「腹ァ、減ったのぉ・・・?」
「「「へい、船長!」」」
「酒も・・・飲みたいのう・・・?」
「「「へい、船長!」」」
壊れた船のふもとにいる数人。
船長であろうヒゲの男のつぶやきに船員であろう同じ格好をした男達が返事をしている。しかも、返事のセリフから叫び方まですべて同じというのはどうだろう?
「・・・お知り合いか?」
肩を落としたカイル一家に、キュウマのこの一言。
彼の声に、スカーレルがため息をつきつつ、
「アタシらと同じ海賊よ。あんま、認めたくないけど・・・」
雰囲気からして、いかにも不服そうだった。
「なんだか知らんが、俺たち一家のことを目の敵にしててな。いつも因縁をつけて襲ってくるんだよ」
なんの因果か、彼らと居合わせたことが・・・イヤそうだった。
「はあ・・・でも、そんな人たちがなぜこの島に?」
アティはそうつぶやいたが、その問いに答えられるものはこの場にはいない。
いるとすれば、討伐・・・もとい話し合いの対象である海賊たちである。
「なあ、兄弟よ。ワシらがこの島に流れ着いて何日じゃ?」
「へえ、あんさん。かれこれ、ひと月は経過しとります」
「ひと月、か・・・」
兄弟、と呼ばれた関西人?はうつむきがちに答えた。
「うがあああ・・・!」
その答えに船長は頭を抱え、叫び声をあげた。
「・・・この世界にも方言ってあるのか?」
はなんとも場違いな質問を投げかけていた。
サモンナイト 〜紡がれし未来へ〜
第09話 海賊
「なんで、ワシらがこんな目にあわにゃあならんのじゃあ!?それもこれも、あの妙な嵐に巻き込まれたせいじゃ!」
「まさか、港につないでおいた船が、突然の嵐で流されて・・・そのまま、漂流することになるなんて普通は考えられへんですもんなあ・・・」
まるで事情を説明してくれるかのように、彼らは話を続ける。
関西人っぽい男性が流暢な関西弁で話す。
彼だけは、どうやら今の状況を受け入れているらしい。
「だから・・・ッ!陸にあがるのはイヤなんじゃあぁぁ!!」
「ねえ、ヤード?」
「ええ、どうやら私のせいみたいですね」
船長・・・ジャキーニというらしいが、彼の叫び声によってスカーレルは隣のヤードへ目を向けた。同じことを考えているのか、ヤードもうなずいている。
「その様子だと、ヤードがその・・・港で嵐を起こしたのか?」
スカーレルを除く全員がヤードを見た。
ヤードはの問いに首を縦にふり、説明をし始めた。
「私は追っ手との戦いで、剣の力を一度だけ使ったんですよ。結局、制御しきれずにその時も、似たような嵐が起きて・・・」
無色の派閥とかいう組織からかっぱらってきたという剣。
2本あるうちの1本はレックスが持っているらしいが、嵐を起こすほどの力を持っているようだ。
「もしかして、それに巻き込まれてしまった・・・とか?」
「おそらくは・・・」
レックスに核心をつかれ、ヤードは苦笑い。
「まあまあ、あんさん。過ぎたことを言うてもしょうがありまへん。船がワヤになった以上、ここでやっていくしかあらへんやろ?」
「む、むう・・・」
「腹が減ってたらロクな考えもでまへん。まずは、そこからや」
頭を抱える船長を関西弁の男が説得した。なんて前向きな発言だろう・・・
すると、船長は「そうだな・・・」とつぶやいたかと思ったら、
「では、いつものように食料調達と行くか!」
「「「へい、船長!」」」
急に立ち上がって、クルーに号令をかけた。
「やっぱりあいつらが食料泥棒の犯人だったみたいだな」
遠くで「化け物の村から・・・」といった関西弁の男の声が聞こえる。
しかし、船長はそれを聞かずに「略奪行為は海賊の王道じゃい!」などと言っている。
「ったく、そんなこと自慢してどうすんだよ。ええ、ジャキーニ?」
カイルの呼びかけに海賊たちがいっせいにこちらを向いた。
ジャキーニはカイルの姿を確認するや否や、数歩あとずさると、
「うおっ!貴様はにっくきカイルっ!?」
素っ頓狂な声をあげた。
「なんで、あんさんらがここにおるんや?」
オウキーニ、という名前らしい関西弁の男が尋ねると、スカーレルが「いろいろあったのよ・・・」と適当に答えを返す。
スカーレルは、「それより・・・」とつぶやいて、びしぃっとジャキーニを指差すと、
「アンタたち。コソ泥みたいなマネはおよしなさいな」
彼に続いて「海賊として恥ずかしくないワケ?」とソノラが声をあげた。
「よ、余計なお世話じゃいっ!」
「勝手な言い分はそこまでにしなさい」
「それじゃ、オレらが困るんだよ」
同行して来ていた護人組のヤッファとキュウマがずい、と彼らの前へ踊り出た。
「とりあえず・・・君らのやってることは略奪行為とは違・・・」
「お前はちょっと黙っとけ」
「「・・・」」
護人の言葉にが口をはさむとヤッファにとめられてしまった。
カイルたちはそんな彼を呆れたように見ている。家庭教師の2人も同じようだ。
