「俺は・・・俺は、ゾンビだけはダメなんだーっ!!」
「ウウアァァァ・・・!!」
「ギャーッ!?」

 声をあげるゾンビを見て、はさらに顔色を悪くして悲鳴をあげる。

「あのにも、苦手なものってあったんだな・・・」

 つぶやいたのは誰だったのか、今の一行にはそのようなことはどうでも良かった。
 今、最優先すべきことはのことである。

「っ!?」

 に気を取られていたアティは背後の気配に気づき手に持った剣を振るう。
 気配の正体は骨の化け物で、剣を一閃させることであっさりと崩れていった。

っ!怖いのはわかりました。だから、それをなくすためにも戦ってください。そうすれば、怖いものはなくなりますからっ!!」
「わ、わかった・・・っ!」

 は腰の刀を抜き放つと、

「だああぁぁぁっ!!!」

 一刻も早く片付けようと地面を踏み出した。










「くそ、キリがない!」
「倒しても倒してもどこからか、わいて出てきやがる!」
「あぁ、早く終わってくれよ〜」

 情けない声を出すを横目に、カイルは近づいてくる敵を殴りとばす。

「この場にたまっている魔力が彼らを形作っています!それを放出すれば、あるいは・・・!」

 ヤードが召喚術を唱えながら叫んだ。

「くそ・・・っ!」
「いつまで戦ってないといけないのよーッ!!」

 ソノラが銃を乱射し、発砲する音がこだまする。
 銃弾に貫かれた亡霊たちは唸り声を上げながら消えていった。





    サモンナイト 〜紡がれし未来へ〜


     第25話  核識





 戦闘を始めてからどのくらいの時間が過ぎただろうか。
 は額に汗を浮かべて刀を振るうが、敵は倒しても倒しても蘇り、攻撃を仕掛けてくる。

「くそ・・・っ!」
「こっち来んなよ!」
「ふぅ・・・ふぅ・・・」
「ひゃあああッ!!」

 4人で背中を合わせて必死に応戦していた生徒たちも疲れが見えはじめている。
 敵の召喚術が生徒たちに向かって放たれた。

「ウィルッ!アリーゼ!!」
「ナップくん!ベルフラウちゃん!」

 レックスとアティが叫ぶ。
 気づいたころには召喚術が放たれていて、迎撃も間に合わない。

「・・・鉄壁の守りを、ここに!」

 は召喚術の中心に入り込み、力を放出した。
 大地の力、守りの力だ。

 轟音と共に砂煙が立つ。


 それが晴れると、術を受けた全員は無傷。
 レックスは、それを見てほっと息をついた。

ッ!!」

 アティが叫んだ。
 視線の先には、生徒たちの前で息を切らし座り込んだの姿があった。

「みんな、無事だな・・・」
「マスター!!」

 彼の護衛獣であるユエルが叫ぶ。
 それと共に、刀を地面に突き立て立ち上がった。

「さあ、もう少しだ!気を引き締めろ!!しんどいけど、俺もがんばるから!!」

 のそんな叫びと共に戦闘が再開された。





「アアアアぁぁァあああァァァァ・・・・ッ!!」


 まるで水が蒸発していくかのように亡霊たちは消えていった。
 は刀を納めて膝をつき、乱れた息をなおそうと胸元に手を当て、大きく呼吸を繰り返す。

「・・・やったのか?」
「彼らを形作っていた魔力は、霧散しました。しかし・・・」

 ヤードは深刻な顔で説明をした。

「魔力が再び満ちれば、亡霊たちはまた、あのような姿でさまようでしょうね」
「何度、死んだって永遠に楽になれないってワケね・・・」

 スカーレルのつぶやきに、アティは拳を強く握る。
 放っておけない、と叫ぶアティにレックスや生徒たちが近寄った。

「ああ、そうだとも。お前たちなら、きっとそれを叶えられるさ」
「急ごうよ!」

 ソノラの呼びかけと共に遺跡の内部へ足を踏み入れた。





 長い廊下の先に、たくさんの機械が所狭しと設置されている部屋にたどり着いた。
 どうやらここが遺跡の中枢のようだ。
 床には、紫に光る魔方陣と緑色に輝く紋章、日本にある札に似た紙を組み合わせて貼ってあり、札は赤く光っていた。
 それらは、リィンバウムを囲む4つの世界のもので、それらをロレイラルの機械技術で統合、制御をしているのだと説明されたが、にはほとんど理解不能。

 一つだけいえることは、この機械だけで、とんでもない魔力が引き出せるのだという事実。

「それって、まるで伝説の・・・!?」
「その力、至源より生じあまねく世界に向けて通ずるものなり・・・
 彼の者の声、すなわち四界の声なり・・・
 彼の者の力、すなわち四界の力なり・・・
 四界の意志をたずさえ悠久に、楽園の守護者となるべき者・・・」

