「いや、まさかこのような所で同郷人に会えるとは思ってもみなかったぞ」
「そ、そうですね・・・」

 とユエルは、沖田 総司と名乗る兄さんと街を歩いていた。
 目的地は、もちろん闘技大会の受け付け。

 彼を召喚した召喚主は、はぐれに襲われて亡くなったのだという。
 それから彼は、この街で用心棒をして生活していたのだそうだ。

 「日本をご存知ですか?」

と聞いたとたん、表情を緩めての肩をバンバンとたたく始末。
 そして冒頭のセリフである。

「しかし、なぜ私が日本出身だということを知っていたのだ?」
「あー・・・」

 知らないわけがない。
 彼は、の住んでいた世界の約100年以上前の人間で、歴史上の人物だからだ。
 もちろん、彼はそれを学校で勉強している。

「ほ、ほら!名前・・・そう!名前ですよ!」

 さすがに100年後の人間です、なんて言っても信じてもらえそうにない。
 必死に理由を考え、でっち上げた。


    
サモンナイト 〜時空を超えた遭遇〜

    第03話 参加受付と盗賊集団


 の理由に眉をひそめていたが、まぁいいかといわんばかりに豪快に笑った。

「しかし、お前たちも闘技大会に出るとはな・・・」
「なにか、問題でも?」
「いや・・・強敵が現れたと全身の血が騒いでいるのでな」
「きょうてき・・・?」

 強敵の意味が理解できず、ユエルは首をかしげる。

「ほら、ユエル。学校で習っただろ?簡単に言えば強い対戦相手のことだよ」
「あ、そっか!じゃあ、ソーシも出るんだね?」
「ああ。私は今、闘技大会と用心棒の仕事が生活の要だからな」

 今の話を聞いている限りでは、この街の闘技大会はかなり頻繁に行われているようだ。

「沖田さんも出るんですか・・・」
「そんな他人行儀な話し方はよせ。仮にも同じ世界のよしみではないか」

 ソウシでいいぞ、と言って彼は微笑んだ。
 同じ世界でも時間が違うのではなんとも言えず、乾いた笑いを浮かべた。

「じゃあ・・・ソウシは、今までに何回も大会に出場を?」
「いや、そういうわけではない。まだ召喚されて日が浅くてな」

 聞けば、彼はまだ召喚されて半年らしい。
 今でも元の世界にいる仲間たちのことを思い出すこともあるそうだ。
 ―――まぁ、無理もないとは思うが。



 そんな話をしているうちに、参加受付にやってきた。
 受け付けの前は広場になっていて、剣や槍、杖といった武器を背負った人たちが列を作っていた。

「は〜・・・ずいぶんと混んでるなぁ・・・」
「これじゃいつまでたってもユエルたちの番が来そうにないよ・・・」

 どうやら全員参加者のようだ。
 列の先頭が、どうやら受付らしい。
 しかも、看板を見ると今日が締め切りらしい。

「明日から、一週間かけて大会が行われるからな」
「い、一週間も!?」

 の声に、まわりの人たちが視線をこちらに向ける。
 それを見て、3人は愛想笑いをふりまいた。

「しかし、一週間か・・・」

 なんとか視線を逃れ、は列に並んだまま首をひねる。
 ユエルも、心なしか落ち込んでいるようだ。

「どうしたのだ?」
「俺たち、帝国領から歩いてきたもんだから、今一週間もこの街にとどまっていられるだけの金がないんです」
「島でもらった食べ物もすぐになくなっちゃったもんね・・・」

 2人の事情を聞いた途端、ソウシは声をあげて笑い出した。

「そ、そんなに笑うことないでしょうに・・・」
「くくく・・・悪い悪い。お前たち、路銀もなしによくここまで旅ができたものだな」
「着いたらすぐにゴハン食べたよ・・・おなかいっぱいに」

