は朝早く屋敷を抜け出し、浜辺に来ていた。
近くには船も見える。
ちなみに屋敷から護身のためにと刀を一振り、拝借していた。
もちろん、無断で。
なぜ浜辺にいるかといえば、普段寝起きが悪いから日本にいたときも目を覚ますために毎朝早起きをして、町内を走ってまわっていた。
しかし、ここは異世界。自分の知る街ではないので、船のあるこの浜辺にきたというわけである。
朝もまだ早いため、少々霧が出ている。
「うーーん・・・っはあ」
ぐぅ〜っ、と大きく伸びをする。
「おーーっ、お前さんは・・・」
近くで声がした。そちらへ振り向くと、そこには金髪でガタイのいい兄さんが笑顔で立っていた。
サモンナイト 〜紡がれし未来へ〜
第05話 島内探検 1
「たしか・・・カイルだったよな?」
思考をめぐらせ、彼の名を呼ぶ。
「ああ!カイルだ。海賊カイル一家の元締めをやってる」
朝は早く、ここは浜辺。
誰か起きていても不思議じゃなかったのだが、まさか彼が起きてくるとは思いもしなかった。
「・・・で、こんなとこでなにやってんだ?」
「それはこっちが聞きたいくらいさ。なにやってたんだ?ちなみに俺は朝の鍛錬だ」
そういってカイルは腕まくりをし、その腕を自分の胸の前へ持ってきてグッと拳をつくる。
「まあ、俺もカイルと似たようなもんだな。元の世界で、いつも朝は早く起きて走りこんでたからな」
朝、寝起き悪いもんで。
そう言ってまた大きく伸びをし、さらに話す。
「それから」
そこで一度言葉を切る。
「俺、この船に厄介になろうと思ってさ。まあ、そっちがよければ、だけど」
カイルは一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐに笑い出した。
「はっはっはっは!そうかそうか。いいぜ、大歓迎だ。きっと他のやつらも歓迎してくれるさ」
「悪いな。世話になるよ」
はそういって笑顔を作る。
そしてカイルは笑顔のまま言った。
「よっしゃ、それぞれの鍛錬も兼ねて、組手だ、組手」
「ああ」
そのまま成り行きでとカイルは組手をすることになった。
もちろん、は刀を使わずに。
時間はあっという間に過ぎていった。
一通り終わったところで先生2人が起きていて拍手していた。
カイルが使った力は何でもストラと言うらしく、体の自己治癒力を活性化させて傷を癒すものなのだと彼自身から聞いた。
海賊組で唯一会ったことのなかったスカーレルとも軽く自己紹介をすることで、船の住人はを歓迎した。
4人の子供達をのぞいて、だが。
レックスとアティの生徒である4人の子供達。
何でも帝国という国でも指折りの大富豪で、兄弟らしい。
上から、ナップ、ベルフラウ、ウィル、アリーゼというらしい。
その4人はなんだか怪しいといわんばかりの目でを見ていた。
「よーっし、も船の仲間になったことだし!せっかくだから・・・」
「せっかくだから?」
ソノラの言葉に首をかしげる。
「船の修理を手伝ってもらいまーす!」
というわけで、俺こと は海賊船の修理をしています。
手先は器用ではないので、木材の調達係。
カイルとレックスと一緒です。
ドサッ
「何だ?」
が木材を探していると、彼の目の前に何かが落ちてきた。
見るとそれは赤いチャイナ服にメガネをかけた女性。
なにやら顔色が悪い気がするが・・・カイルが近づき、女性を診る。
「脱水症状だな、こりゃ」
「「脱水症状??」」
彼の診断にレックスとは2人して首をかしげる。
「あうあうあうあう・・・??」
「とりあえず、水だな」
「レックス、確か水筒持ってたよな?」
レックスに尋ねる。出かける前にアティに水筒をもらっていたのを見ていたからだ。
「うん、あるよ・・・」
レックスはそういって水筒を女性に渡す。
すると彼女はくわっ!と目を見開いたかと思うと、水を一心不乱に飲みだした。
すげえ飲みっぷりだな・・・とカイルがつぶやいていた。
「ぷっはぁー!!生き返ったーー!」
女性は水をあっという間に飲み干すと清々しい顔をして言った。
しかし、すぐ顔をしかめ、
「でもぉ・・・お酒ならもっとよかったのにぃ」
とか言っていた。
「そんじゃ、なにかい?アンタはうまい酒を飲むために・・・」
「そうよぉ、ここんとこ、水分とってなかったの。にゃはははは♪」
倒れていた理由を聞くと、それはそれはくだらない理由だった。
メイメイと名乗ったその女性はなんでも、うまい酒を飲むために世界を放浪していたらしい。
レックスも理解したようで呆れた顔をしている。
「干物にならなくてすんだのは、貴方たちのおかげだしぃ・・・うん!ここはやっぱしお礼をしなくちゃだわ!」
メイメイは腕組みをし、何か考えたような顔をすると、すぐに笑顔になってどこかへ歩いていく。
「ついてらっしゃいな♪」
わけがわからないままに彼女についていった。
