「待ちやがれェ!」


 数十人の盗賊集団が先を走る自分たちを追ってきた。
 どうやら街の住人に手を出すようなことはないようだ。
 額には血管を浮かび上がらせている。
 よほど怒っているのだろう。

「ずいぶんと単純な連中なのだな、奴らは」
「標的が俺たちなだけで、他は眼中にないだけでは・・・」
「おにいちゃ〜ん・・・ボク、疲れた〜・・・」

 の隣でイリスがバテている。
 まだ幼いから仕方がないだろう。

「もう少しで街を出るから、ガンバだ、イリス!」

 彼はとりあえず、彼女に声援を送ったのだった。


    サモンナイト 〜時空を越えた遭遇〜

    第04話 大多数 vs 数人


 街の出入口を抜け、草原に出た。
 背後には男たちの集団。
 街からある程度はなれたところで前を走っていた5人は集団に向き直った。

「や、やっと・・・死ぬ気に・・・ゼェ、ゼェ、なったか?」

 彼らもずいぶんと息が上がっている。
 よって凄んでも意味をなさない。
 むしろ、息の上がっていないイリスを除いた4人を恨めしく見ていた。

「だ、大丈夫か・・・?」
「う、るせぇ!テメェらがここまで走ってきたんだろうが!」

 息を整えて改めて凄む盗賊たち。
 全員が武器を構え、ニヤ、と笑った。

「ちょうどいい・・・」
「なに、なに?」

 不適な笑みにユエルはキョロキョロとまわりを見回す。
 同じように周囲を見渡すが、特に以上は見つからなかった。

「ユエル。そんなに慌てなくても大丈夫だって」
「でもぉ・・・」
「・・・出ろ!」

 その声でまわりを同じ格好をした集団がぞろぞろと現れ、彼らを囲った。

「え、え?」
「仲間がいたのか・・・っ!」
「テメェらが街の外に出るのはわかっていたからなぁ。先手を打たせてもらったぜ!」

 武器を構えて背中合わせに立つ。
 どこからきてもいいように、背後を守るためだ。
 頭であろう男が手を掲げ、自分たちを指さした。
 オオォォォ・・・という気合の入った声が、まわりから木霊し、煙を立てて、向かってきていた。

「ざっと、200人ってところか・・・」
「・・・大丈夫だよ♪」
「・・・イリス?」

 ボクにまかせてよ!
 イリスは長い杖を掲げ、詠唱をはじめた。
 向かってくる盗賊たちとは、まだ多少距離がある。


――界より出でし機兵・・・」

「ウオォォォ・・・!」
「俺たちも行こう!」
「うむ!」
「敵ヲ掃討シマス」
「いくよーッ!!」

 互いにうなずき、それぞれの方向へ散る。
 それぞれの目の前には30人ほど。
 刀を振るって、1人ずつ確実に気絶させていった。


「その力を持って敵を食らえ」

 イリスの持つ黒いサモナイト石に光が灯る。


「死ねェェェッ!」
「いりすニハ、何人タリトモ近ヅケサセハシナイ・・・」

 詠唱中のイリスをかばうクルセルドは、誰も近づけまいと銃を乱射。
 すべて地面を狙ったものだが、銃弾を足に受けてもだえる者もいた。


「誓約のもと、イリス・アルフェルトが命じる!!・・・いっくよー!!」


 詠唱を終え、杖を虚空に掲げた。





「ヒュプノブレイク!!」





 杖の上に、1体の機械兵士が現れた。
 肩にはなにか、霊体のように透き通ったものが乗っかっている。
 機械兵士が腕を伸ばすと腕の先が大砲のような筒に変わり、一気にエネルギーの塊を発射した。
 着弾点の盗賊たちは、逃げることもできずにもろにエネルギー弾を受けて、ポーンと遠くに飛んでいった。

「す、すごいな・・・」
「う、むぅ・・・」

 その光景に目をまるめつつ、襲い掛かってくる敵を倒していく。
 死なない程度ではあるが、攻撃を受けて盗賊たちは倒れていった。











「まだ・・・やる?」
「ぐ・・・」

 頭の首もとに刀の切っ先を突きつけ、たずねた。
 彼は、悔しそうに唇をかんでいる。

「今なら、まだ見逃してやることもできるが・・・」
「・・・・・・」

 まわりにいた盗賊たちは、全員気絶している。
 イリスの召喚術を受けた者たちは、そのへんに散らばっている。

「ちっ・・・」

 頭は飛びのくと、1人去っていった。









 残ったのは、自分たちと倒れている盗賊たち。

「・・・帰るか」
「そだねっ!」
「えねるぎーガ不足シテイマス」

 たちは、武器を収めて街へ戻っていった。
 もちろん、その場に気を失った盗賊たちを残して。












殿」
「・・・ん?」

 クルセルドの機械的な声に、首を横にひねる。

「自分ガ間違ッテイタヨウデス。アナタガタハ強イ。キット、大会モ勝チ進メルデショウ」
「そっか、わかってくれたか」

 べつにいいよ、と言って二カッと笑う。
 クルセルドは、なにも言わずにガショガショ音を立てて歩いていた。








 街に戻った5人は、改めて食堂で盛大に食事をした。
 もちろん、お金を持っていないのでソウシに多少借りて、だが。
 戦う前にも食事をした気がするが、そんなことはどうでもいい。












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