「ここがサプレスのみなさんが暮らしてる霊界の集落ですよ。『狭間の領域』って呼ばれてる、ちょっと不思議な森なのです」



 目の前に広がるのはうっそうと茂る森。昼間なのに薄暗くて、とても静か。
 やレックス、アティには鳥の声すらほとんど聞こえてこなかった。

「なんだか、さみしいところだね・・・」
「そうだな・・・どこを見ても生き物が見当たらない」
「サプレスのみなさんは、おひさまよりもおつきさまのほうが好きなのですよ」
「サプレスの住人は常に魔力を消費しているらしいから、昼間は外へ出ないんだね」

 アティとで印象を言葉にしてみれば、マルルゥが集落についての説明をする。
 さらにレックスがさらに話を掘り下げた。
 どうやらここで暮らしている生き物はみな夜行性らしい。

「ここの護人さんはヨロイさんですね。ヨロイさんはぴかぴかした洞窟でじいーっとしてるです」

 集落の奥へ入り護人の待つ場所へ向かう途中で、この集落の護人の簡単な説明を聞いた。

「シマシマさんみたいに寝ぼすけなのかもしれませんね」

 いやいやいや、さっき夜行性だみたいなこと自分で言っていたではありませんか。
 ここの護人さんだってサプレスの住人なら昼間外へ出てこないのはあたりまえではないでしょうか?マルルゥさん。

「ね、寝ぼすけ・・・」

 レックスもアティも俺の考えを悟ってくれたのか、苦笑いをしていた。

「でも、天使さんにお願いすれば、きっとだいじょうぶですよ」

 天使さん・・・?

「さあ、行きましょう」

 マルルゥはそういってさらに奥へと入っていた。





     
サモンナイト 〜紡がれし未来へ〜

     第08話  島内探索 4





「ヨク、キタ・・・カンゲイ、スル・・・」
「いや、こちらこそ招いてくださって感謝してます」

 低い声と高い声が混じったような声で話すファルゼンにレックスが代表して返答した。
 彼(彼女?)の隣にいる、背中から羽の生えた男性がどうやらマルルゥのいう『天使さん』らしい。

「ファルゼン様の身体は言語を用いるのにあまり、適しておりません。私、副官のフレイズが代理人としてお話しすることを、あらかじめお許しください」
「わかりました」

 天使さん、ことフレイズが自己紹介をした。
 それぞれ自己紹介をする。のことはキュウマから伝わっていたらしく、すでに知っていたようなそぶりを見せていた。



「お聞きになったように、私達は貴方たちと交流を持つことに同意いたしました。ですが、精神生命体たるサプレスの住人たちは人間とは異質な文化をもっています」

 フレイズはそういって、自然な流れで交流を進めていこう、と提案した。
 レックス、アティもそれに同意した。
 もちろんも同じように同意。
 それを見て、フレイズは微笑んだ。


「しかし、天使なんて初めて見たよ」

 そうつぶやくと、この場にいる全員がを見た。

「そうだったのかい?」
「ああ。天使といえばおとぎばなしぐらいにしか出てこなかったからな」

 レックスにそう答えた。
 の中で、リィンボウムは『なんでもありの世界』という位置付けになってしまっているため驚いた様子はなかったが、興味深そうにフレイズを見ていた。


「コワレレバ・・・キョウリョクハオシマヌ・・・」
「ありがとうございます。ファルゼンさん」
「デハ、ノチホドイズミデ・・・」

 3人とマルルゥはファルゼンとフレイズに別れを告げ、最後の集落へ歩き出した。










「ここがロレイラルのみなさんが暮らしている、機界の集落なのです。『ラトリクス』って名前なのですよ」
「すごいですねぇ・・・私達が暮らしてた帝都ウルゴーラにも、こんな大きな建物はなかったです」

 レックスもアティの言葉にうなずく。

「俺のいた世界の都会にはこんな建物いくつもあったけど」

 マルルゥを含む3人がこちらを見る。
 はそのまま大きな建物を指差した。

「さすがにここまで発達はしていないな。確か今・・・二足歩行ロボットが動くようになってたところだったかな」
「二足歩行ロボット・・・ですか?」
「ああ。人間みたいに2本の足で立って、歩くロボットのことだな。この集落にはいっぱいいるみたいだ。あそことか・・・」

