扉を開けて、外に出た。
 中の人々は、いまだ気絶しているか戦意を喪失していて動く気配はない。
 ちなみに、アッシュは俺の後ろをなんとかついてきていた。

「しかし、容赦ないなあ・・・いてて」
「仕方ないだろ」

 腹部を抑え、苦笑い。
 実際、俺もかなり疲れていたため、はたから見ればげんなりしていることだろう。
 そして、そんなに待っていたのは・・・

「おにぃちゃんッ!!」
「ぐえぇっ!?」
「!?」

 彼の登場を待っていたかのように突っ込んでくる金髪の少女。
 なんだかうれしそうな表情をしている。
 後ろのアッシュは、それを見て目をまるめていることだろう。

「イリス・・・俺を、どうしたいんだ・・・?」
「あーっ!?〜!!」

 力なく崩れ落ちる。
 それを見てユエルが叫びまくっているが、耳には入ってこない。
 一瞬、意識を手放していた。



     
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

     第07話  俺と彼の状況説明


「え〜っと・・・今の結果は、こちらの方の勝利ということでいいですか?」
「ええ、そうです」

 を指差す係の人と、アッシュの声が聞こえる。
 今の予選の確認をしているのだろう。

「ったく・・・危うく落ちるトコだった・・・」
「ゴメンね・・・」

 両手の指先をつんつんとつき合わせながら、加害者であるイリスは謝罪の言葉を述べる。
 いつまでも座っているわけにはいかないので、「よっこらしょ」と掛け声をかけて立ち上がった。

「やはり、私の目に狂いはなかったようだ」
「ソウデスネ」

 ぽん、と肩に手を乗せてソウシは笑った。

 「彼は強かったです」

 そう言って、こちらに来るアッシュを指差すと、ソウシはほう、と手をあごに当てた。
 クルセルドは、どうやら彼を調べているようだ。ウィ〜ン、と音がする。
 意外と抜け目ないな、この機械兵士は・・・


「彼の連れの人ですか?」
「ああ、そうだが・・・」

 ソウシの答えに気を良くしたのか、アッシュは笑みを浮かべた。

「僕、さっき彼と戦っていました。アッシュと言います」
「私は沖田 総司だ」
「くるせるど、デス」
「イリス。イリス・アルフェルトです」

 名前だけの自己紹介をする。
 ソウシは彼をじろじろと見回す。品定めでもしているのだろうか。

「とても、をてこずらせるほどには見えないのだがな・・・」
「ソウデスネ。すきゃんノ結果カラモ明白デス」

 そういいきる彼らに、アッシュは一歩たじろいでいた。

 そのとき。

 ててて・・・と地面を駆ける音。
 そして、彼を呼ぶ声が聞こえた。

「アッシュさ〜ん!」
「・・・あ。こっちだよ、こっち」

 彼が手を振ると、笑みを浮かべてこちらに向かってきた。
 どうやら彼の連れらしい。

「さっきには言ったと思うけど、僕の相棒のメリルです」
「こ、こんにちは・・・」

 走ってきたせいだろう。息を切らしながら名前を名乗った。
 杖を持っているところを見ると、召喚師なのだろう。

「アッシュさん、予選終わったなら終わったって言ってくれないと・・・」

 濃い茶色の髪に、同色の瞳。
 召喚師らしい、それでいて薄めので緑色のローブ。
 召喚師の中では、比較的動きやすそうな格好をしている。
 背格好から、14,5歳といったところだろう。

