ザッザッザ・・・

 自然にできたと思われる獣道を無言で歩く。
 ミスミはなぜか屋敷へ戻ってしまった。

よ、そなた、まだ他の集落の者たちに会ってもおらぬであろう。せっかくじゃからいっしょにいってきやれ」

と、言われたからだ。もっとも、来るなといわれてもいくつもりではいたのだが。
 確かに、目を覚ましてからミスミ様の屋敷以外の建物にすら入っていない。それに、他の護人にも会ってみたいというのが本音だった。
 護人たちのいるだろうどこかへ向かう途中、侵入者とされていた人間の一人、カウボーイハットの女の子に話し掛けられた。


・・・って言ったよね?一体、どうやってこの島に来たの?」
「俺は――――





     
サモンナイト 〜紡がれし未来へ〜

     第03話  護人





「彼は召喚術でこの島に喚ばれてきたのです」
「どこからなのですか?姿形からしてシルターンだと思うのですが・・・」

 キュウマの答えに人間たちが驚き、銀髪の男性が疑問の声をあげる。

「違うよ。それにその他3つの世界とも違うらしいけど・・・」
「そうなると・・・『名もなき世界』でしょうか・・・」
「名もなき世界?」
「ええ、ごくまれに事故や誤召喚という形で喚ばれるのだそうです」

 銀髪の男性が興味深そうにを見つめる。
 彼が言うには名もなき世界から召喚された者はたいていはぐれに分類されるらしい。

「災難だったね・・・」

 赤髪にマフラーを巻いた男性が気の毒そうにこちらを見る。

「ははは・・・」

 はもはや苦笑いをするしかなかった。










「・・・ここです」

 目の前には大きな建物。さらにその奥には、湖が広がっている。

「ここは・・・?」
「集いの泉です。我々護人はここで話し合いを行うのです」

 赤髪でマフラーを巻いた男性がつぶやくとキュウマが簡単な説明をした。
 
 キュウマに続き、建物の中に入る。
 入ってすぐの広い部屋にメガネのお姉さんと毛深い兄さんと、存在感の強い鎧さんが座っていた。
 どうやらこの人?達が他の護人らしい。

 メガネのお姉さんは肩のあたりから機械のようなものが見えている。アクセサリだろうか?





「皆さん、お揃いでしょうか」


 キュウマが声をかけると3人が自己紹介をはじめた。

「機械集落ラトリクスの護人、アルディラ」
「さぷれす・冥界ノ騎士ふぁるぜん」
「幻獣界・ユクレス村の護人、ヤッファ」
「そして、鬼妖界集落・風雷の郷が護人、キュウマ」

「四者の名の下、ここに会合の場を設けます」

 アルディラと名乗った女性が宣言するように言った。
 続いてキュウマが侵入者達にたずねる。

「まずは、貴方たちがこの島に来た理由から教えて下さい」
「実は・・・・」



   ・


   ・・・


   ・・・・・・


 赤髪の男女が自分たちの状況を詳しく説明する。

「なるほどね。つまり、貴方たちは遭難してこの島に流れついた・・・と」

 アルディラがつぶやきながらじっと彼らを見つめる。

「しかし、そんな偶然があるのでしょうか?」

 赤髪の男女による説明により、護人は一応の理解を示したようだ。
 もちろん、2人はのことは省いて話をしている。
 しかし、キュウマは疑いの眼差しで彼らを見つめていた。

「疑われて当然なのですが、事実なのです」

 銀髪細身の男性が答えると、ファルゼンと名乗る鎧さんがカタコトの声をあげた。

「ヨバレタノデハ・・・ナイノカ?」
「ああ、それは俺だよ」

 彼の問いにがなぜか手を上げて答えた。

「え?」


 彼らは召喚されてきた人間がいるというのを事前に聞いていたためか、あまり驚く様子はないようだ。
 はさらに覚えている範囲で自分の今置かれている状況を説明した。

 まず自分の名前、名もなき世界から召喚され、ついさっき目を覚ましたこと、風雷の郷の屋敷に厄介になっていること。

 キュウマも所々付け足して説明してくれた。
 とりあえず彼には危険視されていないみたいだ。
 刀のことも聞かれたが、これはミスミ様に借りたと説明することで事なきを得た。

