「なあ、知ってるか?」
『?』

 居間でくつろいでいると、ガゼルがうれしそうに席についているハヤトとナツミにたずねた。
 他にもリプレやエドス、ジンガや召喚師4人組もこの場にいるのだが、彼の目的は前者の2人らしい。

 ちなみに、まだ朝も早く病み上がりのはまだ起床していない。
 トウヤとアヤは、彼を起こしに行ったのだ。

「なんだよガゼル。ニヤニヤして?」
「きっと、えっちぃことでも考えてんでしょ」
「ばか、そんなんじゃねえよ。最近、街の連中がお前らのことを噂してるらしいんだ」

 お前ら、と言うからには、2人だけではないだろう。
 特に話のメインになっている2人に加え、今この場にいないトウヤとアヤも含めてのことだ。

 スラムに召喚術を使う人間がやってきて、城の三兄弟を痛い目にあわせている。

 それが、噂の内容らしい。

「ちょっとした、英雄あつかいだぜ?」

 にやりと笑って、ガゼルは2人にそう告げたのだった。




    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第36話  思わぬ来客





「でも、あまり有名になるのも困りますね」
「そうだな……」

 ひそかに英雄あつかいされているという4人の噂。
 それは口にしたクラレットを含む召喚師4人組。彼らは例外なく同じ意見のようで。

「バノッサたちのように、あなたたちを狙う敵が増えてしまうかもしれません」

 召喚術を使う召喚獣など、聞いたことがないから。
 つかまればきっと、実験材料にされてしまうでしょうから、と。
 クラレットはそう口にした。

「そうだよな。強いヤツってのは、敵をつくりやすいからな」

 なんとも、物騒なことを言う。
 今の状態でも、自分たちフラットの敵は多い。

 バノッサ率いるオプテュス。
 マーン三兄弟と騎士団。
 レイドが騎士だったときの元先輩であるラムダを筆頭としたアキュート。

 ガゼル曰く、

「考えてみりゃ、この街のほとんどの連中とやりあってるな」

 とのこと。
 この街で力のある集団とは、すでに交戦済みらしい。
 戦いたくて戦っているわけじゃないから、それこそタチが悪い。

「マスター、マスター! お客さんですの〜っ!」
「これまた、珍しい客だぞ・・・あ、みんなおはよ」

 挨拶をしながら、モナティに続いてが居間に姿を表す。トウヤとアヤはどこか引きつった表情をしているが、それも仕方ないと言うものだ。

「こんにちは」
「あぁっ! あなたはアキュートの!」

 そう。
 、トウヤ、アヤに続いて居間に登場したのは、

「あら、覚えていてくれたのね。私の名前はセシル。そしてこっちが・・・」
「ペルゴと申します」

 アキュートに所属している、2人。
 金髪で白を基調とした服を来た女性と、片目を閉じたまま前髪をオールバックにしている男性だった。

「今日は貴方たちにご相談があって参りました」

 挨拶もそこそこに、ペルゴはフラットへ現れた用件を話そうとしたのだが。

「ケッ、お前らの相談なんて、聞く耳もたねえよ」
「私たちが用があるのは、貴方じゃなくて彼らよ。思い上がらないで」

 ガゼルの言動に整った眉を吊り上げて、セシルはそう口にした。
 歯噛み、眉を吊り上げるガゼルだったが、

「まぁまぁ、落ち着けってガゼル」
っ、てめえ離せ!」

 に羽交い絞めにされて動けなくなっていた。

「さて」

 ペルゴは視線を4人に戻す。
 4人が机に腰掛け、その反対側にペルゴとセシルの2人が腰掛けた状態だった。
 話すなら、立ち話よりはよっぽどいいというものだ。
 それに、客を立たせっぱなしというのも人として気が引けるというものだ。



「ご相談というのは、他でもありません」

 召喚師でもないのに、召喚術が使えるからこそ。
 その力を役立ててほしいと。
 彼はそう4人に告げた。

「どういう意味ですか?」

 表情を険しくし、ハヤトが代表して尋ね返す。

 召喚術が使える人間が珍しいから。
 アキュートに召喚術を使うことのできる存在がいないから。
 理由はさまざまだろうが、

「貴方たちの召喚術の力が、私たちには必要なの」

 彼らが4人を求める理由は後者にあるらしい。

「先日の暴動は、我々にしても、不本意な結末としかいえぬものでした。わかっていたとはいえ、街の人々の反応は予想以上に消極的だったのです」
「人々の心に刻みこまれた先入観のせいよ」

 召喚師には勝てない。
 召喚師には逆らえない。

 そんな定義じみたフレーズが、街の人間を妥協させているのだと。
 ペルゴはそう説明付けた。

「だから、私たちは方法を変えることにした。人々の思い込みを消し去るために・・・」

 決意を露にしたキリリとした表情で。

「マーン三兄弟の長兄を・・・暗殺します」

 そう告げた。
 マーン三兄弟の長兄と言えば、花見騒動以来見ていないが、サイジェントの政務を取り仕切っている召喚師だ。
 確かに、膨大な税金や悪政で人々には恐れられているようだが、

