「くそっ!!」

 紫の光を纏ったごろつきたちは、人を超えた速度でに襲い掛かる。
 目は血走り、声も発さない。
 ただ、戦うだけの機械と化したような、そんな錯覚まで与えられた。
 振り下ろされる刃こぼれの激しい剣を受け流し、身をかがめて懐に入り込む。

「はっ!」

 相手の腹部を狙って伸び上がるように拳を叩きいれた。
 ゴッ、という鈍い音とともにごろつきの1人が吹っ飛び地面に叩きつけられるが、何事もなかったかのように起き上がった。
 それを唖然と眺めているヒマもなく、次々に襲い掛かってくるごろつきたちを殴り、蹴り、投げ飛ばす。
 しかし、まるで痛みを感じていないかのように起き上がると。再び飛び掛ってきていた。

「なんだよ、これは!!」

 一振りの剣を受け止めるが、左右の脇からもう1人ずつ剣を振るい、の身体を斬りつける。
 人間相手のため本来の戦い方をしなかった・・・いわゆる手加減というものをしていたのだが、これでは埒があかない。
 ・・・だったら。

「動けなくなるまで、斬り伏せる!!」

 気を一点に集めるイメージ。
 刀身に意識を向け、淡いもやを纏わせたのだった。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第49話  憑依召喚術





「クククッ・・・往生際の悪い奴らだぜ。まァ、いい。すぐ思い知らせてやる」

 ここで死んだと思ったほうがマシだったと思うような目になァ!!

 そう告げて、負けたにも関わらず冷笑を浮かべたバノッサは全員に背を向け、炎の中に消えていった。
 彼の放った召喚術によって燃えさかる沼地で、消えていった先をただ凝視していたのだが。

「バノッサが使ったのは・・・」
「あぁ、召喚術だ。間違いない」

 いち早く我に返ったクラレットとキールが、そう口にした。

「しかも、よりによってサプレスのだよ・・・」

 彼の持っていた玉が紫の光を放ったとたん、今のこの状態なのだ。
 紫の光は、サプレスのもの。
 つぶやいたカシスも驚きを隠せずにいるようで。


「あの玉・・・どこかで・・・」


 ソルの言葉は、燃えさかる木の音で掻き消されたのだった。








「助けられましたね。ありがとうございます」
「お互い様だよ」

 バノッサの召喚術が放った轟音を聞きつけてやってきたフラットのメンバーたちが参戦してくれたおかげで、彼との戦いは事なきを得た。

「決着はついたのか?」

 そんなローカスの問いに「その必要はなくなった」とラムダが簡潔に告げた。
 ガゼルはわからない、といった表情をしているが、ペルゴに一言言われて押し黙る。
 もっとも、その一言でローカスにはほとんど理解できてしまったようだが。
 とりあえず言えることは、『もう戦う必要がなくなった』と言うことだけだった。

「世話をかけたな。ペルゴ、セシル」
「あれ、スタウトはいないのか?」
「彼は二日酔いでダウンしてるわ」
「はぁ!?」

 セシルの答えに開いた口がふさがらないガゼルだったが、

さんとの飲み比べに完敗した上に、無理をして飲みつづけたのが仇になったんですよ」
「・・・・・・」

 ペルゴの簡潔かつ明快な答えのおかげでガゼルはスタウトがいない状況を理解できていたのだった。

「そういえば、そのの姿が見当たらないが・・・」
「・・・っ!! そうだった! 早く助けに行かないと!!」

 急に慌て出したナツミが事情を話すことで、主にフラットのメンバーが慌てだすこととなった。
 なにせ、彼に危険が降りかかっているかもしれないのだから。





「・・・その必要はないよ」
『!?』





 突然かけられた声に全員が目を丸め、声の主を見やっていた。
 その先には、傷だらけで満身創痍のが立っている。
 刀を左腰に下げて、右腕の肘部分を左手で押さえていたのだが。

「もしやと思って来てみたけど……さんざ迷ったけど問題なかったみたいでよかった」
「な、なななな何があったんだよ!?」
「たっ、大変大変たいへんたいへんたいへんたい・・・(爆)」

 急に慌て出したハヤトとナツミを尻目に、

「・・・傷、治しますね」
「なにがあったんだい?」

 冷静なアヤとトウヤの扇動で、話を聞かせることになっていた。
 主に話すのは、もちろん召喚師であるキール、ソル、カシス、クラレットの4人。
 バノッサが「子分どもにやられて」といっていたので、召喚術がらみのことだという彼らたっての希望だった。

 とりあえず、自分に起きたことをかいつまんで話をする。
 まず、バノッサとの話のこと。
 フラットの戻ったところで数人のごろつきたちに襲われたこと。
 そして、そのごろつきたちが、サプレスの召喚獣に『憑依』されていたこと。

 それを話すことで、驚きが周囲を巻き込んでいたようで。

「やっぱ、アイツの使ってたのは召喚術みたいね」
「しかも、憑依召喚術とは・・・」
「なぁ、その『ひょういしょうかんじゅつ』ってのはなんだ?」

 召喚術の一種か?

 そんなガゼルの質問に、キールは真剣な表情でうなずいていた。

 憑依召喚術。
 召喚獣を人間に憑依させることで、身体能力の向上や特殊な能力の使用を可能とした召喚術である。
 もっとも、ガゼル自身すでにその術を使っていたため、それにはずいぶんと驚いていたのだが。

「悪意を持って憑依させれば憑依された人間は瞬く間に意識を失い、戦うだけの機械となってしまいます」

 サプレスの召喚術を得意とするクラレットが、そう口にした。
 ガゼルが使っていたのは、メイトルパの『クロックラビィ』。
 主にすばやさを向上させる、憑依のみの召喚術だった。
 それを知らずに使っていた彼も彼だが、もともと召喚術自体嫌いだったので仕方ないと言えば仕方ない。

「で、そのごろつきたちは・・・」
「あぁ・・・全員気絶させて北スラムに放り込んできた。いまごろカノンか誰かが担いで運んでるんじゃないか?」
『・・・・・・』

 やっぱり、彼も召喚獣だった。




「ゴホン・・・とにかく。これからバノッサを相手にするときは充分に気をつけるように」





 そんなトウヤの締めで、その場は解散。
 アキュート以外の全員はフラットへ戻ることとなったのだった。









第49話。
短いですがキリがいいのでこれにてゲーム中の第11話『炎情の剣』終了。
次回から『蒼の派閥』に入ります。


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