「おい、。顔色がよくないみてえだが、大丈夫か?」
帝国軍との戦闘後、船に戻るために森の中を歩いていた。
結局、帝国軍と対立することとなってしまったレックスとアティは今だに暗い顔をしている。
「い、いや・・・大丈夫、大丈夫・・・」
「マスター・・・」
カイルの問いには頭をおさえながら答えた。
隣を歩くユエルは彼を身を案じてか少し涙ぐんでいた。
「あまり無理はしないでくださいよ。先の戦闘であのような大きな力を使ったのですから」
あれは召喚術の類ではないようですが、とヤードは付け加えた。
「が使った力って何なの?」
「あれは―――」
サモンナイト 〜紡がれし未来へ〜
第18話 力
「の力じゃない、ってどういうこと?」
「そのままの意味だよ。さっき使った力は、この刀のものなんだ」
そう言うと、腰に差した刀を取り、前に突き出す。
みなの目がそれに集まった。
「この刀は、ロギアという名前でな。メイメイから譲ってもらったんだが・・・」
ユエルはの発言に驚きの表情を作った。なぜなら、彼女は刀の名前を知らないのだから。
もちろん、自分の主であるもメイメイから聞いていなかったため、知らないと思い込んでいたのだ。
ユエルはそのことを聞かずにはいられなかった。
「マスター、何でその剣の名前・・・わかるの?」
「前に夢に出てきたんだ。剣の精霊・・・みたいなものかな。そのときに聞いた」
信じられないかもしれないけど、とそう付け加えた。
「力の使い方・・・も・・・っ・・・聞いた。本当、なら・・・大丈夫な・・・はずだったんだけど」
急に強烈なめまいと眠気が押し寄せてきた。
「「「?」」」
「・・・カイル・・・悪い、俺を・・・運んでおいてくれ・・・」
そのままは、まぶたを閉じた。
「おっと」
「マスター!!」
兄貴は倒れこむを慌てて抱えた。
ユエルは泣きそうな顔をして彼に声をかけてる。
「ちょっと、どうしちゃったのよ!?」
驚いた。いきなり倒れるからどうしたのかと思えば・・・
「大丈夫だ。寝てるだけだ」
兄貴はそう言うと、ユエルの頭に手を置いた。
―――これだもんね。でも、一体なんでこんなところで急に寝ちゃったんだろう?
さっきの戦闘で疲れたから?刀にあるっていう力を使いすぎたから?
「何で、はこんなところで寝ちゃったのかしら?」
スカーレルもあたしと同じ考えだったみたい。誰に、と言うわけじゃないけど、尋ねた。
「さあな。そのことに関してはコイツが起きなきゃ話にならねえ」
「そうですね。それに、今は皆さん疲れていますし。一刻も早く戻って身体を休めましょう」
ヤードの呼びかけで、みんなは止めていた足を動かした。
は大人だと思う。見た感じだと、あたしと同じくらいの年頃のはずなのに、とても落ち着いているし、さっきの戦闘だって、ビジュがいないことにいち早く気づいて、ユエルに指示出してるし。
それに、この世界に召喚されてからまだそんなにたってないはずなのに、必死になってみんなを守ろうとしてる。家族や友達と離れてるのに、泣き言一つ言うこともない。あたしだったら、きっと寂しくて泣いちゃうよ、きっと。
いつもは大人なんだなぁ、と考えていても・・・兄貴が背負ってる今のの表情を見てると、年相応なんだなって思う。
早く、元気になればいいな・・・
あたしは、兄貴の背中で眠るを眺めて、そんなことを考えていた―――
「ううっ・・・」
はいつものようにぐうっと伸びをする。
しっかりと目を覚まして、部屋を出た。
「マスターっ!!」
「うおっ」
ずっと彼の側についていたのか、目の前にいたユエルが抱きついてくる。
「心配かけたな」
「ううッ・・・いいよ・・・マスターが生きててくれれば、それで・・・」
はユエルの頭を撫でた。
「おおーっ!、起きたみたいだな」
「、大丈夫?」
声のしたところにはカイル一家がいた。レックスとアティ、それに生徒たちもいる。
つまり、船に住むメンバー全員集合ということだった。
「迷惑をかけた。ごめん」
「なに、いいってことよ」
カイルはカラカラと笑った。
「前にも言ったと思うけど、この刀はロギア、という名前だ」
朝食中。はみんなにこの刀のことについてを話した。
「この剣は魔力がほとんどない者にしか使いこなすことができないらしい」
「つまり、くん。あなたの魔力は他の方とくらべて魔力が極端に低い、と言うことですか?」
ヤードの質問にうなずく。
「この刀には、大自然を操る力があるらしくて、使用者の精神力と引き換えにその力を行使するんだ」
「「「「精神力・・・」」」」
生徒たちのつぶやきにうなずいた。
「そう。精神力は使用者の生命力といってもいいかな。だから使いすぎると倒れるらしい。夕べまでみたいにな」
「ということは、この間の戦闘で使ったあの力は・・・の精神力を消費して作り出したものなんですね?」
アティの問いにはうなずいた。
「あれだけ規模が大きいとその分消費も激しいから、そのせいで倒れたんだろうな」
みんなは言葉にならないといった様子だった。
無理もないと思う。特に、召喚師であるヤードは召喚術以外に召喚術に対抗できる力を目の当たりにしてしまったのだから。
自然を操る、なんてのいた世界でもできるわけもない。でも、できてしまうことに変わりはないから、は今の状況をしっかりと受け止めていた。
は黙り込む仲間たちを見て苦笑しながら器に盛られた朝食をかっこんだ。
「ヘタしたら、死んじゃうかもって・・・メイメイが言ってた・・・」
『死・・・っ!?』
ユエルの一言に皆はビクッっと身体を揺らす。
は、口に含んだ朝食を少し吐き出すと、それは正面にいたレックスに吹きかかり、彼は悲鳴を上げた。
「そんな大げさにしないでくれ。今はそれに関しては大丈夫なはずだし、俺もあの力を多用するつもりはないから」
そして、何も言わずにレックスに向けてゴメン、と謝罪。
の言葉にその場の全員の安心した表情を浮かべた。
「ごちそうさまっと・・・さて!朝の鍛錬にいってくるから」
「ちょっと、いつの間にゴハン食べちゃったの?」
「早・・・」
「あーっ!待ってよ、マスター!!」
は後はよろしくと残して浜辺を後にした。
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