「うお〜〜〜〜い……さ〜け持ってこ〜い……」

 スタウトは酔っていた。
 酔いを超えて、泥沼に両足を踏み入れているようにも見える。
 レイドと共に酒場に入ってから1時間。
 机に転がった酒瓶は、十数本。

「ちょっとスタウト、飲みすぎよ」
「そうですよ。少しは自粛したらどうです?」
「う〜るへぇ〜よぉ」

 頭の頂点まで真っ赤にしたスタウトだったのだが。

「そうだぞ。まったく…飲みすぎはよくない」

 しらふのが、呆れた表情で机に突っ伏したスタウトを見下しつつコップの酒をあおっていたのだが。
 なみなみと注がれたオレンジ色の酒を一気のみしているにも関わらず、顔色すら変えていない。

「っていうか、貴方なんで酔ってる気配ないのよ……」
「なんでって、この世界の酒は度が弱すぎるんだ」

 君ら…ってかスタウトが酒に弱すぎるんだよ。

 はっはっは、と棒読みしているかのように笑う。

「…待たせたな」
「さあ、帰ろう……って、彼はどうしたんだ?」
「気にしないでください。酔ってるだけですから」

 ペルゴのため息を交えた答えに、ラムダを先頭に出てきたレイドは首をかしげたのだった。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第45話  話の内容





、レイドがどこに行ったか…知らんか?」
「は?」

 フラットに戻ってきてから、レイドは全員を集めて「もう戦う必要はないから」と告げると、いつの間にかいなくなってしまっていた。
 は居間でお茶をすすって、まったりしていたのだが。
 エドスの一言で表情を変えていた。

 部屋にもおらず、先生を務めている道場も休み。
 きわめて怪しい。何か、裏がありそうだけど。

「…なるほど。嘘だったわけだ」
「ローカス?」

 実はこのローカスという男、大のコーヒー好きらしく、とお茶とコーヒーのよさをお互いに語り合っていた仲だったりする。
 はただ「うまいんだ」というくらいの付け焼刃な知識だったのだが、ローカスのコーヒーに対する情熱といったら、それはもうすごいものがあったのは記憶にも新しい。

「レイドと、ラムダが話をつけたってことがだよ。、お前はレイドとアキュートの連中の所に行っていたんだろう? 何か知らないのか?」
「知らないよ。俺はラムダに会う前に止められてたし、俺が話を聞くのはお門違いだからな」

 レイドとラムダの関係は、周知の事実だ。
 だからこそ、彼らの真剣な会話・・・それも自分たちの今後のことを話しているのだから、それを同席して聞くというのもおかしな話だ。

。お前のその律儀な性格は確かに好ましいが、時と場所を選んだ方がいいぞ」
「ローカスが気にすることじゃないだろ。それに今はレイドの話だ」

 ローカスによれば。
 レイドは、決着を自分だけでつけるつもりなのだという。
 フラットの仲間は関係ないから、と。

「騎士だったあいつらにふさわしい方法でな」
「まさか・・・」
「そうだ。そのまさかだよ」

 つまり、彼ら・・・レイドとラムダは1対1の決闘をするつもりなのだ。
 正々堂々と。
 騎士らしい、スマートな方法なのだろうが。

「・・・バカな話だ」

 騎士というのは、そんなことをしなければ先へ進めない人種なのだろうか。
 確かに、双方とも譲れないものはある。
 しかもその考えは対極だ。
 だから戦う、というのは間違いではないかもしれないが。

「だったら、そのバカを早く止めに行かないとな」
「よし、手分けして情報を集めるんだ」





 というわけで、サイジェント中を走り回ること30分ほど。
 一度フラットで落ち合い、情報を交換しながら捜索したのだが。

「・・・たいした情報は得られなかったな」
「強いて挙げると・・・この街にいないってことと、アキュートの連中も一緒ってことくらいか」
「それで、サイジェントの中で情報を聞いていない場所ってあるんですか?」

 アヤがそんな質問を投げかけると。
 彼らが普段よりつかない場所が、挙げられていた。
 近づけば、きっと不要な争いがおこるからというのが主な理由だ。
 そこは。

「北スラムだな」

 答えたのはだった。
 全員が言うのを戸惑っていたようで、それを見かねて彼が口にしたのだ。
 ・・・ってか、誰かが行っただろうとみんながみんな考えただけだったする。
 面倒なことこの上ないから。

「じゃあ、みんなで行こうか。その方が、行動しやすい」
「トウヤの兄貴、それ・・・マジで言ってんのか?」
「『本気』と書いてマジだよ、ジンガ」

 誰もが、関わりたくない場所だ。
 そんな場所に、トウヤは全員で行こうと言っているのだ。
 無駄な争いが起こるに決まってる。

「そうよトウヤ…それはマズいって」

 やれ行こう、と歩を向ける彼を止めたのはナツミだった。
 やはり、面倒事は願い下げらしいが、情報がない以上どうしようもないのだ。
 だから。

「それなら、代表者数人で行ってきたらどうだ? もし何か起こりそうになったら、少人数の方が逃げやすいだろうし」
「ナイス! ソルもたまにはいいこと言うじゃない」
「『たまには』は余計だナツミ」

 ナツミの声を冷ややかに返しながら、ソルは全員に視線をめぐらす。

「そうだな・・・トウヤと、カシス、それにで行ってくるのがいいだろう」

 この人選は、間違いではないだろう。
 先手を切って北スラムへ向かおうとしたトウヤと、召喚術が使えて召喚師組の中でもっとも運動能力の高いカシス。
 そして、どんなときでもうまく立ち回ることができるだろうの3人。

「そんな・・・危険ですよ」
「今は・・・そんな悠長なことを言ってはいられないよ、アヤ?」

 名指された3人を案じ、アヤは眉尻を下げる。
 確かに、危険だとかそうでないとか言っている場合ではない。
 今この時間も、レイドが1人で危険に晒されているかもしれないのだから。

「・・・よし。それなら行こうか」
「トウヤ、早く来ないと置いてくわよん」
「ま、待ってくれよ・・・」

 を先頭に、トウヤとカシスが背を向ける。
 他のメンバーはここで待機、ということになるのだが。

、深崎くん、カシスさん!」
『?』

 声をかけたアヤに首だけを向ける3人。
 アヤはもじもじと言いよどんでいたのだが、

「あの・・・気をつけて」

 そう告げた。



「・・・もちろん。大丈夫さ」
「そうそう。アヤはちょおっと心配しすぎよね」
「まったくだ。いざとなったらさっさと逃げるしな」

 トウヤ、カシス、の順で口々に言葉を返す。
 3人で顔を見合わせて笑っているが、北スラムにはあのバノッサがいる。
 今まであまり姿を見せなかったが、いざ対峙すれば間違いなく逃げるのは困難になるだろうから。

「だいじょうぶだよ。ちゃんと帰ってくるから」

 ね。

 トウヤはなんの屈託もなく笑みを浮かべ、そうアヤに告げたのだった。







第45話。
ゲーム中第11話『炎情の剣』も半分過ぎました。
次回とその次でおそらく終わります。
そして、本来ならゲーム主が単独で行く北スラムですが、ここは3人で行かせました。


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