 彼は、なんとか笑いをこらえている。
 2人は、もはやなにも言うことはできず、ただ彼の笑い声が納まるのを待っていた。

「よし!だったら私のところに来るといい。面倒見てやる」
「・・・ホントッ!?」

 ユエルの声に、彼は大きく首を縦に振った。

「そうと決まれば膳は急げだ。早く受け付け済ませて来い」
「ありがとう・・・助かります」

 は、深く頭を下げて礼を述べた。
 本当に、今日もどこに泊まろうかと思い悩んでいたからだった。

 とユエルはその後2時間ほど並んで、やっとの思いで受け付けを済ますことができた。
 ソウシのもとに行くと、だいぶ待ちくたびれたのか、じれったそうに頭を掻いている。

「遅くなりました」
「やっと終わったよ〜」
「・・・おつかれさん。それで、お前たちはこれからどうするのだ?」

 そう聞かれたところで、食堂にイリスたちを待たせていることを思い出し、彼に告げた。
 すると、ついていく、と言って2人の後ろを歩き始めていた。

「ちょうど小腹がすいていてな」
「・・・さいですか」

 考えていることがわかっていたのか、一言理由を話して笑う。
 は、ふう、と息を吐いて、前を歩くユエルにはぐれないようにと声をかけた。














 ギイ、と音をたてて食堂の扉をあける。
 視線の先には、椅子に座って退屈そうに足をブラブラと振っているイリスと
 傍らで立ち尽くすクルセルドの姿。

 イリスは、こちらに気づくや否や俺たちの方に向かって走り出し・・・


「おにいちゃーん!!」


 抱きついた。

「あーっ!イリス、ダメだよ。が困ってるでしょ!?」
「えへへ・・・」

 顔を赤くして怒るユエルとそれを尻目に、にすりよるイリス。
 彼は、彼女を見てため息をついた。

「ずいぶんと好かれてるじゃないか・・・」
「ははは・・・」

 あごに手を当ててニヤリと笑うソウシに、は乾いた笑いを浮かべた。





「参加登録、してきたんだね?」
「ああ」
「ソチラノ方ハ?」
「私は沖田 総司。ここにいる とは同じ世界の同郷人だ」

 そう言って肩を叩くソウシを見て、イリスは声をあげた。

「おにいちゃん、召喚獣だったの!?」
「あー、言ってなかったか。1年くらい前にこっちに召喚されたんだ、俺は」
「召喚主ハドチラニ?」
「いないよ」

 いない、というにイリスは目をまるめる。
 召喚主のいない召喚獣は、召喚師たちにとって特殊なのだろう。

「なんで、なんで?」
「それは・・・」

 彼女の目は、心なしか輝いて見える。
 彼が特異な存在にでも見えたのだろうか。
 それともただの興味本位なのだろうか。
 とりあえず、島であったことを簡単に話して聞かせた。

「た、大変だったんだね・・・」
「ずいぶんと大冒険してきたようだな」

 感心した、といわんばかりの表情を見せるイリスとソウシ。
 とユエルは、そろって頭を掻いた。










 ソウシはふくれた腹をさすり、満足そうな顔をしている。
 彼の提案で、軽く食事をしようと言うことになったので、相伴に預かったのだ。
 もちろん、とユエルは最後の路銀をここですでに使っていたので金はない。
 断ったのだが、おごるという言葉についうなずいてしまったのだった。

「く、食いすぎた・・・」
「ユエルも〜・・・」

 とユエルは、腹をさすってため息をついた。
 イリスは隣で心配そうにを見上げている。
 クルセルドは、相変わらず彼女の後ろをついてきていた。








「見つけたぜェ!!」
「「「「「?」」」」」

 突然の声に5人はいっせいに振り返った。
 そこには、先ほど追い払ったはずのゴロツキ。
 彼の後ろには部下であろう数十人のゴロツキたち。
 全員、ナイフや剣を構えて自分たちを凝視していた。
 おそらく、彼らは盗賊かなにかなのだろう。

「そこのお前!さっきはよくもやってくれたなァ・・・」
「ねえ、なに?アイツラ」
「さっき受け付けに行く途中にちょっと、な」

 イリスの問いに小さな声で答える。
 しかし、彼らには聞こえていたようでなにやらとユエルとソウシをにらんでいた。

「テメェらもだ!俺たちをコケにしやがって・・・」

 ナイフを振りかざして、集団の中の1人が向かってくる。
 とユエルはそれをうまくよけたが、イリスはクルセルドにかばわれたようだ。

「なにするんだよぉ!」
「うるせェ!テメェらもまとめてツブしてやる!」

 彼の声にイリスは怖がりもせずにただ、笑みを浮かべていた。

「そっちが先にボクたちを狙って攻撃したんだから・・・これは・・・正当防衛ってことで、いいよね?」

 イリスはニヤリと笑って、集団を指差す。

「クルセルド、やっちゃって!」  
「了解。コレヨリ、敵ヲ掃討シマス」

 クルセルドは、そう言い切る前に彼らに向かっていった。

「ここは街中だ。街の者たちを巻き込む可能性があるから、ヤツらを外へ!」
「了解!行くぞ、ユエル」
「うんっ!ゴハンも食べたから、元気いっぱいだよ〜!!」
「クルセルド、アイツラを街の外に誘導して!!」

 イリスの声に、機械的な肯定の声が聞こえた。

 それを聞くと、5人はいっせいに街の出口に向かって走り出した。









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