「これが、対戦表か・・・」
「20人もいるだけあって、けっこう時間かかりそうだなぁ・・・」


 目の前に掲げられている大きな紙を見つめ、ふう、と息を吐いた。
 紙の下のほうに出場者の名前がずらりとたちならび、上に向かって線が引っ張ってある。
 その線は、上に行けば行くほどその数が少なくなり、最終的には1本しか残っていない。
 いわゆる『トーナメント』というやつだ。

 ちなみに、成り行きで集まっていた俺たちは全員、初戦はバラバラな位置から始まっている。
 よって、知り合いに初めて当たるのは2回戦以降と言うことになる。
 それを見て内心、ほっとしている自分がいた。
 しょっぱなから潰し合いじゃ気分悪いからだった。

「お、第2試合がアッシュの出番だな」
「ソノヨウデスネ」

 相手方の名前を見ても、そのような人なのかわからないが、そのとなりに彼の名前が書かれてあった。
 彼自身もそれを見て、

 「あ、ホントだ」

 などと声をもらしていた。


     サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

     第12話  彼の秘密


 組み合わせどおりに事が進めば、アッシュを筆頭にとユエル。そのあとにソウシ。
 そしてイリスとクルセルドが1回戦の最終組。

 あとの人に関しては、名前だけ見てもわからない。
 どんな人なのかは、試合の直前に確かめることになりそうだ。

「じゃあ、僕は控え室に行ってるから」
「へ?もう行っちゃうの?」

 ユエルが名残惜しそうにアッシュを見つめている。
 彼は、ユエルの問いにゆっくりとうなずいた。

 そのまま、返事を待たずにいそいそと闘技場の中へ消えていった。

「なんだかずいぶん急いでたけど・・・」

 何かあったのかな?
 アッシュの消えた方向を見つめながらイリスは首をかしげている。

「なにか、考えでもあるのではないか?」

 親しくしていても、所詮我らは立場上敵同士なのだし。
 あごに手を当ててソウシがつぶやく。
 確かに、そうなのかもしれないが予選の時はなにも持ってなかったはずだし。
 しいて挙げるなら、手を守るための頑丈そうな手袋ぐらいだ。
 そんなに準備に手間取るものなのだろうか・・・?

「メリルは、なにか知らない?」
「いえ、私はこれといってなにも・・・」

 たずねるユエルに、メリルはごめんなさいと一言。
 そして、乾いた笑みを浮かべていた。














「うう・・・」

 一方。
 こちらは選手控え室。
 僕ことアッシュは・・・




 この上なくアガっています(緊張のため敬語)。




 こういった公の場というのは正直苦手です。
 っていうか、極度のアガリ性なんですね、僕は。

 先ほど試合会場を目にしてみれば、客席が観客であろう人たちで埋まっていました。
 少人数の人に見られているのならまだしも、街じゅうの人が僕を見ていると思うと、今すぐにでもこの場から逃げたい気分になるんです。

 さっき、が自分の護衛獣であるユエルに緊張をほぐす方法を教えていたのを小耳にはさんだので、実践してみたわけですが、あまり効果はありませんでした。

「まいったなぁ・・・こんなんで、ちゃんと戦えるんだろうか・・・」
「どうした、青年。ずいぶんと緊張しているようだね」

 そうたずねてきたのは、対戦相手であるロッシさん。
 彼は槍の使い手で、聖王都の方から来たのだそうです。
 トライドラとかいう国で一番の槍の使い手だと豪語していたのは記憶に新しい。

「う、うえぇ!?べっ、べべべ別に、そんなんじゃなかですよ!」

 うわ。言葉遣いまでおかしくなってる・・・

「・・・お前さんは嘘がヘタだな」

 彼はそう言って意味ありげな視線を向けてきて、僕はとにかく笑うしかありませんでした。

「まっ、俺を失望させないでくれよな。仮にも、予選を突破してきたんだからな」
「うぐっ・・・」

 はっはっはっは、と笑って、彼は控え室から出て行ってしまいました。
 どうやらもう試合の時間のようです。
 おぼつかない足どりのまま、僕は会場に向かうのでした。













 会場に入ると、たくさんの人の叫び声が混じりあい、僕を刺激します。
 一瞬、足がすくんでしまいましたが、僕は会場の方へと歩いていきました・・・
















「お、アッシュが出てきたぞ」
「あ!ホントだ!・・・お〜い!!」

 ソウシの声に、ユエルが手を振っている。
 アッシュはゆっくりとした歩調でこちらを見て手を振っている。
 なんだか、雰囲気がいつもと違う気がしてならなかった。

「ねぇ・・・なんだかアッシュお兄ちゃんの様子、おかしくない?」
「そうですね・・・」

 と同じ事に気づいたのか、イリスがメリルに問い掛けている。
 メリルは、

 「いままで、こういったイベントに参加したことがないので・・・よくわからないです」

ということらしい。


「心臓ノ鼓動ガ、イツモノソレヨリモ激シクナッテイマス。オソラク・・・」
「・・・あぁ、なるほど」


 ぽん、と手をたたく。
 どうやら、ここにいる機械兵士は他人を調べるのが好きらしい。
 彼の言った言葉は、こんな言葉だった―――






「彼ハ、極度ノ緊張状態ニアルヨウデス」








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