「それで―――

 の声に、首をこちらに向けた。

「結局、本戦に進めるのはどれくらいなんだ?」

 彼の問いに、まわりの全員が首をかしげる。

「う〜ん・・・ボクは知らないよ・・・」
「自分モ、コノ街ハ初メテデスノデ・・・」
「たしか、各組の上位2名が本戦にいけるはずだけど・・・」
「それじゃあ、みなさん本戦には行けるみたいですね?」

 というわけで。
 口々にみなが意見を述べ、ここにいるメリルを除く全員が本戦に行けることが判明した。
 というか、運よくアッシュが知っていただけだけど。

 予選は、まだまだ続いている。
 だいぶ人数は減ってきているものの、それでも本戦に残っている人は多いのだろう。

「まあ、ここにいる者たちの腕は保証済みだ。おそらく上位は我らで独占になるだろうな」
「そ、それはさすがに大げさでは・・・」

 満足そうにニヤけるソウシを見て、は思わず苦笑いしていた。


    サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第09話  悪寒


 
とりあえずその場を後にして腹ごしらえと決め込み、街に一件しかない食堂に向かっていた。














「お〜にいちゃ〜ん♪」
「むぅ・・・」

 彼の両隣には、腕にべったりくっつくイリスと、逆側に少し耳を逆立たせたユエル。
 なにやらユエルの機嫌は良くないようだ。

「あ、愛されてるね・・・・・・」
「はは、ははは・・・」

 アッシュのつぶやきに、俺は乾いた笑みを浮かべた。

「もしかしたら、は子供に好かれやすい体質なのかもしれぬな」
「じょ、冗談はよしてくださいよ・・・」

 はっはっは、と声をあげて笑うソウシをジト目で見つめる。

「は・・・」

 の視線を認めて、ソウシは顔を引きつらせた。













 食堂にたどりついて、いざ!店の中に入ろうと意気込んで扉を開けた瞬間。

 ドォン、という大きな轟音が街を包んだ。

「!?・・・なんだ!?」
「ゆれる、ゆれる〜!?!?」

 ユエルの言葉どおり。
 轟音と同時期に、地面がゆれる。
 おそらく、原因は轟音の正体と同じだろう。

「今の音は、どちらの方角からだ!?」
「闘技場のほうだと思います!」

 互いに声を掛け合い、固まって闘技場を目指して駆け出した。

 そびえたつ壁を見ると、黒に近い灰色の煙が空に昇っている。
 街の住人たちはみな自分の家に閉じこもって、事が収まるのを待っているようだ。
 そのせいか、商店街には人っ子1人見当たらなかった。






 予選会場にたどり着くと、すでに会場内は廃墟と化していた。
 さらに、彼らの目に入ったものは・・・


 腰を抜かしている係員と、腰まである青い髪の女性。
 そして、その女性のまわりを取り囲む数人の男女。
 出場者であった戦士たちは、みな地面に突っ伏していた。


 つかつかとかかとの高い靴を崩れた地面に打ち鳴らしながら、女性は未だ腰を抜かしている係員に、

「私の勝ちということで・・・よろしいですね?」

と告げる。

多少震えながらも彼がうなずたことを確認すると、女性は妖艶に微笑んだ。

 ゆっくり立ち上がると、そのまま自分たちの方へと歩を進めてくる。
 彼女たちは、その前で立ち止まって笑みを見せた。

「あら、貴方がたも大会の出場者ですわね?はじめまして、私―――

 彼女はそこまで言葉を発すると、礼儀正しく頭を下げた。

「フォルネシア・ヒルベルト、と申します」

 名前を名乗り、頭を上げた。

 その瞬間。背筋を何かが通るような感覚と、寒気がを襲った。
 冷や汗が、顔を伝う。

・・・あのヒト・・・」

 ちいさな、ちいさな声。
 にしか聞こえないような声で、ユエルが身体を震わせている。
 彼女と同じように震える身体にムチ打って、ゆっくりと彼女の肩に手を乗せた。

 以前、同じような感覚を体験したことがある。
 無色の派閥が、初めて島を訪れた直後に感じたものとほぼ同等かそれ以上のもの。

「あの・・・顔色が良くないようですが、大丈夫ですか?」
「・・・!?」

 フォルネシア、と名乗った女性は心配そうな視線をに向けている。
 は、ゆっくりと首を横に振った。
 彼女はが答えるのを見届けると、挨拶をして去っていった。
 彼女が視界からいなくなると同時に、悪寒は消える。

 やはり、今の悪寒の正体は彼女のものなのだろうか。
 は、自分の手を見てため息を吐いた。



















「気づいていましたね」
「そうね、顔色を悪くしていた彼と、その護衛獣。それと・・・」

 先ほどの顔を見て笑みをこぼす。
 部下である3人は軽く笑っている私を見て疑問符を浮かべていた。

「フォルネシアさま。いかがなされましたか?」
「ふふふ・・・いえ、なんでもないわ。行きましょう」

 宿屋の主人に、寝るから騒がないようにと告げて、私たちはおのおのの部屋へ向かった。
 バタン、という扉の閉じる音を確認して、1人になったところでさらに深く微笑む。

「ふふふ・・・これから、楽しみですわ・・・」

 部屋の中を、笑い声がかすかに響いていた。













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