「・・・え、ま・・・よ?」

 誰だ・・・

 徐々に意識が覚醒していく。
 首から下が布のようなものに包まれているような感覚。

 あぁ・・・布団に入っているのか・・・


「お・・!いきて・・・か!?」
「これ・・・、やめ・・・」

 聞こえていくる2つの声。
 1つは声変わりをしていないだろう子供の声。
 もう1つはその母親だろうか、女性的な落ち着いた声だった。

「う・・・ん、ここは・・・」

 朝いつものように目を開け、体を起こす。
 周りを見回すと、そこはよく見慣れた畳の部屋。
 しかし、目の前にいる人物は日本人ではなくて・・・





 額からツノが生えていた。





     
サモンナイト 〜紡がれし未来へ〜

     第01話  起床


「おお、起きたようじゃな。大丈夫か?」 

 身体を起こしたに、ツノをはやした女性が声をかけた。
 先ほど、まどろみの中で聞こえた声と同じもの。
 ツノのことはとりあえず記憶の片隅に追いやり、彼女に笑みを向けた。

「よくわからんが助けてくれたみたいで。ありがとうございます」
「ふむ。元気そうでなによりじゃ。ここは鬼妖界の集落『風雷の郷』の屋敷じゃ」

 きようかい?
 わけのわからない単語に首をひねっているうちに、女性が部屋を出て行った。
 この場には今、寝起きのと、カミナリみたいな触覚のような髪の毛を生やしたやんちゃそうな少年が一人。
 彼は、を「じぃ〜〜〜っ」なんて効果音を入れつつ見つめている。

「・・・ええっと」
「どっからきたんだ!?」

 話し掛けようと声を出すと、同時に放たれた彼の声が重なった。
 どうぞ、と一言。

「・・・アンタ、どっからきたんだ?」
「・・・は?」

 意味がわからない。
 自分でさえこの状況を把握していないのに、そんなこといわれても困る。
 なかなか答えないに、怒鳴るようにもう一度、少年は言葉を発した。

「だからどこからきたのかって聞いてるの!」

 う〜ん・・・
 しばし口元に手を当て、思考をめぐらせる。
 とりあえず、は自分が今までいた(はずの)場所を、答えにしてみた。

「たぶん・・・『日本』というんだが・・・」
「にほん・・・・?」

 どうやら彼は日本のことを知らないらしい。

「あぁ、そういえばまだ名乗ってなかったな。俺は だ。よろしくな」
「オイラはスバル。鬼の子だい!!」
「そうか、スバルって言うのか・・・鬼の子なのか・・・って、鬼っ!?」

 スバルの返事に、はつい声を荒げてしまった。
 彼は驚いたような顔をした後、首をかしげる。

 落ち着きを取り戻そうと、数回の深呼吸。

「ご、ごめん・・・大きな声、出しちゃって」


 ここには鬼がいるようだ。おそらく、先ほど部屋を出て行った女性も鬼なのだろう。
 ・・・ツノ生えてたし。

 鬼とはもっと恐ろしいものだと思っていたのだが、どうやらそれは間違いだったのだろうか。

「腹を空かせているであろうと思うてな」

 声のした方へ向くとそこには先ほど部屋を出て行った女性が手に陶器の器を持って立っていた。器からは、湯気が立ち込めている。
 目が合うと、女性はやんわりと微笑み、の正面に座った。

「自己紹介が遅れていたようですいません。俺は です。」
「わらわはミスミじゃ。郷のものには鬼姫と呼ばれておる。粥を持ってきたゆえ、食べるといい。」

 礼をいい、湯気のたった粥を食べる。
 ・・・これはなかなか・・・

「それで、 よ」
「・・・はい?」
「そなたは先刻『ニホン』から来たといっていたが本当なのだな?」

 もともと苗字で呼ばれるのは苦手だったのだが、まさかフルネームで呼ばれるとは思わなかった。
 噴出しそうになった粥を押しとどめ、彼女の質問に対してはこくりとうなずいた。

「むぐむぐ・・・とはいっても来たというより気づいたらここにいたんですけど」

 は苗字なんです。できればと、名前で呼んでくれるとうれしいんですが・・・

 最後にそう付け加えて苦笑い。
 彼女はそれを聞くと満足そうにうなずいた。

「ふむ、ご老体の言ったとおりじゃったな・・・」
「ご老体?」
「そなたのように異世界から喚ばれてきたニンゲンじゃ」
「よばれて?」

 どういうことですか?とたずねようとしたそのときだった。
 彼女のの横に突然、銀色の髪を一つに結わえて簡単な鎧を着込んだ男性があらわれた。
 背中には刀らしきものを背負っている。

「ミスミ様。ただいま戻りました・・・あなたは・・・」
「おおキュウマ。ちょうどよかった。・・・こやつはキュウマといってこの郷の護人をしておる。キュウマ、彼は先ほどそなたが連れてきたニンゲンでという」
「そうですか。目を覚まされたのですね、自分はキュウマ。鬼妖界シルターンの集落『風雷の郷』の護人をしています。」

 新たに登場した単語がいくつか。
 そのすべてに対しては首をかしげた。

「もりびと・・・?」
「簡単に言えば集落のまとめ役、のようなものですよ」
「・・・まぁいいか、とりあえず助けてくれてありがとう。俺は ってよんでくれな!」

 笑顔をつくり、キュウマに礼をいう。彼は表情をやわらかいものに変えて「いえ・・・」と答えた。見たところ、彼は話が得意な方ではないらしい。


「ところで、さっきからよばれた、とかしるたーんがどうとかっていったい何なんですか?」


 さっきから気になっていたことを二人に聞くことにした。






←Back   Home   Next→

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送