよ!」

 はい!と手を上げて、イリスが声を上げる。

「私が見た本には、これの対処法は記載されていなかったのだ。お前は知ってるか?」
「こんなこと初めてだからなぁ、関係ないと思ってしっかり読んでなかったんだよぉ」

 イリスは目に見えてしょげており、「しっかり見とけばよかった」と頭を抱え始ている。とりあえず、そのつなぎ目をみつけようという結論に行き着きゆっくりと歩き始めた。

「まるで砂漠から米を探すみたいな・・・」
「面倒くせぇ」
「仕方ないよ。それしか方法がないんだから」

 は歩きながら自分を注意するユエルを見つつ、ため息をついた。
 隣でバルレルがかったるそうにしている。に注意をしたユエルは、矛先をバルレルに変えて、彼に向かって説教を始めた。
















「あ。みんな、あれ見て」

 は壁に埋まっている小さく淡く光る部分を指差す。
 みんなして慌てて近づき、イリスがそれを観察している。

 しばらくの後、これが空間のつなぎ目の一部分であることがわかった。

「つなぎ目は空間をちょうど縦に割った感じでつながってるみたいなの。だから、ここを始めにして、こう、縦にびーっと」

 そう言って彼女は光の部分から指を天井に動かし、向かいの壁から床を通って、もとの場所へ戻す。その場にいる全員が、その指先へ視線を向けていた。

「切れ目を入れればいいのか、イリス?」

 彼女がうなずくのを確認すると、は刀を抜いた。
 離れているように、と伝えて、刀を鞘の横へ移動させる。

 右手、右足を前にして、腰をかがめる。

「・・・っ!!」

 右腰の刀をおもいきり振りぬく。居合を放ったのだ。
 ギギ・・・という音があたりに響く。すぐに、地鳴りが起きはじめた。

「やるではないか、!居合までやってのけるとは!」
「そんなこと言ってる場合!?」

 地面に手をついて地鳴りが収まるのを待つが、一向に収まる気配がない。
 むしろ、強くなってはいないだろうか。

「なんだか、ヘンな感じしない?」

 言葉を放ったのは地面に座り込んだアッシュ。
 それを聞いてから、自分が妙な感覚に襲われていることがわかった。
 その感覚は、時間が経つにつれて徐々に明確に感じられるようになっている。

「・・・大質量ノ魔力ヲ感知」
「みなさん、サプレスの召喚術です!ここから離れてくださ〜い!!」
「くそっ、次から次へと!」

 そう1人ごちながら、まだ収めていなかった刀を鞘に戻してその場を離れる。
 その瞬間、バチィッ、という音がしたかと思えば、目の前を稲妻が走った。
 稲妻は、床にぶつかると同時に爆発。爆風がその場を吹き荒れた。

「うわぁっ!?」
っ!」

 爆風に吹き飛ばされた俺は、背中から地面に着地。
 そのままさらに数メートル後ろへ飛ばされた。

「・・・危なかったぁ」
、大丈夫っ!?」

 駆け寄ってくるユエルにうなずくと、召喚術の炸裂した場所を凝視した。
 最初は煙が多くで見えなかったが、徐々に晴れていく。

 完全に煙が晴れるとそこには、えぐれた床と砕けた天井の部分が落ちていた。

「オラッ、早く行くぜ!ここにいつまでもいたらなにされるかわかったモンじゃねェしな!」
「ったく、せっかちなやつだ」
「・・・まあまあ」

 文句を言うソウシをアッシュがなだめている。
 それを横目に見つつ、1人先を進むバルレルを追うために、は立ち上がった。



















「広い部屋に出たね」
「なんだか、ここまで来るのにつかれたよ〜」

 長かった通路を抜けると、そこはかなりの広さを誇る部屋にたどり着いた。
 天井が吹き抜けになっていて、壁には窓の1つもない。
 そして、入り口以外に先へ進むための出口すら見当たらなかった。


「なんだよ、ここ?」
「なにがあるかわからんからな。警戒を怠るな」
「ケッ!!」

 ソウシの指示で全員れぞれの武器に手をかける。バルレルも舌打ちなどをしているものの、やはり自前の槍を手に持っている。
 俺たちは固まって部屋の中心へ向かって移動を始めた。

「自分タチノマワリニ、大量ノ生命反応ヲ感知!!」

 中心あたりでクルセルドの声が木霊した。すると、彼らを取り囲むように大量の人間たちが、音もなく現れた。

「これは・・・」
「囲まれちゃいましたよ!」


 近くで、メリルの慌てた声が聞こえる。



 どういう仕組みで出てきたのかとか、この量の召喚師を相手にどうやって戦おうかとか、そういうことは今はどうでも良かった。
 ただ、目の前にいる人物の出現に戸惑っていた。
















「カリン・・・」


















「・・・いらっしゃい、くん。ユエルちゃん」















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