わらわらと出場者が入ってくる。
もちろん、とユエルもその中の1人だ。
隣を歩くユエルは、なぜかピョンピョン飛び跳ねている。
機嫌よさそうだ。
「なんだか、うれしそうだな・・・」
「なんだか、よくわかんないけどね!」
刀を腰に、腕組みをしてまわりを見回す。
杖を携えて護衛獣を連れた召喚師の姿が2,3人。
小ぶりの剣を腰につけている細身の男性。
普通の剣を持っている人々が数人。
女の人も何人か混じっていた。
「ずいぶんと人が多い気がするけど・・・」
「イリスたちもこんなだったのかなぁ・・・」
その中で1人、俺と同じくらいと背格好で武器をなにも持っていない青年が目についた。
まわりの人とは雰囲気が微妙に違う。そんな感じがした。
ふと彼と目が合う。
ふっ、と笑顔を見せた。
サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜
第06話 闘技大会・予選 2
「よしっ、じゃあいこうか。ユエル」
「うんっ!ユエル、がんばるよ〜っ!!」
腕をぐるぐる回して、やる気まんまん。
まわりのみなさんが、と先ほど目が合った青年を見て、ニヤついている。
「なんだか、ユエルたち・・・見られてない?」
「うん。俺たちと、あそこの彼」
そう言って、彼を指差す。
ユエルはその先を見て、へぇ〜、とうなずいていた。
そのとき。
カーン、と甲高い音がなる。始まりの合図のようだ。
その瞬間、まわりの戦士たちはいっせいに2人と彼に向かって飛び掛ってきた。
「みんなこっち来たね・・・」
「俺たちが弱そうに見えるんだよ、きっと・・・さあ、はじめようか!」
2人は武器を構える。
自分の間合いで刀を思い切り横に薙ぐ。
ユエルは、振られる剣を避けて爪を振るった。
とユエルに飛び掛ってきた人たちは、最初から脆かったかのように簡単に剣が根元から折れたり、吹っ飛んで地面に伏していく。
こんなはずではなかったのに、と言わんばかりの顔で俺たちを見ていた。
奥で、召喚師がサモナイト石に魔力を注ぎ、すでに光を帯びている。
「やった!ユエルたち、勝てそうだよ!」
「おい、ユエル!下がるんだ、召喚術が来る!」
「・・・!?」
慌てて飛びのくユエル。
召喚術が発動し、ユエルのいた場所にクレーターを作った。
一足飛びで召喚師との距離を詰め、刀を振るう。
サモナイト石を手放し、召喚師は気絶。
いっしょにいたシルターンのだろう護衛獣は、ユエルに組み付かれて見動きが取れなかったようだ。
「よしっ!」
グッ、と拳を握った。
剣士の1人が、よろよろしながら立ち上がるが、武器は壊れ、すでにない。
ひざをついて震えていた。
「君たち、強いね」
「・・・?」
とユエルに声をかけたのは、先ほど目が合った青年。
彼のまわりには、数人の出場者たちが倒れていた。
「・・・君もね」
互いに笑みを浮かべる。
この場に立っているのは、2人と彼のみ。
「僕はアッシュ」
「俺は。 だ。こっちは護衛獣のユエル」
互いに、自己紹介。
これから戦う予定であるこの場所は、なぜかほんわかとしていた。
「キミは、どうして大会に?」
「ああ・・・相棒に出ろって強要されちゃってね」
彼は、ははは・・・と笑って頭を掻いた。
「君たちは?」
「腕試しだよ。それと、旅の資金稼ぎに、ね」
それから、彼はなにも言わない。
深く聞く気はないのだろう。
しばらくの沈黙の後、彼は武器を持たずに手で顔を覆うように構えた。
武器は己の体のみ、といったところだろうか。
も、すでに抜き身の刀を正眼に構えて彼を見据えた。
「2対1で・・・平気かい?」
「う〜ん・・・僕は・・・。できれば君と戦いたいかな」