 とユエルも自己紹介を済まし、予選会場を見る。
 まだ予選を行っていないソウシは、今か今かと待ちわびているようだ。






「あの・・・さん、で良かったですか?」
「ん?」

 待ち時間。
 俺は、初対面のメリルに話し掛けられ、彼女に向き直った。

「失礼ですけど、もしかして貴方は・・・召喚されてきましたか?」
「・・・そうだけど・・・?」

 怪訝な視線を向けると、彼女は首と両手をぶんぶんと横に振る。

「ああっ、すいません!他意はないんです。ただ、アッシュさんと同じ雰囲気でしたので・・・その、私・・・彼を元の世界に戻してあげたいんです」

 なるほど、と言わんばかりに手を叩く。
 視線をやわらかいそれに変えた。

「そういえばそうだったね。うん、彼とは同じ世界の住人みたいだ。そして、俺も帰るための方法を探してる」
「そうだったの!?」

 隣のユエルが素っ頓狂な声をあげる。
 まわりの皆さんが、3人を見ていた。




『・・・オキタ ソウシさ〜ん!!』
「おお!来よった来よった。では、いってくるぞ」
「いってらっしゃ〜い!」

 ソウシは、イリスに見送られて予選に向かった。
 間もなく予選が始まり、金属のぶつかり合う音が聞こえ始めた。

「それで・・・」

 メリルが話を戻そうと、を見る。
 とりあえず、ということでアッシュを呼んだ。

「俺とアッシュは、どうやら同じ世界の住人だ。でも、その世界には国が多い。このリィンバウムみたいに、3つや4つじゃないんだ」
「・・・え?リィンバウムって、それしか国がないのかい!?」

 知らなかった・・・とアッシュは肩を落とした。

 それを尻目に、は話を続ける。
 メリルは、目を輝かせてその話に耳を傾けていた。









「・・・こんな感じかな」
「すごいですね〜」

 一通り話して聞かせると、彼女はよりいっそう目を輝かせて身を乗り出した。

「それで、国の話だけど・・・俺と彼は違う国の人間だ」
「そうなんですか?」

 うなずき、げんなりしているアッシュを見る。

「だから、彼のことを聞かれても俺にわかることは少ない」

 力になれなくてゴメンな?
 苦笑いをしながらそう告げると、彼女は礼を言って頭を下げた。


「そういえば、アッシュ」
「なんだい?」

 がんばって立ち直ったアッシュに声をかける。

「君は、いつからこっちに?」

 ちなみに俺は今年で1年だが・・・
 はそう付け加えて彼に尋ねると、

「う〜ん・・・たぶん、10年くらいはこっちにいると思うけど・・・」
「「10年っ!?」」

 あんまり時間の感覚がなくてよくわからないけど。
 彼はそう答えて苦笑いをした。

 10年といえば、義務教育が終わるくらいとほぼ同等。
 細かく言えば、それよりも長い。
 だから彼はあんなに強かったのか、とここで理解していた。
 ちなみに今の年齢を聞くと、

 「えー・・・最低でも18よりは上だと思うけど・・・」

 などとずいぶんあいまいに答えてくれた。


「そういえば、沖田さんて・・・どこかで聞いたことがあるんだけど・・・」

 ほら、映画とかで。
 人差し指を出して、言葉を放つ。
 は、彼の肩をつかんで、


「アッシュ。彼は、多分その本人だ。でも・・・きっと言っても信じてくれないだろうから言わないほうがいいと思うんだ」


 彼の耳元で自分の意見を彼に提示する。
 ソウシのことが少なからずわかる彼は、ゆっくりとうなずいた。
 そばにいるユエルとイリスは、口々に、

 「えいがって何ー!?」

と俺たちを見て声をあげていた。



「今、戻ったぞ」
「あ、ソウシ〜!おかえり!」

 ユエルがの隣でぶんぶんと手を振った。

「ドウデシタカ?」

 そうたずねるクルセルドを見て、首をコキコキと鳴らし、

「楽勝」

 と一言。
 アッシュとメリル以外は彼の強さを知っているから、それだけでどのような感じだったのか、すぐに理解できた。


「お強いんですね〜!」
「ま、まあな・・・」

 言いよるメリルに、彼は後ずさりをしていた。
 あのぐらいの年の子が苦手なのだろうか、顔が心なしか引きつっているような感じがした。










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