 はそういって、下ろしていた近くのロボットを指差す。

「01DFAC・・・」
「あそことか・・・」
「ABOCDD・・・」
「あそこにもいるな」

 先生2人はへぇ〜、と感心していた。
 アティにいたっては「のいた世界は科学が発達していたんですねぇ・・・」感心したかのようにつぶやいている。
 ここにはかなわないけどな、とは答えた。

「ここのみなさんは工作が、とっても得意なのですよ」

 とっても、の部分を強調するようにマルルゥが言った。

「マルルゥ、あれはなんだい?」

 レックスがそういって指差す。そこには漏電した電気や、オイルであろう液体がたまっていた。マルルゥはあれはゴハンを食べてるですよ、と説明した。
 ゴハンというよりは、補給だと思うが。

「ここの護人さんはメガネさんですね。メガネさんは向こうのお家にいるはずですよ。お人形さんといっしょに暮らしてるです。さあさあ、先生さんたち、ガクランさん、会いに行くですよ」
「ちょっ、マルルゥ!?」

 さあさあ!などと言って、マルルゥはの背中を押した。



「ようこそ、護人として、貴方たちの訪問を歓迎するわ」
「いえ、こちらこそ招いてくださって感謝してます」

 お互いに挨拶を交わし、自己紹介をする。
 彼女―――アルディラは一見、人間のように見えるが、れっきとしたロレイラルの住人らしく、『融機人(ベイガー)』という種族なのだという。
 その種族名のとおり、彼女の剥き出しの肩からは機械らしきものが覗いていた。


「ご覧のとおり、ここの住人の大半は機械たちばかりよ」

 会話ができるのは私とこのクノンくらいね。

 そう言って看護服らしき服を着た、女の子を指差す。
 彼女はクノンといって、なんでも看護機械人形(フラーゼン)というのが正式名称らしい。
 アティが呼び捨てにしてくださいね、と笑顔で言ったのだが、クノンは「かしこまりました、アティさま」と答えると、アティは苦笑いをした。

「この子に人間的な反応を期待しても無駄というものよ、仕様の問題だもの」

 アルディラがそう説明すると、申し訳ございません、とクノンが表情を変えずにおじぎをしつつ謝罪した。

「機械がしゃべれるんだから、十分すごいと思うけどな、俺は」
「そういえば、貴方は別の世界から来たらしいわね」
「ああ、俺のいた世界ではクノンほどではないけどロボットの開発をはじめたところだったんだ」

 クノンははたから見れば、人間とほぼ同じに見えるよ。
 はそうクノンに言うと、「ありがとうございます、さま」と相変わらず無表情のまま行儀よく首を垂れた。


「積極的ではないけれど、交流そのものを拒むつもりはないわ。できる限りなら協力してあげる。」
「ありがとう、アルディラさん」



 アルディラたちと別れ、集いの泉へと進路をとる。



 その途中、なにやら奥へと続く道をみつけた。その奥には、大きな輪のようなものがうっすらと見える。

 マルルゥに尋ねてみると、言いにくいことなのか口篭もってしまったので、奥へ行こうとしたところをヤッファにとめられてしまった。
 かれによれば、なんでもこの先は戦死した人たちの亡霊や、はぐれになった召喚獣がうろついているらしい。
 危険だから、と言う理由で立ち入り禁止にされてしまった。
 はぐれならまだしも、亡霊なんかいるんだなぁ、などと思いつつ、は集いの泉に戻ろうとする集団を追いかけたのだった。






「さて、あらためて代表全員が集まったところで、話しがあるわ」

 集いの泉に戻れば、各集落の護人たちは全員そろっており、こんな言葉をアルディラが切り出した。

「鬼妖界と幻獣界の集落で、以前から問題になっていた件についてよ」



 彼女の話によると、なんでも夜のうちに2つの集落へ入り込んで食べ物を盗んでいて、その犯人が人間らしい、といった内容だった。

「それで、その2つの集落の食糧問題は平気なのか?」

 一応蓄えはありますから、との問いにキュウマが答えた。

「最初は貴方たちが犯人ではないかと思いましたが・・・」

 キュウマの言葉に思わず息をのむ。
 彼はアティ、レックス、の順番で見回すと、頬を緩めた。

「・・・時期が一致しません。奴らは、それ以前から出没しているのです」
「当然、先日に戦った帝国軍というグループでもない・・・」
「この島に私たち以外の人間が・・・」