しばらく森を歩くと、見えてきたのは中華風の建物。
どうやらこの建物が彼女の店らしい。
「まじかよ・・・」
「おいおい、勝手に入っても言いのかよ?」
とカイルはぽかんと口を開ける。驚くのも無理はない。森の奥にこんな建物があるのだから。
なぜこんなところに建ってるのかと尋ねれば、
「それはァ・・・乙女のヒ・ミ・ツ☆」
などとおちゃらけた物言いをして、結局教えてくれなかった。
「いいからいいからぁ〜、早く入ってらっしゃいな♪」
彼女が勝手に了解してしまったため、仕方なく中に入る。
中も中華風でほとんど真っ赤だ。
棚には怪しげな置物がいくつも並んでいる。
「ふむふむ、貴方達に相応しい品物はこれかしら?」
彼女は3人をじーっと見つめると奥から何かを持ってきた。
「おいおい!こりゃあ、新しい海賊旗じゃねぇかよ!」
「俺には教科書・・・」
「先生と海賊には必要不可欠なものでしょ〜?にゃはははは♪」
「俺には・・・服だな・・・」
に渡されたのは、黒を基調としたシンプルなシャツと、紺色のズボンだった。
「はぐれとはいえ、人間なんだから・・・必要でしょ?にゃは、にゃははは♪」
「はあ・・・」
「ありがとうございます、助かったよ。」
「しかし何で俺たちのこと知ってるんだよ?」
カイルの問いに彼女はにやっと笑って、
「にゃはははは〜、それも・・・オトメのヒ・ミ・ツ、よ〜ん♪」
などとのたまっている。
「他の品もお金さえ払ってくれれば、売ってあげるわよ〜ん?」
そういってにゃははと笑う。
「少し気になったんだけど・・・・ここにある道具ってシルターンの占い道具ですよね?」
「そりゃそうよ。だって、あたしの本職占い師なんだもん」
はレックスとメイメイの話を聞きつつ興味本位で店内を見回す。
変な形の道具がある中で、見たことのあるものがあった。確かに占い道具だ。
なぜシルターンの占い道具のはずなのになんで自分が知っているのか、気になった。
深く考えるのは嫌なので、
もしかしたら俺の世界とシルターンはよく似ているのかもしれないな。
ということにしておいた。
「この島じゃお客さんが少ないから、こうやって商売もしてるというわけ」
「そうだったのか」
レックスはその説明に納得していた。
何でも前にその手の本を読んだことがあったのだという。
占ってあげるといってお品書きを渡したので、3人で見てみると手相、人相など、の世界にもあった占い方法がのっていた。
レックスはその中の『運命の輪』というものに目をつけ聞いてみる。
「この運命の輪って言うのは何です?」
「ああ、それはねぇ、簡単な運試しね。ほら、あの的に矢を投げて占うの」
そういって近くにある丸い板を指差す。
ああ、ダーツか。
「うまくあたったら景品がもらえちゃう」
レックスはやってみよう、と言って的の方へ向かっていってしまった。カイルをつれて。
そのときには彼女につつつ、と近寄り、声をかけた。
「なあ、ここに普通のより長めの刀ってないか?」
「刀なら今もっているじゃないのぉ、それじゃあダメなの?」
「ああ、これより長いやつ、こっちでもそうなら一般的なところで太刀って呼ばれてる」
普通のはちょっと使いづらくて。
そう言うと、彼女は無造作に置いてあるひょうたんを手に取ると、中の液体を口に入れた。
おそらく、酒だろう。
「わかったわ〜、今度くるときまでに探しとくわ、にゃはははは♪」
「ああ、よろしくな」
そういってダーツをしにいったレックスたちを見ると、見事に外れていてレックスは肩を落としていた。
「次にやるときはお酒を持ってきてくれると、メイメイさんうれしい」
「はい・・・」
肩を落としたレックスは、うなだれながら返事をしていた。
「次はお酒を持ってきてねェ〜、にゃははは♪」
メイメイに見送られつつ3人は店を後にしたのだった。
「この島って、変わり者が多いのねェ・・・」
「でも、いい人だったよ。ね、?」
「あー・・・そうだな・・・」
船に戻って先ほどの話をする。
スカーレルのつぶやき、レックスが話をに振る。
「アンタらも十分、変わり者だと思うけど」
「そうですわね」
ナップとベルフラウが横から口をはさむ。相変わらず不機嫌極まりない顔をしている。
ウィルとアリーゼは何も言わないが顔がそういっているように見えた。
「しかし、見ただけで三人の職業を当ててしまうとは、驚きです」
ヤードがつぶやく。
「そうだな。何か特殊な力を持ってるのかもな」
「ま、なんにせよ、便利なことに変わりはねえんだしよ」
の意見を聞きつつカイルが笑って言った。
ソノラがその店に銃はあったかとカイルたちに聞いているが、ないと答えると、
「あーーーー、もぉ!はやくあたしに銃を撃たせろぉ!!」
とすばらしく物騒なことを言っていた。
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