「しかし、のいた世界って、そんな堅苦しそうな服、着てるワケ?」
「ん?いやいや、これは俺が通っていた学校の制服だよ」

 せっかくメイメイから服をもらったというのに、はなぜか元の世界の服を着ていた。
 ちなみに、今は船のみんなと浜辺で昼食中。

 そんな中で放たれた突然のスカーレルからの問いだった。

「「「「セイフク?」」」」

 まるで打ち合わせをしたかのように単語を口にするカイル一家。
 あまりの息の合いっぷりに思わず拍手を彼らに送った。

「それは・・・・」
「制服って言うのは学校とかで指定されている服で、毎日その服を着て生活するんですよ」

 が答えようとしたところで、アティが割り込んで答えた。
 彼女が言い終わってからは「そういうこと」と一言つけるだけになった。

「懐かしいですねぇ、レックスもそう思いませんか?」
「ああ、そうだね・・・の着てる服は制服だったんだね。見たことないからわからなかったよ」
「学ランって言うんだよ」
「「「「へえーーーっ」」」」

 海賊達はやはり申し合わせたように同じ言葉を同時に放ちつつ、しきりに感心している。
 先生たちは先生たちでなにやら懐かしそうにしていた。



「そうですかぁ〜、ガクランさんっていうのですね」
「・・・?」



 近くから声がする。声のほうへ振り向くとそこには緑色が飛んでいた。





     
サモンナイト 〜紡がれし未来へ〜

     第06話  島内探索 2





「よ、妖精・・・」
「そうですよぉ、マルルゥはルシャナの花から生まれた妖精なのです」

 この世界はなんだかもう何でもアリな気がしてきた。
 マルルゥの名乗る緑の妖精はこの場にいる全員を見回し、言った。

「それでですねー、ここに先生さんって人はいるですか?」
「先生さん・・・ああ、多分俺たちのことだね」
「そうですね」

 マルルゥの問いにレックス、アティの両名が名乗りをあげると、彼女は両手をぽんと合わせて安心したかのように2人を見つめた。




  「あややぁ〜、すぐに会えてよかったですよ〜」





  「集落に?」
  「はいです。先生さんたちに来てもらおうって」

 話を聞けば、マルルゥ彼女は島の中を案内してくれるらしい。
 彼女の話に全員が聞き入った。

「護人さんたちに頼まれてマルルゥがお迎えにきたですよ」
「なるほどね。同じ島の仲間同士、親睦を深めようってわけか」
「そのとおりです〜、さすがガクランさんですね〜」

 ・・・誉められた気がしないのは気のせいだろうか。

 そんなこと考えているうちに先生2人は行くことになったらしい。

「カイルさんたちはどうしますか?」

 アティが一家に尋ねるが、彼らの表情を見る限りではそれほど行く気はないようだ。
 やはり、まだ割り切ることが出来ないでいるのだろう。
 昨日今日で初めて出会った者たちがすぐに仲良く出来るとは限らない、というところだ。

「あー、俺らはやめとくわ。船の修理もしないといけねェし」
「センセたちで言ってきて頂戴。アタシたちはあとで聞けばいいから」
「そっちのみんなはどうする?」

 レックスは4人の生徒たちのほうへ向かって尋ねた。
 彼らも同様に首を横に振った。

「いい・・・」
「結構ですわ・・・」
「結構です」
「私も・・・遠慮します・・・」
「あやや、それは残念です・・・」

 生徒たちの答えにマルルゥは肩を落とす。
 「じゃあ、いくですよーっ」と彼女が音頭をとったところで、が声をかけた。

「俺も行くよ。こっち喚ばれてからずっと、バタバタしてたから、風雷の郷以外には行ってないんだ。だから挨拶がてら、さ」
「それじゃ、ちょっと行って来ますね」


 は先生たちとマルルゥで各集落を目指すことになった。






「うーん、みんなもくればよかったのに」
「仕方ないよ。行きたくないって言ってんだから。無理に行かせるのはよくないしな」
「マルルゥちゃん、ごめんね。せっかく迎えに来てくれたのに・・・」

 申し訳なさそうにアティが頭を下げた。
 俺とレックスも居たたまれなくなって顔をしかめる。

「気にしないでいいですよ、おあいこですから」
「「おあいこ?」」
「マルルゥもですね、お友達を誘ったですよ。でも、みんな、ついていかないよって断られちゃいました」