 アルディラのつぶやきにアティが驚く。
 レックスも同様に驚いた顔をしていた。

「君たちは嵐に遭うことでこの島に来たんだったら、同じようにここに流れ着いている人間がいても、なんらおかしくないと思うけど・・・」

 昨日の夜の、彼らみたいな。
 は実際にありうるだろう話をした。



「いずれにしろこのまま放置しておくわけにはいきません。所在を見つけ出して、対処せねば・・・」
「つまり、俺たちにその野党討伐に参加してほしい、ってことだな?」

 そのとおりです、とキュウマが答えた。



 レックスとアティは

 「「わかりました」」

と言って護人たちの頼みをあっさり了解してしまった。
 は2人が反対しても参加するつもりだった。
 人のことをとやかく言うつもりはないが、つくづくお人よしだ、と彼はそう思った。









「なるほどな、事情はわかった」

 腕を組むカイルに、アティがごめんなさいと一言。
 彼女にしてみれば、どうしても断れなかった、のだそうだ。

 断るそぶりすら見せなかったのに・・・などとは内心つぶやいていたが、もちろん彼らは知ったことじゃない。


 船に戻って護人との話の内容を話をすると、生徒達はお人よしすぎるよ・・・と肩を落としていた。
 スカーレルがそれをなだめている。

「なあ、先生よ。連中は戦うつもりで行くわけじゃないって言ってたんだな?」
「うん。それは間違いないよ」

 この場にいる全員が戦いになるようなことは避けたい、と考えているようだ。
 もちろん、も同じように考えている。
 争いのない世界から召喚されたからか、

「そこに希望をつなぐしかないすね」
「なるようにしかならない、ってことだね」

 レックスのの返答にヤードとソノラが場をまとめた。
 ソノラはそのまま、集落はどうだったか、とレックスたちに詰め寄っている。もちろん、カイルやスカーレルもいっしょになっている。




 2人が慌てていれば、扉が開く音と、召喚獣たちの声が耳に入ってくる。。

 4人の生徒たちが船長室を出て行ったようだ。
 レックスとアティは互いに顔を見合わせて、

「ごめん、みんな。ちょっと待ってて!」
「すみません!」

 慌てて船長室を出て行った。



「あ、逃げた!?」
「どうしたんだ?あいつら。急に慌てたりして」

 カイルの問いにスカーレルが知らん顔をして「さあ?」と答える。ソノラはソノラで普段の口癖のようにぶーたれている。


「・・・仕方ないな。俺が教えてやるよ」

 はふう、とため息をつきつつ集落の様子を話て聞かせることにした。













「・・・・・・」
「どうしました?」
「ごめんなさい。すこし、考え事をしていたから」



 翌朝、レックスとアティは少し沈んだ顔をしていた。
 どうやらあの後生徒たちを探したが、見つからないままずっと話せずじまいだったらしい。
 ソノラが同行する人数について、護人と話をしているうちに、カイルたちのそれとよく似た船が見えてきた。
 素人目でもわかるくらいに、その船はずいぶんと破損していた。



 カイルたち海賊組は船を見て呆れた顔をしている。
 正確には、船についている海賊旗に目がいったようだ。

 目に見えてわかる雰囲気の変わりように思わず、は近くにいたスカーレルに話し掛けた。


「どうしたんだ?」
「あの旗よ・・・」
「旗?」

 スカーレルの言葉に全員がいっせいに風になびく海賊旗をみる。




「なんだ・・・あれ?」
「「ひ、ヒゲつきドクロ???」」
「ふざけた旗ですね」

 が首をかしげ、レックスとアティが旗に描かれているドクロに疑問の声をある。
 キュウマは嫌悪感をあらわにしつつ、眉をつりあげて吐き捨てるように言った。

「・・・あんな趣味の悪い旗を飾る野郎はこの海に1人しかいねえ・・・」
「知ってるのか?」
「うん・・・まあね・・・」

 はあ・・・
 けだるそうにカイル一家は肩を落とした。






「「「・・・・ジャキーニだ・・・・」」」










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