「あんたたちってさ。ホント、次から次へとやらかすよねぇ?」
「ふ、不可抗力だ・・・」

 というわけで。
 現在、フラットの居間にいるのはやアキュート以外のメンバーだ。
 さらに、

「悪いのはそこの間抜けなレビットよ! エルカのせいじゃないわっ!!」

 メイトルパは自称メトラル族長の娘エルカ。
 ハヤトとモナティが散歩に出ていたところを出くわしたのだ。
 マーン3兄弟の屋敷の塀をよじ登って入り込もうとしていたから、モナティが危ないと大声をかけたのがそもそもの発端だった。

 なぜ屋敷に入ろうとしたのかと問えば、

「あんたたちには関係ないでしょ?」

 助けてやったのにその言い草はなんだ、というガゼルの主張には、

「勝手に助けたのはそっちじゃない」

 と返ってくる。
 取り付くしまがない、とはこのことである。

「ガキ同士で熱くなるなよ。・・・でだ、ハヤト。お前はどうしたい?」

 結局、拾った(失礼)本人に振られるわけで。

「え、あ、いや・・・ほっとけないだろ。こいつ、はぐれ召喚獣みたいだし」





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第51話  ほっとけない





「ちょっと、勝手に決めないでよっ!」

 エルカはエルカよっ! はぐれなんかじゃない!!

 怒鳴りつけるようにそう口にすると、エルカは居間を飛び出していった。
 自己中というか唯我独尊というか。
 とにかく自分が世界の中心だ、的な勢いだった。

「ちょっ、待てってば!」

 慌てて追いかけるハヤト。
 そんな光景に、

「なんだか、女の子に振られた男の子みたいですね」
「アヤ、あんたね・・・」
「いや、自己中な彼女に振り回されて、最後に捨てられた男かもしれないよ」
「トウヤまで。少しは空気ってモンを読みなさいよ・・・」

 初めて、ナツミがまともに見えた瞬間だった。



「放しなさいよっ! 放してえっ!!」

 玄関のまん前で、ハヤトはなんとかエルカを引き止めることに成功していた。
 彼女の手首を掴んで、両者共に退かず引っ張り合っていたのだけど。


「ただいま〜…って、なにやってんだ、こんなトコで?」


 玄関を開けて入ってきたは目の前に広がった光景に目を丸めていた。
 荒野での稽古の帰りだっったのだが、ただの稽古で生傷を作ることはあり得ない。
 なのに、なぜかの身体には小さな傷が無数についていた。

「あ、おかえり〜……って、どうしたんだよその傷!?」
「ちょっと…っ、放しなさいよ」
「いや〜、参ったね。ラムダと立ち合ってたんだけど、途中ではぐれに襲われてさ」

 一刻も早く開放されようともがくエルカをよそに、は苦笑しつつ頭をかいた。
 血はでていないのだが、どちらかというとアザや打ち身の方が多かったりする。
 なぜかといえば、召喚獣が刃物を持っていなかったから。
 主に打ち身による傷が多いのである。

「で……コレはなんだ?」
「コレって言うなっ!」

 軽くエルカを指差すと、ハヤトにたずねる。
 しかし、当の彼もエルカのツッコミに近い怒鳴り声に苦笑しながら

「エルカだよ。メイトルパの召喚獣」
「召喚師がいないところを見ると……はぐれか」
「はぐれじゃないって言ってるでしょ!?」

 必死である。

「とにかく、あれだけ騒いだんだ。今から戻るのは捕まりにいくみたいなもんだぞ?」

 頭、冷やせよ。

 ハヤトは真剣な視線をエルカに送った。
 には何があったのかわからず、首をかしげるだけだった。














「なるほどね。送還できるのが召喚した人物だけと知らず、こてんぱんにのした上に逃げてきた、と」

 エルカが3兄弟の屋敷に躍起になるわけがここに理解できた。
 同じ召喚師なら、元の世界に帰れると踏んで侵入しようとしたのだろう。
 しかも、それがもう1年以上も前の話だというのだから、厄介な話だ。

「しかし、君たちは拾い物が多いな」

 モナティやガウムに続いて、今度は彼女・・・エルカまで。
 はそんなことをつぶやいて苦笑する4人を見やった。
 今回はハヤトだけの話になるらしいのだが、そんなことは些細な問題だ。

「お前、長いこと旅してきたんだろ? だったら何か、方法を知ってんじゃねえのか?」
「まぁ、知らないわけじゃないけど・・・俺たちじゃ無理だよ」
「はぁ!? どういうことだよ」
「俺も聞いただけなんだが、送還には莫大な魔力とそれぞれの属性と深くリンクされてないとダメらしいんだ」