 マルルゥも苦笑して言う。

「ま、それが生き物の習性ってやつだな。お互い初対面だと妙に警戒と言うか、腹の探り合いというか・・・よそよそしくするだろ?あれと同じだよ」

 はそんな話をした。

「ま、お互いに恥ずかしがってんだよ、きっとな」

 まとめるとそういうことだ。それを聞いて先生2人は苦笑した。

「でも、きっとすぐ仲良くなれますよ」
「そうだね・・・ところで、はもうこの世界にはなれたかい?」

 レックスが急に話をに振り、は彼を見て少し考えるしぐさをして、

「そうだな・・・船のやつらはいい奴らばかりだし、島のみんなとも仲良くなれそうだし。マルルゥが出てきた時点でもう何が起きても驚くことはほぼないと思うよ」

そう答えたのだった。
 正直なところ、彼自身まだ自分がここにいるという実感が湧いていない。
 実はこれは壮大な夢なのではないか?と頬をつねってみては痛い思いをすることもしばしば。「なんとかなるだろ」と頭では思ってはいるものの、身体がまだついていこうとしていないのだった。

 急に自分の話が出たせいか、マルルゥは少し戸惑って「マルルゥは変じゃないですよー!」とか叫んでいる。
 アティは嘆いているマルルゥをなだめながらの話を聞いていた。


「住みやすさとしては、かなりいい場所だと思う。ここは空気もうまいし、俺のいた世界とは大違いだ」
「空気?」
「ああ、俺の世界は科学が発達していてな。空気が汚れてるんだよ」

 を除く3人、特に先生2人は興味津々と言った様子だ。



 なんやかんやと話しているうちに、集いの泉の前にたどりついた。


「ここですよ〜」


 マルルゥを先頭に、近くの建物の中へ入っていく。その建物は護人4人と会合をしたときのものだった。部屋に入ると、そこにはヤッファとキュウマがいた。

「ご足労、恐縮です。レックス殿、アティ殿、殿」
「へいへい、ご苦労さん」

 キュウマが軽く頭を下げた。ヤッファはダルそうにしながら話す。
 そのあと、マルルゥの方へ向き直ると

「ほれ、マルルゥ。あっちに行ってろ」
「えぇー、でもぉ・・・」
「いいから、シッシッ! 行った、行った」

 マルルゥを追い出した。


「ううう、先生さんたち、ガクランさん。じゃあ、また後で〜」
「うん、あとでね」

 マルルゥは名残惜しそうにしながら部屋を出て行った。



 マルルゥが出て行き、少しの沈黙が流れた後、アティが口を開き、頭を下げた。

「まずは、ありがとうございます・・・島のみんなに、説明をしてもらえたおかげであれ以来、こっちは平穏そのものですよ」
「礼は不要ですよ。無駄な戦は、我らも望んではいません」

 キュウマが笑みを浮かべて答えた。

「けどよ、中にはオレらの話を聞こうとしなかったり、言葉自体が通じない連中だっている」

 ヤッファは脅しているかのように言った。
 なにがあるかはわからないから、注意だけはしておけと遠まわしに忠告をしてくれているのだとは考えていた。
 キュウマもヤッファに次いで

「そういった者たちが、貴方たちを襲う事もあるでしょう。ゆめゆめ油断はしないでください」

と言った。

「ああ、わかったよ」

 が代表して答えると、レックスとアティもうなずいた。
 それを見たキュウマが本題を口にした。

「さて、彼女から聞かされているとは思いますが、貴方たちをお呼びしたのは一度、我らの郷を見てもらいたかったからなのです」
「・・・建前はよしときな、キュウマ。こいつらの事を、他の連中に見せるってのが本音だろうが」

 キュウマの言葉にヤッファが口をはさむ。
 3人は首をかしげた。
 キュウマは改めるように「言葉だけでは、説明しきれない部分もあるという事です」と説明付けるように言った。

「貴方たちが、本当に島の仲間として、受け入れられるのか、否か・・・納得してもらうには、じかに皆の者と話をしてもらうしかないのです」
「道理だな。それが普通だよ。それに、俺は各集落への挨拶と親睦を深めることが目的でここへ来たわけだし」

 が明るくそういうとキュウマは「申し訳ありません」と言って一礼。

「そうだな。それに一度島のみんなと会っておきたかったし、楽しみだよ」
「そうですね」

 レックスとアティもそうキュウマに声をかけた。

「かたじけない・・・」

 キュウマは今一度、深く頭を下げるのだった。

「他の護人たちはそれぞれの集落で、あんたらを待ってる。連中に挨拶したらもう一度此処に戻ってきてくれや・・・細かい話は、それからだ」

 ヤッファがやはりダルそうに頭を掻きつつ3人に伝えた。

「はい、わかりました。それじゃ、行ってきますね」

 キュウマとヤッファにそういって部屋を出た。
 集落は4つ。どの集落から悩んでいると、目の前を緑色が飛び交い、声がかけられた。

「先生さんたち、お出かけですかー?」

 それは先ほど別れた緑色の妖精、マルルゥだった。

「皆さんのところに行くなら、マルルゥがご案内しますですよ?」
「それじゃ、頼むよ」
「よろこんでー♪」

 断る余地は、なかった。
 マルルゥの申し出に快諾すると、彼女ははうれしそうにして集落の方向へ飛んでいった。



 それに追いつくためにすこし駆け足であとを追ったのだった。








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