夢を見た。

 それは、昔の夢。

 父さんと、母さんと、小さい俺。

 暖かい日差しの中で楽しそうに笑っていた。



 しかし、その光景は一陣の風と共に一瞬にして消え去った。


 次の瞬間。

 暖かい日差しの中に一人、ぽつんと立ち尽くしていた。



『ま〜ったく、いつまで昔を背負って生きてんだよ? お前は』



 頭の中に声が響く。
 どこかで聞いたことのある、懐かしい声。



『な〜にボーッと突っ立ってんだよ』



 荒っぽい口調の中に見て取れる、やさしい声。
 は、キョロキョロとあたりを見回した。

「っ!?」

 その声の主は、すぐに見つかった。




「父・・・さん・・・?」





    サモンナイト 〜紡がれし未来へ〜

    第40話  再会





『よう』

 彼は、ピッと手を上げて笑顔を見せた。

「なんで・・・こんなトコにいるんだよ・・・?」
『なんでって・・・ご挨拶だな』

 呆れたような笑みをもらす。
 ツカツカとに近づいて、

 ガツンっ!

「・・・った!?」

 目の前で歩みを止め、脳天の拳骨をぶち込まれていた。


『我が息子の心配をしない親がどこにいる?』
「たた・・・まあいいや。とにかく、夢の中とはいえまた会えて嬉しいよ」

 まったくだ、急に消えちまいやがって。

 笑みを崩さずにパンパンとの肩を叩くと、遠くを見つめるように頭を振った。

『しっかし、まさかリィンバウムに呼ばれてたとはなぁ』
「なんでリィンバウムのこと知ってるんだよ・・・」

 だからこうやってお前の意識の中に入り込めたんだけどな。
 そう付け加える自らの父親をみて、はため息混じりにたずねていた。



『なんでって・・・俺はリィンバウムの出身だからだよ』



 ・・・は?
 その答えに、沈黙があたりを包む。
 耳を疑った。

 それなのに、

 ミスミやキュウマは元気か?

 などと聞いてくる。

『わからねえか?』

 さっぱりわからない。
 言動から察するに彼は島の住人だったということは確か。
 さらに、ミスミさまやキュウマとも知り合い。

『お前、俺の名前忘れてやしねェだろうな?』
「え?えーと・・・」

 考え込んですぐ、答えに行き着いた。
 しかし、信じられない。

『深く考え込まなくてもわかることだろ?』
「・・・!」

 顔を上げる。
 その先に、笑みを浮かべた彼の姿があって。

『俺の名前はリクトだ』

 どうやら答えはあたっていたようだ。



「で、なんで父さんがリィンバウムじゃなくてそっちにいるんだ?」

 こっちじゃ死んだことになってるんだぞ。
 そう、自分の父親にそう言って聞かせた。




『俺はな、島で死にかけてたところをこっちに飛ばされたんだよ』

 そこで俺が世話になったのが、お前の母ちゃんの家だぞ。

 なんて言って笑って説明してくれた。

 飛ばされたところがなんだか大きな家の前で、の母親に当たる人物はそこに住んでいたらしい。
 ずいぶんと金持ちだったんだな・・・素直にそう感じた。今まで住んでいた家が家だけに。
 彼女は、大ケガだった見ず知らずの得体の知れない自分を

「困ったときはお互い様、がウチのモットーですから」

 などと言って笑顔で看病してくれたのだそうだ。
 リィンバウムにいたときはあった自分が鬼人である証たるツノも、なぜかなかったらしい。



『今考えると、お前のお人よしは母さんに似たのかもな』

 もちろん、お前が男前なのは俺に似たんだけどな?

 と、胸を張って自慢するように話す。


「ミスミさまもキュウマも、ヤッファやファリエルも元気だよ」

 父さんのもう一人の息子もね?

 そう言い放っては歯を見せてにひひと笑う。
 彼は安心した様子を見せた。





『さて、ひととおり安心したところで本題に入るか』
「なんだよ、改まって」

 ゴホン、と咳払いをしてを見た。

。お前に伝えたいことがある』

 真剣な表情を作った後、

 たいしたことじゃないけどな?

 などと言って場の雰囲気を乱す。
 相変わらず、雰囲気をぶち壊すのがお得意のようで。



『お前は俺の息子だ。そっちでもうまくやってると思うが』
「・・・」
『お前は俺が元々リィンバウムの住人だから、俺の代わり、っつーかなんつーか・・・とにかく、今のお前はリィンバウムに必要な存在なんだよ。望めば、リィンバウム全体がお前に力を貸してくれるはずだ。きっと、な』

 どうやら、今の島の状態を隅から隅まで知っているようで、なんかイヤだ。
 そんな思考を吹き飛ばして、頭を掻く。

『あの刀・・・ロギアもお前には期待してるんだからよ』

 もと、その刀の所持者だからなんとなく、わかるんだぜ?
 そう言ってニッと笑う。

「わかってるさ。俺は負けない」
『今持っている刀も、今の主を気に入っているようだしな』
「・・・なんでそんなことわかるんだよ」

 意識に入り込んでると、そんなことも手にとるようにわかるんだよ。

 そう説明してくれた。

『俺の剣の指導はムダじゃなかったようだしな』

 なぜか胸を張る。

「安心しててくれよ。いつそっちに帰れるか、わからないけど」

 必ずこの世界を救い出してみせる。

 は拳を作って決意を表明した。思い切り恥ずかしいのを我慢して、だが。
 普通の人間なら、ここまで言うことはないだろうけど。
 リクトは満足げに笑みを浮かべると、

『よし、それでこそ俺の息子だ。じゃ、俺は帰るぞ』

 結構疲れるんだよな、コレ。

 そう言って首をコキコキと鳴らす。
 は素直に礼を言った。

『それじゃ・・・っと、そうだ。俺と会ったことを他の奴らには言うんじゃねえぞ』
「?・・・なんで」
『島の<今>を、乱したくないんだよ』

 それを聞くと、首を縦に振った。
 今を乱せば、収拾がつかなくなるのは目に見えている。
 リィンバウムに住まう者は、自己主張の強い者ばかりのようだから。

『よっし。それじゃな!』







 それっきり、父―――轟雷の将リクトの声は聞こえなくなった。








 ゆっくりとまぶたを開ける。
 視界には木製の天井。
 微妙に部屋全体が波でゆれているのがわかった。

 外を見ると、まだ夜明け。
 太陽が、顔を出したところだった。
 見回すと、視界に収まったのは朝の日課にと一人稽古をしているカイルの姿。

 は、刀を手にとり部屋を出る。
 最近、ゴタゴタしていてできなかった朝の稽古をするために。
 キュウマから形だけ教わった、「居合」を完成させるために。







 今より、強くなるために。







 刀が、朝の日差しに反射してキラリと光った。








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