ジャキーニは確信したかのようにヒゲをなでると、その指でこちらを指差した。
「読めたぞ・・・?さては貴様ら、そこの化け物とグルになって・・・ワシらをひどい目にあわせるつもりなんじゃろ!?そうなんじゃろ!?」
決め付けたかのようにそう言い放った。
「いや、そうじゃないんです。俺たちは話し合いで解決を・・・」
「そういうつもりなら、戦争じゃあぁっ!!野郎どもッ!やっちまえいッ!!」
「「「へい、船長!!」」」
「私たちの話も聞いてくださいぃ〜!」
慌ててレックスが否定の声をあげるが、ジャキーニはすでに自己防衛のために戦闘態勢に入ってしまい、説得はおろかこちらの言い分すらまったく聞き入れなくなってしまった。
嘆くように声を発したのはアティだった。
ジャキーニの号令で、船員達も武器を取り出し、気合の入った叫び声をあげつつこちらへ突進してくる。
「あーっ、もぉ!話を聞いてっていってるのにーっ!!」
「アティ、こうなっちゃったらもう無理だよ」
両腕を振り上げて自分を主張するアティに、は一言声をかけた。
「の言うとおりだぜ。聞かせるためには、もう力ずくで聞かせるしか、ねえんだよッ!!」
「うぅぅ・・・っ」
ヤッファが一人、殴りとばしながらの言葉に続いた。
彼女はまだ納得いかないようだが、仕方なくナイフを抜く。
カイルたちは彼らのことをよく知っているせいか、すでに何人かの船員をのしていた。
「・・・っ!」
自分の方にも何人かナイフや投具をかかげて突っ込んできた。
そのうちの一人が投具だろう短めの刃物を投げる。
は、その投具を鞘をつけたままの刀ではじき、斬りかかってきた一人の胴体にそのまま打ち込む。
彼はぐぐもった声をあげて、その場に伏した。
「ふぅ・・・」
ジャキーニとオウキーニを除いた全員が向かってきたことから、海賊たちの中に召喚師はいないとは判断し、襲い掛かる海賊たちを浜に沈めていく。
味方が倒されたことに怒った船員たち数名は怒ってこちらに向かってきた。
俺はそのことごとくを鞘に入れた刀で気絶させ、ひとつ息をついた。
「おい、もう味方ほとんどいないんだからやめとけって。君らに勝ち目はないから、な?」
「く、くそう・・・っ」
敵の船員たちをあらかた気絶させると、はジャキーニに向けてそう口にした。
ほかのみんなもそうだと言わんばかりの顔をしている。ソノラにいたっては「うんうん」といいながらおもいっきり首を縦にふっていた。
ジャキーニとオウキーニは護人2人で倒したようだ。
2人とも地面に手をついている。
「あんさん、気ィ落としたらアカンがな。海の男は不屈やろ?」
「う、うむ・・・」
なんで、勝てんのじゃああああぁぁぁっ!?と叫ぶヒゲ船長をオウキーニが励ました。
「そんなことよりさあ。アンタたち、今の状況わかってんの?」
「アタシたちにとっちゃ毎度のことだけど、この人たちの考えはどうかしらねえ?」
スカーレルはそういって護人2人をみる。
ジャキーニたちも彼に続いて護人たちを見つめた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「ひ、ひいぃぃ・・・っ」
何も言わない護人2人。そこに現れる威圧に耐えかね、ジャキーニが声をもらす。
「なあ護人さんよ。どうするつもりだい?」
カイルはその様子にしびれを切らして護人に尋ねた。
「・・・お前たちの好きにしな」
「「俺たち(私たち)が、ですか?」」
「人間の裁きは、人間の手にゆだねるのが道理。それに・・・貴方たちの覚悟はしかと、見届けさせてもらいましたから。よろしいですね、ヤッファ殿」
キュウマの問いにヤッファは「めんどくせえだけだよ」と言ってそっぽを向いた。
「それじゃあ・・・」
「ったく、言われなくてもわかるだろが?認めてやるってコトよ」
それを聞いて、レックスとアティはなにやらひそひそと話し合いを始めた。
数十秒の後、2人は話し合いを終え、立ち上がった。
「じゃあ、こんなのでどうでしょう?」
「はいはい、おヒゲさん。さぼってばかりじゃダメですよーっ!」
「そうそう、キリキリ働きなさいよ」
マルルゥの呼びかけにソノラが続く。
ジャキーニはブツブツ文句をいいながら畑を耕している。
「働かざるもの食うべからず、ってところだな」
「そうね。食べちゃった野菜はちゃんと作り直して返せっていうコトね」
「この程度ですんだんだ。あの先生たちの人の良さに感謝しとくこったな」
カイルの言葉にオウキーニが種を植えつつ、
「ホンマでっせ?あんさん」
満面の笑みを見せた。
「くうぅぅ・・・っ、だから・・・ッ!陸にあがるのはイヤなんじゃあぁぁっ!!」
ジャキーニはそう叫ぶと、「おヒゲさん。さぼっちゃダメですよーっ!」とマルルゥにどつかれていた。
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