『お前たちの力で守護者と戦い、誓約者としての資格を示すのだ』
『我らがこの世界に託した力は、守護者たちによって守られてきた・・・』

 トーンの低い声が響き渡る。
 一面蒼の世界の中に、一点だけ真っ白に輝く部分がある。
 幻想的な世界。
 初めて視界に納めたときは、その美しさに目を奪われたものだった。



『我がエルゴは、朽ちてゆく鋼の棺にて』



 比較的高めのトーンの、ロレイラルのエルゴの声。



『我がエルゴは、雪深き幽谷(ゆうこく)の社にて』



 トーンの高い女性的な、シルターンのエルゴの声。



『我がエルゴは、剣の竜の棲む峰にて』



 女性的な声だが、落ち着きのある雰囲気をもつメイトルパのエルゴの声。



『そして我がエルゴは、この光り輝く大地にて守られている』



 最後に低いトーンで、威厳すら感じられるリィンバウムのエルゴの声。



「つまり、守護者ってのに勝てばいいんだな」
「そうすれば、バノッサも止められる・・・」
「あたしたちにしか、できないことなんだよね・・・」

 ハヤト、トウヤ、ナツミの順でそんなことを口にする。
 彼らは、エルゴの王としての資質を、ここで示さねばならないのだ。
 表情に真剣味が増すのも無理はない。

「あの!」

 声を張り上げたのはアヤだった。
 彼女ももちろん、エルゴの王になるために戦う気は満々なのだが、1つだけ気になることがあった。

は・・・を、知りませんか!?」

 幼馴染である、青年のことだった。
 バノッサの召喚術に巻き込まれたとき、彼もその場にいたはず・・・むしろ、自分がずっと一緒にいたのだから。
 この場にいないというのは、おかしいことなのだ。

「俺っちもさっきから気になってたんだけどさ。若師匠、いないんだよな」
「アイツだけまだ城のトコにいるとか、じゃないよねぇ?」
「まぁ、の強さは誰もが認めるところだ。そう簡単にやられちまうことはないだろうが・・・心配だな」

 ジンガ、アカネ、ローカス。
 フラットの中でも、と特に仲の良かったメンバーだ。
 ジンガは自分の師として。
 アカネは、気の合う友人として。
 ローカスは、たまたま知った飲み仲間として。

『心配する必要はない』

 トーンの一番低い、リィンバウムのエルゴの声が響いたかと思うと、



「うぇっ!?」



 そんな情けない声が響き渡ったのだった。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第60話  守護者代行





!?」
「おす。みんな無事みたいでよかった」

 座り込んだまま、片手をひらひらと振ってみせる
 その表情は微笑が浮かべられていた。

「今まで一体どこに・・・」
「俺だけリィンバウムのエルゴに別に呼ばれただけさ。話は聞いてる。守護者と戦うんだろ?」

 アヤの声にそう答え、はよっこらせ、と立ち上がる。
 ぱんぱん、と腰についた汚れを払い、正面に立ち尽くした。

「ちょっとぉ、アンタはコッチでしょうが」
「いや、俺はこっち」
、どういうことは説明してくれないか?」
「簡単ですよ、レイドさん。リィンバウムの守護者代行、ここに参上させていただきました」

 そう口にして、は深々と一礼。
 そんな彼に、全員が瞠目した。


「つまり、俺っちたちは若師匠と戦えと、そういうことか!?」
「そ。君たちの相手は俺1人」
「ちょっ・・・いくらなんでも、アタシらとだけじゃ、ヘンじゃない!」
「何が?」
「何って・・・アンタ1人なのよ? アタシらこんなにいっぱいいるんだよ?」

 アンタに勝ち目ないじゃない!

 そんなナツミの声ににか、と笑って、大丈夫だと口にする。
 は元々、白兵戦・・・集団相手の白兵戦を得意としている。
 以前、数人の仲間と一緒に200人を相手にしたことだってあった。
 今回、個人の能力が逸脱していたとしても、所詮は20数人。
 ・・・戦えないわけじゃない。

「勝ち目がないかどうかは・・・やってみなけりゃわからない」

 は刀を抜き放った。
 ここはエルゴのお膝元。先刻の戦闘の後遺症もないし、絶好調だ。

「やる気なんだね・・・?」
「代行として、だよトウヤ。俺が、みんなの・・・君たち4人の力を見定める」

 その言葉に、全員が武器を手に取った。
 表情から笑みが消え、険しい視線が自分を襲う。

「勝ち負けは判定には入らない。多少の無理はここでなら(多分)大丈夫だと思うから、思いっきりな」

 気をまとう。
 第一開放は使わない・・・ってか使えない。
 体力の半分以上を持っていかれてしまうので、ここぞというときだけだ。
 相手は20人を越えており、それぞれの戦闘能力は高い。
 長期戦への配慮が必要なのだ。





「それじゃ、行くぞ!!」





 誓約者としての資質を試す、仲間同士の戦いが今・・・始まった。







60話でした。
ゲーム中14話本来は鏡・・・
キャラクターたちの鏡像であるリィンバウムの守護者である部分を、夢主にやらせてみました。
仲間同士の戦い。じつは、ちょっとやらせてみたかったんですよね。


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