「ともかく、オレらは船の修理が終わったらすぐに出て行く。そのために必要なものだけ貸しちゃあもらえねえだろうか?」
「悪いけど、協力はできないわ」

 ガタイのいい兄さんが聞くが、アルディラが表情も変えずに冷たい口調で言い放つ。

「「どうしてっ!」」
「あんた達がリィンバウムの人間だからさ・・・お前さんは違うようだが・・・な」

 赤髪の男女の問いにヤッファが答えた。
 心なしかこちらもいささか口調が冷たく聞こえる。

「機界ロレイラル、鬼妖界シルターン、霊界サプレス、幻獣界メイトルパ。この島の住人はそういった世界から喚びだされたものばかりよ。彼みたいな例外もあるけど」

 そういってを見る。
 ああ、例外って俺のことか、とは頭を掻いた。

「どういう意味か・・・わかる?」
「この世界に召喚され、還されることのなかった、はぐれ達の島・・・この島は召喚術の実験場だったんですよ」
「オレたちはな、召喚術の実験台としてこの島に喚ばれてきたんだよ」

 アルディラが問い、キュウマが島の成り立ちを話す。さらにヤッファが追い討ちをかけるように言い放った。

「そして、島ごと捨てられた・・・くくくっ、おかしくて泣けてきそうだろ?」

 ヤッファはうつむき苦笑する。

「そん、なっ」

 銀髪細身の男性が悲しげな顔をした。
 他の者も同様にうつむいている。

「それじゃあ、貴方達はずっと・・・」
「召喚師ハミナ死に絶エタ・・・還ルスベハモウ、ナイ」

 赤髪の女性の問いにファルゼンが答えた。

 何だよ、それ。ひどいじゃないか・・・

 このとき、は素直にそう感じた。向こうで勝手に喚びだいといて、向こうの都合で切り捨てられた。こんなひどい話はない。

「つまり、君らを実験台にした人たちは君らを召喚した、という責任を放棄して出て行った、ってことなんだな?」
「・・・ソウイウコトニナル」

 悲しみと同時に怒りがふつふつと込み上げてくる。
 
 アルディラはうつむいている人間たちにに向き直り、話す。

「だから、私たちは人間を信用したくない。関わりたくもない」
「お互いに干渉しない。それが、妥協できる限界です・・・」

 続けてとどめをさすようにキュウマが言い放った。


「悪く思うなよ」
「・・・・・・」

 ヤッファとファルゼンも同じようにうなずいた。


 を含む人間組は無言で部屋を後にした。
 外は夜が近いのか、すでに薄暗くなっていた。

 俺はこれからどうなるのだろう・・・・ミスミ様のおかげで衣食住は問題なさそうだが、なんとなく彼らが気の毒だ。

 そんなことを考えつつ、集いの泉と呼ばれた建物を離れた。




「君は・・・」

 赤髪の男性が、に話し掛けてきた。

「ああ、さっき説明したと思うけど、俺は って言う。人間だけど一応、はぐれだよ」
「俺はレックス。俺たちは一応船に戻ることにしたけど・・・君はどうするんだい?どうせなら同じ人間同士だし、いっしょに来てくれてもいいと思うんだけど」

 いいよね?レックスは自分の仲間たちを見回している。
 すると全員が全員、首を縦に振っていた。

 どうやら自分も連れて行ってくれることにいつのまにか決まっていたらしい。
 他の人たちも心なしか期待しているような目でを見ている。

「・・・気持ちはうれしいけど俺は一度、鬼妖界の集落に戻るよ。刀も返さなきゃだし。でもせっかくだから、明日にでも船のほうに行かせてもらっていいかな?」
「ああ、大歓迎だぜ!」

 の問いにガタイのいい兄ちゃんがニカッと笑って了承してくれた。

 全員と軽い自己紹介をし、船のおおまかな場所を聞いた。

 赤髪マフラーがレックス、赤髪白帽子がアティ、ガタイのいい兄ちゃんがカイル、カウボーイハットの女の子がソノラ、銀髪細身の男性がヤードというらしい。

 レックス、アティは元軍人で家庭教師。船に4人の生徒がいるらしい。
 カイル、ソノラは何でも海賊でヤードはその客分なのだそうだ。






「まいったな・・・」

 レックスたちと別れ、は頭を掻いた。

 これは、夢ではない。現実だ。
 まさか、こんなゲームに出てきそうな世界に来てしまうことになるとは。
 ・・・まぁ、帰れないならここに居場所を作るしかないよなぁ・・・
 ・・・がんばれ、俺。

 は集落に戻るまでの間、自分に向かってそう言い聞かせ続けていた。

 そのときだった。









「!?」










 耳を貫く爆音。







「なんだ!?」





 その爆音は突然のことで、一瞬にして島に響き渡った。
 周りを見渡すと、視線の先でかなりの量の煙が立っている。


「あそこかっ!」


 いても立ってもいられなくなり、煙の方へ向かって駆け出した。








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