君たちが相手で2対1だと勝ち目ないからね。
構えを変えずに、彼はにそう告げた。
「・・・ユエル、ここはいいからまわりの警戒を」
急に攻撃されたら、たまらないから。
一度はしぶったものの、彼女はがんばってね、と告げてその場を走り去った。
「・・・助かるよ」
「別にいいって。俺も、人数差で勝ってもうれしくないし」
の言葉を最後に、まわりを張り詰めた空気が流れた。
それから数十秒。
先に行動を起こしたのは、アッシュだった。
一足飛びで、との間合いを詰めてくる。
10メートルほどの距離が、一気になくなり、そのまま拳を突き出す。
はそれを横にかわすと、すでに彼の左足が顔面を捉えていた。
紙一重でそれをかわすと、彼の腹部を蹴りつける。
彼は後ろに下がることでそれをかわし、地面に足がついたと同時に地面を蹴って俺に向かって突進を敢行した。
「ぐぅっ・・・!?」
それをもろに受け、後ろへ吹き飛ぶ。
地面を背中をこすることでスピードが弱まり、止まる。
咳き込みながらゆっくりと立ち上がり、口元を拭った。
「君は・・・召喚されたんじゃないかい?」
唐突な質問。
それは、彼も召喚されたということにもつながる。
確認のためにそれをたずねると、案の定。
彼も召喚されたのだそうだ。
「・・・シルターンか?」
このリィンバウムを囲う4つの世界で、唯一シルターンだけに人間が存在している。
彼は、この質問に対して首を横に振った。
シルターンでないとすると、考えられるのは1つだけ。
「名もなき世界・・・」
この言葉に、彼は正解、と言って笑みを見せた。
「偶然。俺も名もなき世界だよ」
は彼にそう告げて、刀を収めた。
腰を落とし、かがむ。その状態で刀の柄部分に手をかける。
顔を上げて、彼を見据えた。
なにかくる。
そう感じたのか、彼は腰を落として身構えた。
「いいのか?俺をこんなに無防備にして・・・」
口の端を吊り上げ、簡単な挑発をする。
彼はなにも言わずに、腰を落としてひざを地面につけ、両手をひざの前に置く。
その状態で、腰を浮かせた。
挑発に乗ったのか。それとも、勝利する自信があるのか。
どちらかはわからないが、その行為は十分にを警戒させた。
「・・・いくよ」
かすかに聞こえる、攻撃を宣言する声。
は手にかけた刀に力をこめ、刃の先に神経を集中させた。
ふいに、彼が視界から消える。
気が付けば、いつのまにか目の前にきていた。
「・・・疾い!?」
彼の速さに驚きながらも俺を射程に捉えた彼の拳を、後退することで回避。
それはむなしく空を切った。
「・・・!!」
彼から少し離れ、鞘から一気に刀を抜き放つ。
風がと彼の頬を流れ、彼は吹き飛んだ。
「ぐぅっ・・・!」
地面に叩きつけられもだえていたところに、は彼の喉元に刀を突きつけた。
「ここまでだな」
「・・・そうだね。僕の負けだよ」
は刀を収めて手を出す。
その手につかまり、彼はゆっくりと立ち上がった。
「終わったぁ〜!?」
遠くから聞こえる、ユエルの声。
とアッシュは、声の主に向かって大きく首を縦に振った。
それを見た彼女は、ピョンピョンはねながらこちらに向かってきていた。
「ところで、さっき名もなき世界から召喚されたって言ってただろ?」
「・・・ああ、そうだけど。それが何か?」
もしかしたら、同じ地球の人かもしれない。
淡い期待を持って、彼に尋ねてみた。
「君の出身は、地球かい?」
「・・・そうだよ」
「国は?」
の問いに、彼は目をつぶる。
そのまま笑みを浮かべて
「ステイツ――――アメリカのロサンゼルスだよ」
そう答えたのだった。
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