「お〜い、
「ん?」

 珍しいことに、声をかけてきたのはガゼルだった。
 彼は機嫌よさげにを視界に入れており、後ろにはなぜかハヤトとキールがいる。
 このメンツでに用事とは、何だろうか?

「これから、北スラムへ行かないか?」

 ガゼルは首をかしげるに用件を告げる。
 目的は、簡単に言えば偵察だ。
 バノッサが、どのようにしてあのような力――召喚術を手に入れたのか。
 今までアレほど召喚術に固執していた彼が、誰から授かったのか。

 召喚術を習うだけなら、召喚師から少し手ほどきを受ければ誓約済みのサモナイト石なら召喚術は可能だ。
 しかし、彼率いるオプテュスには召喚師は存在しないから。

「実はな、さっきもちょこーっと行ってきたんだけどよ」
「・・・危ないことするなぁ」
「しょうがねぇだろ。やることなくてヒマなんだからよ!」

 つまり、ヒマをつぶすついでにバノッサの・・・ひいてはオプテュス全体の動向を探りに行こうということらしい。

「しっかり、手がかりを見つけたんだぜ?」
「・・・・・・」

 さすがといえば、そこまでだ。
 彼は自称とはいえ、盗賊だ。情報収集など、お茶の子さいさいといったところなのだろう。

「で、その手がかりってのは?」
。それならこれから俺たちでそこに行くトコなんだよ」

 だからも誘ったんだ、と。
 ハヤトは満面の笑みを見せてそう告げる。
 視線を彼からはずして、キールを見やると。

「・・・・・・・」

 機嫌はよくないようで、仏頂面。
 大方、強引に連れてこさせられたのだろう。
 ヘタしたら、自分も同じようなことになりかねない。

「・・・わかった。同行しよう」

 だからこそ、はそう答えたのだった。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第54話  鍵となる召喚師





 ・・・・・・

 と、言うわけで、やってきました北スラム。
 スラム自体は閑散としていて、人の姿は見当たらない。
 元々ここはオプテュスの縄張りなので、一般人が近づかないのも無理はないのだが。

「あ、まだいるじゃねえか。ほれ、あそこあそこ」

 崩れた建物の影から、ガゼルの指差した方向に顔を向けると。

「・・・・・・」

 そこにはローブを羽織って、フードを深くかぶった1人の召喚師が目に入った。
 表情はフードのせいでよくはわからないが、雰囲気的に男性だろうか。

「召喚師?」
「やっぱそうなんだな。ほらキール、お前もそうだけど、格好がよく似てるだろ?」
「むー・・・確かに」

 ハヤトは目を細め、もっとはっきり姿を拝もうと身を乗り出す。
 見た目で判断するというのはあまりよくないことだと思う。一緒についてきていたモナティも同じことをガゼルに告げていたが。

「どっちにしろ見かけねえ顔だ。怪しいのには変わりがねえよ」

 つけてみようぜ?

 なんて言って、ガゼルは1人召喚師を追っかけてしまった。
 残った4人は顔を見合わせると、

「どうする?」
「どうするも何もない。ここはオプテュスの本拠地なんだぞ? 戻った方がいいに決まってる」
「でも、ガゼルさん行っちゃいましたの」
「・・・さすがに、放っておくわけにはいかなくないか、キール?」

 モナティやの言葉は、的を射ていた。
 敵の本陣とも言えるこの場所で、ガゼルを1人にしておくのだ。
 見つかれば集団リンチは目に見えているから。

「・・・ごめん。僕が悪かった」

 はあ、とため息をついて、キールはとハヤトの前に立ってガゼルを追いかけたのだった。














「あの野郎、どこへ行くつもりなんだ?」

 召喚師を追いかけて10分程度。
 北スラムを抜けて、繁華街を抜けて、街の出口にさしかかってしまっている。
 今いる場所は、整備された道・・・つまり街道だった。
 サイジェントを訪れる人間はあまり多くないという話を以前聞いたことがあったので、街道を歩いている人間がいないことに驚くことはない。

「まさか、この街を出るつもりなんじゃ・・・」
「マジか!? 冗談じゃねえ。出て行く前にとっちめねえと」

 すでにガゼルの中では、前方を歩く彼がバノッサに召喚術を教えた召喚師だと決まってしまっているらしい。
 腰から短剣を引き抜いて、眉間にシワを寄せた。

「落ち着けよ、ガゼル。まだ彼がそうだと決まったわけじゃ・・・」

 がガゼルを押し留めていた、そのときだった。

「いい加減にして、姿を見せたらどうです?」
「「「「!?」」」」

 召喚師から、声があがっていた。
 トーンの低い、男性の声だ。

「人の後ろをこそこそとつけ狙って、それほど私が邪魔ですか?」

 もう、姿を隠していたところで意味はない。
 ハヤトとガゼルは互いにうなずきあい、

「あ・・・」

 キールが止める前に、彼の前に踊り出てしまっていた。
 残ったは、手を伸ばしかけてキールを見て苦笑するが、彼はため息をついて立ち上がる。
 1人で残っていたところで意味はないので、同様に立ち上がっていたのだった。





「出てきてやったぜ。望みどおりな」
「・・・? はぁ」

 出てきたところで、召喚師は呆けたような表情になっていた。
 どことなく、様子がおかしいのだが・・・

(なあ、
(?)
(彼の様子が、おかしくないかい?)

 キールも同じことを考えていたようで、小さな声でそう尋ねてきていた。
 彼から声がかかるなんて珍しいな、などと考えつつも、無言でうなずいてみせる。

(もしかして、俺たちのことじゃなかったとか?)
(・・・・・・)

 あり得ない話じゃなかった。






「えぇと・・・ひょっとして君たちも私をつけてきていたのか?」

 ・・・・・・

 大アタリだった。
 どうやら彼は今いるこの4人ではなく、他の人間を指していたらしい。

「だから、そうだって言ってるだろうがよ!」
「ちょっと待てってガゼル。この人『君たちも』って言ったぞ?」

 も?

 ガゼルがそう口にしたときだった。



「・・・危ないっ!!」



 召喚師から声がかかっていた。
 その瞬間、召喚師と4人の間の草むらから黒ずくめの男性が数人、現れていた。

 その中の1人が投具を投擲。
 はそれに気づくや否や刀を抜き放っていた。

「ガゼル、どけっ!!」
「・・・っ」

 ガゼルも気づいていたようだが、すでに投具は目の前。
 は彼を突き飛ばして、刀で投具を叩き落した。

「な、なんなんだよ、こいつらは!?」

 すばやい動きであっという間に5人を取り囲み、それぞれ武器を手にしている。
 背格好や服装から、暗殺者と言ったところだろうか。



 ・・・・・・



 過去の記憶が蘇る。
 黒ずくめの暗殺者。
 は1人、刀で威嚇しながらも過去に意識を飛ばしていた。

「君たち、早く逃げるんだっ!!」

 召喚師の男性が叫ぶも、前後左右を囲まれてしまいすでに逃げ場はない。
 なので、ハヤトもガゼルもキールも、それぞれに武器を取り出し臨戦体制に入っていた。
 4人で背中合わせに暗殺者たちをにらみつけ、来るであろう攻撃に備える。

「逃げろって言われても、これじゃ無理ですよ!」
「・・・っ、仕方ない。君たち、私の側を離れるんじゃないぞ!」

 召喚師の男性は、そう声を荒げると懐から紫のサモナイト石を取り出したのだった。







第54話でした。
キールとかいます。本来なら、ガゼルと主人公とモナティの3人だけです。
なんだか色々とおかしい部分満載ですが、そこのところはスルーの方向で。


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