「できるのかよ、そんなことがっ!?」

 ガゼルの質問も最もだった。
 彼はこのリィンバウムでも大きな力を持つ召喚師の1人だ。
 普通の人間では近づいたところで返り討ちに遭うのは確実なのだが。

「そのための方法も計画も、すでに用意してあります。が、それはまだ完璧とはいえません。足りない要素があるのです」
「それが、召喚術だと?」

 トウヤの言葉に、2人は軽くうなずいた。
 彼らが立てた計画だけでは、確実に成功とまではいかない。しかし、そこに召喚術の力が加われば、成功の確率が格段に上がるのだと。
 セシルはそう答えた。

「彼らを、そのためだけに利用するのか・・・ずいぶんと身勝手な話だな」

 友人として。
 仲間として。
 そして、同じ境遇である召喚獣として。

「自分たちの願いのために他人を巻き込むつもりなら・・・俺はあなたたちを許さないよ」

 目尻を吊り上げて、は2人を軽くにらみつける。
 殺気を込めてはいないのだが、腰の刀に手を添えた。

 ・・・巻き込まれるのは、俺だけで充分だ。

 自分だけならそれでもいい。
 だが、仲間がそのせいで危険な思いをするなら、黙ってはいられない。

「そんな、私たちはただ・・・」
「彼らを便利な道具として使いたいだけなんだろう?」

 違うか?

 ローカスは不本意だと言わんばかりの視線を、2人に向ける。
 今までの言動を聞いていれば、相手にそうとられるのも仕方ないのだが。

「あのときの俺のように、使い捨てのコマにするんだよなぁ?」

 彼の物言いは、大きな恨みが含まれているようにも感じられた。
 実際、使い捨てられたのだから。

 うなずいてしまえば、彼らも自分と同じ立場になるだろう。
 そのときのことを考えれば、そう言わにはいられないのだ。

「暴動や暗殺で行われる変革が、人々を幸せにできるはずがない。そんなものは、人々に不安と混乱をあたえるだけではないか!」

 レイドの言うとおりだ。
 暴動を引き起こして、戦っている人間たちを見捨ててそそくさと退散する連中だ。
 二つ返事で信用しろということこそ無理な話だ。

「なら・・・お前は何をしてきた? 人々の犠牲を否定するお前は、そのために何をしてきたのだ?」

 レイドの言に口をはさんだのは、いつのまに入ってきたのか、赤い甲冑に身を包んだアキュートのリーダー、ラムダだった。
 彼の顔はセシルに向かい、

「俺はお前にこんなくだらん交渉を頼んだ憶えはないぞ」
「ラムダさま、これは私の独断によるものです。セシル殿をとがめるのは間違いです」

 ラムダの視線がペルゴへと向かう。
 目を伏せると、

「部下が騒がせたことはわびておこう。今の話はなかったことにしてもらいたい」

 フラットの面々にそう告げた。
 マーン三兄弟の長兄であるイムランを暗殺するということが、この街にどんな影響をもたらすのか。
 それを理解して、今回の作戦を実行するのか。
 キールは険しい表情をそのままに、ラムダにたずねていた。

 今のサイジェントは召喚術の恩恵で成り立っているから。

 街の政務を取り仕切り、召喚術の運営を担っている彼を殺すことでこの街がどうなってしまうのか。
 答えを導くのは簡単なことだった。

「今の姿こそ異常なのだ」

 召喚師たちが現れる以前は、豊かではないにしてもサイジェントは平和な街だった。
 だからこそ、召喚術によって繁栄し、強いられている悪政もそのままというのは明らかに異常なことだと。
 セシルはそう告げた。

 昔の姿に戻るだけ。
 ラムダの隣にいるスキンヘッドの彼、スタウトはそんな一言で済ませているが。

「気持ちは、わからんでもないな」

 は、そんな言葉を誰にも聞かれないほどの小さな声でつぶやいていた。
 彼は召喚術が使えない。
 周囲の仲間はみな誓約はできないにしても、召喚術自体が使えないわけではないから。
 戦っている間は、それこそ彼らをうらやましく思ったものだ。
 召喚術なしでも対等以上に戦える今となっては、それも昔の話だが。

 召喚術がなくても生きていくことができるのは、まぎれもない事実だった。

 混乱は起きるだろうがな、とスタウトは告げて。
 アキュートのメンバーは、そのままフラットを出て行ったのだった。







第36話。
ゲーム中のだい09話にやっとこさ到達いたしました。
何のひねりもなくただ原作どおりに進めておりますが、それではつまらないですよね……なんとかしたいですが、ネタが浮かびません。


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