「くそ・・・」

 この俺が・・・ヤツらを殺せない・・・?
 子分たちをやられて、悲しくないだと・・・?

「クソッ、クソッ、クソッ、クソッ、クソォ―――――ッ!!!」

 せっかくヤツを1人残して、ツブしてやろうと思っていたのに。
 その場に崩れ落ちるように膝を尽き、両手がつぶれるのではないかと思うくらいに強く。
 俺は地面に拳を叩きつけた。

 それから、どれだけの時間が経っただろう?
 いくら考えても、答えは出ない。

「俺にフラットの連中が殺せないだと・・・? 子分たちを役立たずだと思っているだと・・・!?」

 周囲に疎まれ、蔑まれてきた自分を慕ってくれた子分たちの姿を視界に入れて。
 「居場所がねェなら奪ってやれ」
 そう俺が告げた結果がコレだ。


 俺は・・・っ、こいつらを今まで役立たずなどと思ったことは一度だってねェ!


 そのはずなのに。
 なぜ、俺の顔は笑っているんだろう?

 仲間をやられて、悲しいはずなのに。
 なぜ、俺は笑っていられるのだろう――?



 ・・・ヤツの言うとおり『役立たず』だと思っていた?



「・・・っ!!」

 ふと、頭をよぎった考えを振り払うように首を左右に強く振ると、再び血塗れの拳を振り上げる。
 ガン、と。
 鈍い音がスラムじゅうに響き渡ったのだった。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    閑話  居場所求める者





「あアあAアあaぁァぁaぁァぁ――――ッ!!」

 もう、わからない。
 なにもかも、わからない。

 ただわかるのは、『負けたくない』という強い想いだけ。




 俺は、負けねェ。
 オレは、マけねェ。
 おレハ、まケねぇ。

 ・・・負けねェっ!!!!










「ならば・・・我が力を授けてやろう」










 唐突に・・・まるで闇からにじみ出てくるように。
 その男は、現れた。

「なん・・・だと・・・?」

 長い髪を後ろに流し小さな丸メガネを鼻にかけた、召喚師風の男。
 年齢的には、50から60といったところだろうか。
 腰の部分に杖が提げられているところを見ると、この男は間違いなく召喚師なのだろう。

「力が欲しいなら・・・その手に取るのだ」

 こちらの言葉を聞かず、差し出されたのは紫色の球体だった。
 拳大の大きさで、淡い光を帯びている。

「この宝珠を用いれば、貴様の望んだ『召喚術』を行使できよう」
「・・・!?」

 惹かれた。
 目の前に、確たる力がある。
 という男を、こ憎たらしいはぐれ野郎どもを。
 ひいてはフラットのヤツらや、この街の領主だろうがなんだろうが。
 すべてを打倒する力が、ここにある。

「・・・・・・」

 手を伸ばしかけて、止める。
 ・・・何か、イヤな予感がする。
 自分が自分でなくなってしまいそうな、引き込まれるような力。
 手にとってしまえば、後戻りはできないと。
 俺は俺なりに、そう感じた。

「・・・どうした、いらんのか?」

 待望の“力”だぞ?
 この世のすべてを支配する、最強の力だ。
 貴様は目の前の好機を棒に振るというのか?


 ・・・・・・


 決めた。
 なりふりなど構っていられない。
 俺のプライドを、持てる力を。
 俺のすべてを潰した、ヤツを倒すためならば。
 悪魔だろうが魔王だろうが、受け入れてやる。

 すべては自分の“敵”を排除し、“自分だけの居場所”を得るため。

 俺は―――その手の球体を・・・掴んだ。
















「そうだ・・・それでいい。我が名は■■■■■■。貴様の後押しをする者だ」

 俺の手の上で、紫の宝珠は光を強める。


 ・・・すげぇ。

 ・・・すげぇすげぇすげぇすげぇすげぇ!!


 持っているだけで、力が・・・絶対の自信が湧いてくる。

「その宝珠は『魅魔の宝玉』。サプレスのすべてを統べる、最高のサモナイト石だ」
「ははっ・・・はハはっ。ひゃはっ・・・ヒャはハはハはハはハハははっ!!!!」

 最高だ・・・最高の気分だ。
 これなら、負けねェ。
 あのクソ野郎にも、はぐれ野郎どもだって。
 派閥の連中にすら、負ける気がしねェ!!





 もう、止まれない。





 否。





 止まる必要はない。

 すべては、居場所を得るため。
 俺は誰が何を言おうとも・・・その歩みを止めることはない!!





























「ククク・・・それでいい。我が願いを成就してくれることを祈っているぞ、我が――よ」

 自分の思うとおりにことが進み、嬉しそうに男は笑う。
 彼が何を願っているのか、何をのぞんでいるのか。





























 今はまだ、わからない―――































と、いうわけで閑話2。
堂々登場。
バノッサが魅魔の宝玉をもらう場面ですね。
先日書いたオリジナルエピソードの内容は、こんなところでも役に立ちました。



←Back   Home   Next→

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送