 ヤードがなにかを読み上げるかのような口調で話す。

「誓約者(リンカー)・・・エルゴの、王・・・」
「りんかー・・・?」

 初めて聞く単語に首をかしげる。
 近くにいたスカーレルが「この世界の神さまみたいなモンよ」と教えてくれた。

「ちょっと待ってよ!?それって、昔話の中の話なんじゃあ・・・」
「でも、現実に剣の力・・・遺跡の力でセンセは、あらゆる召喚獣を喚びだしているのよ?」

 ソノラの言葉にスカーレルが口をはさんだ。
 それによって彼女は「あ・・・」と声を漏らし口をつぐむ。

「それと同じような力が、この剣に?」
「断定はできません。実際に、この装置を起動させてみないことには」

 不安そうな顔をしたアティの肩をカイルが叩く。

「心配すんな。いざって時は、俺らがついてるんだからよ」
「俺たちを頼ってくれ、な?」

 レックスも続いて声をかける。
 アティは決心したかのような顔つきで、碧の賢帝 ―― シャルトスを抜いた。
 碧の光とともにアティの髪から、皮膚から、色素が抜け落ちていく。
 それは、前にレックスが抜剣したときの姿によく似ていた。


   ―― つながった・・・
   ―― ようやく、完全な形でつながった・・・



「!?」


   ダメだっ!彼女には・・・


 前に話をした幽霊の青年の声と、他のなにかの声が入り混じる。


   ―― 長かった・・・


 なにかの声は、アティがここに来るのを待ちわびちたかのように紡がれていく。


   ―― 断たれた回路をつなぐための部品をつけだすまでの時は・・・
   ――
同じカタチ・・・同じ輝きの魂・・・これこそ、まさに「適格者」なり

   お願いだ!彼女を・・・

   ―― 全てを「継承」し・・・完全なる力の解放をもたらす・・・封印を解き放つ鍵よ!

   彼女を今すぐ!止めてくれ!!

   ―― 新たな「核識」となりて断たれし「共界線(クリプス)」を再構築せよォォッ!!


「アティ、やめろ!!ここで剣を使ったら・・・」
・・・?」

 周りの人間がを見る。

「魂を遺跡に喰われるぞ!!」

 の必死な叫びもむなしく、室内に轟音が鳴り響く。
 それとほぼ同時に、アティに異変が起こった。

「ア・・・!?」
「・・・先生?」

 シャルトスが光る。
 光るたびに、アティの様子はおかしくなっていった。

「間に合わなかった・・・ッ!?」
「あ、アア、ァ・・・ウ、あアッ、あ・・・や、メ・・・て・・・」

 ソノラはそんな光景を見てキョロキョロとまわりを見回す。
 なにをしていいのかわからず、ただ見ているだけだった。

「あああアアぁぁぁァァ0F1A01AFアアあ0あFァ01ァEァ0ぁFァ11ァ!?」
「アティ!!」

 レックスが叫び、彼女のところへ走っていった。
 しかし、目の前壁があるのか、全身で壁に激突し背後にしりもちをつくと、悔しそうに拳を握った。
 生徒たちも目に涙を浮かべて叫んでいる。

「どうしちゃったの!?」
「封印によって損傷した遺跡の中枢機能を、移し替えて復活しようとしているんだ・・・」

 頭の中に知識が流れ込む。
 これは、どこから来ているのだろうか?

 「・・・ちょっと、なに言ってるの?」

 スカーレルの問いには首をぶんぶんと振って思考を停止させ、叫ぶ。

「今はそんなことどうでもいいんだ!早くアティから剣を引き剥がさないと・・・アティがアティじゃなくなる!!」
「「「「・・・ッ!?」」」」
「なら、俺が・・・」

 生徒たちの身体が震える。
 の言葉を聞いたカイルは拳を当てて駆け出した。
 そのときだった。

 カイルの足元に、金属が突き刺さる音。彼が視線を向けると、黒光りした手裏剣が1つ、突き刺さっていた。

「よけいな手出しをするのは、やめてもらいましょう」
「キュウマ・・・」

レックスがつぶやき、予想外の出来事に一同は目を丸めた。

「なんで・・・なんで、アンタがここにいるんだよ!?」
「こいつは、いったいなんの真似だ・・・ええ、キュウマっ!?」

 カイルに怒鳴られるがまったく無反応で話を進める。

「待ち続けたこの時を貴方たちに邪魔されるわけにはいかないということです」
「待ちつづけた・・・?」

 ユエルが首をかしげる。
 ソノラが敵意を剥き出しにして怒鳴る。

「あんた、先生のこと見捨てるつもり!?」

 しかし、キュウマはそれに答えない。
 表情を変えず、ソノラの言葉を無視していた。


「そのとおりさ」


 背後から、声が聞こえてそちらを振り向くと、そこにはメイトルパの集落の護人、ヤッファが立っていた。

「はなっから、そいつは遺跡の力を復活させるために、暗躍し続けていたんだからな?」

 ヤッファはそう言うと、キュウマを見据えた。

「剣をひきはがせ!さもなきゃ、アイツの魂は、この遺跡に食われちまうぞッ!」
「早くしないと・・・」

 はなんとかアティに近づこうと駆け出すが、キュウマの叫び声につい足を止める。

「戯れ言を抜かすなッ!」

 キュウマの振るった刀をヤッファが受け止め、金属による独特な音が室内に響きわたった。

「図星だろうがッ!?封印によって損傷した、遺跡の中枢機能を、移し替えて復活させる・・・そのための部品として剣と、その使い手を利用するんだろ!?」

 ヤッファはギリ、と歯を食いしばってキュウマの剣に耐え、彼に向かって怒鳴る。
 碧の光がすでに部屋中に広がっていた。

「ア、ア、ァ・・・ッ!」
「早くしやがれ!!書き込みが始まったら手遅れになるぞッ!」


 我に返ったはアティを救出しようと駆け出した。







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