 に尋ねる前に、正式な召喚師である4人に同じ事を尋ねていたのだが、揃って首を横に振っていたのはついさっきの話である。
 とにかく、1年以上も前から行方がわからなくなっている召喚主を捜すのはこの広いリィンバウムでは無理があるし、仮に見つかったとしても、その召喚師が素直に彼女を送還するはずがない。
 彼女は、召喚主に刃向かって逃げてきてしまっているのだから。

さらに、方法を知っている(オリジナル参照)も詳しい方法は知らないらしく、今の自分たちじゃ無理だと告げていた。

「ハヤト。とりあえず、様子だけでも見てこいよ」
「そうだな・・・ちょっと見てくるよ」

 ソルの提案にしたがって、ハヤトは1人居間を出て行ったのだった。
 同時に、居間に残ったメンバーはどうしたものかと頭を悩ませる。
 保護してしまった以上、放り出すのも気が引けるし、かといって今でさえ食費などもキツキツだ。

「召喚師として、なにかいい方法はないのか?」

 そんなエドスの問いに、

「う〜ん・・・」
「送還は私たちでは無理ですし」
「ってか、そもそもの原因はあのコにあるわけでしょ?」
「一番楽なのは、彼女を解放して何もなかったことにするか、あるいは・・・」

 キールがその後の言葉を口にしようとしたその時。



「どけえぇ〜っ!!」
「うわぁぁっ!?」



 悲鳴の後、どたどたと居間をエルカが駆け抜けて、玄関から外へ出て行ってしまった。
 様子を見に行ったハヤトと、付き添っていたモナティとガウムはどうしたのかというと・・・

『・・・・・・』

 その場に倒れ、伸びていた。













 彼らが目覚めたのは暗くなってからで。
 2人そろって身体に痺れを訴えていることから、それが『魔眼』の影響であるということがわかっていた。
 その情報もクラレットから発されたものだったが、

「簡単に言うと、にらみつけた相手の身体をおかしくさせてしまう光のことですね」

 シンプルかつ的を得た説明をしていた。

 『メトラルの魔眼』。
 メイトルパは『神秘なる瞳』メトラル族しか使うことのできない特殊な力で、過去に『伝説の審眼』を使えた存在がいたという話。
 効力としては、敵をにらみつけることで魔眼を発動。麻痺させることで身体の自由を奪い取ってしまうというもの。
 戦闘では大いに役立ってくれそうだが、エルカの場合はおそらく召喚主もその魔眼で自由を奪ってからこてんぱんにのしてしまったのだろう。

「それよりも、エルカを早く連れ戻さないと!」
「こんな目に遭わされて、お前まだそんなこと言ってんのか」

 呆れたかのようにガゼルはため息をつくと、

「ほっといてくれって言ってんだぜ。そうしてやればいいじゃねえかよ!?」

 軽く声を荒げてハヤトに告げた。
 しかし、ハヤトは退かない。
 以前の・・・リィンバウムに来たばかりの自分と重ねているのだろう。
 もし、ガゼルやエドス、レイドの助けがなければ、4人は今ごろのたれ死んでいたかもしれない。
 それを考えると、

「ほっとけないんだよ!」

 怒鳴らずにはいられなかった。

「俺はエルカを助けたい。ガゼルたちが俺たちを助けてくれたように、彼女を助けたいんだ! ・・・・・・っ!?」

 どたどたと居間を出て行こうとするハヤトの腕を掴んだのはだった。
 出入り口付近に陣取っていたのは、こうなることを予想していたからでもある。
 構わず進もうとするハヤトの腕をしっかと掴んで、進行を防いでいると。

「なにすんだよ! 放してくれ、!」
「・・・落ち着けよ、ハヤト」

 怒気を剥き出しにしているハヤトに冷めた視線を向けて、は彼に告げた。

「外はもう暗い。闇雲に出て行ったところで無駄足を踏むだけだ」
「でも・・・っ」
「大丈夫だって。・・・気持ちはわかる。けど、焦ったところで何も解決はしないもんだ。彼女は目立つ。なにかあれば、騒動になるはずだから」

 それを待って行動するんだ。

 顔を近づけて、ささやくようにそう口にする。
 トウヤやナツミ、アヤも考え的にはハヤトと同じだったのだが、完全にハヤトに先を越されて出鼻をくじかれていた。
 さらにそのハヤトもに引き止められて、出ように出れなくなってしまったいたのだが。

 そのとき。




「きゃああっ!!」




 エルカの声が、フラットに響き渡ったのだった。





「エルカっ!!」

 先だって駆け出すのはもちろんハヤトだ。
 続いてナツミ、アヤ、トウヤと続き、エドスやレイドも居間を出て行く。

「・・・ずいぶん早く時が来ちまったな」
「まったくだ」

 そんな会話を交わしながら、はガゼルと共に居間を出たのだった。









第51話ですね。
ゲーム中のエルカのストーリーがまさかこんなところであるとは思わず、執筆の際にだいぶ焦ってしまいました。
ともあれ、2話構成にしてなんとか書き上げましたが、微妙に文章おかしいですね。


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