「こっちですっ!!」

 アヤを先頭に、一行は急ぐ。

 戦闘が始まってから、まださほど時間は経っていない。
 アヤを除く3人の実力をかんがみるに、気の毒なのはもしかしたら相手かもしれないが。

 しかし相手は召喚師の上に、まがりなりにもマーン家の人間。
 外見はアホみたいでも、意外と実力者なのだ。
 従属する召喚獣を大量に喚ばれでもしたら、ひとたまりもないかもしれない。

「おっ、剣の音が聞こえてくるぜ。すぐ近くだ!」

 盗賊を名乗るだけあり、ガゼルは自慢の聴覚をフル稼働させて音のした方向を指差した。

 次第にはっきり聞こえてくる、剣戟の音。
 3人は、未だ奮戦しているようだった。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第32話  マスター





 アヤを筆頭として後続部隊は、開けた光景を見て唖然とした。
 なぜなら、大量のサプレスの召喚獣たちがハヤト、トウヤ、ナツミとモナティ、ガウムの5人(正確には3人と2体だけど)を思いっきり包囲していたのだから。
 しかも召喚獣たちは全員が槍や剣といった武器を所持していて。
 5人の周囲には数体の召喚獣たちが横たわってはいるが、それは周囲を取り囲むそれのほんの一部にすぎなかった。

「たっ、大変です!!」
「頭数が違いすぎるな。私たちが遅れていたら、彼らは無事ではすまなかっただろう」
「よし。早いとこ助けに行くぞ」

 エドスの掛け声とともに、全員が戦場に散っていく。

「しっかし、あの金髪の人さ。妙にヘンなカッコよね。・・・なんていうか、キチガイ?・・・ぷぷっ」
「だ、ダメだろカシス。確かに時代遅れっぽいカッコしてるが、笑うのもキチガイ呼ばわりも失礼だぞ」
「それより、皆さん行っちゃいましたよ? 私たちも早く行かないと」
「・・・(笑)」

 取り残された召喚師4人組のうち、3人がこみ上げる笑いをこらえていた。
 特に、キールは顔すらそむけて真っ赤になっている。
 笑ってしまうため、直視できないらしい。

 クラレットの言葉に笑いを押し込んで、戦場へと身を投じたのだった。








「3人とも、大丈夫か?」
っ! それにレイドさんも!」
「なんとかね。助かったよ、みんな」
「後少し遅かったらやられてたかもしれないな」

 とレイドで中央の5人の元へ駆け寄って、安否を尋ねる。
 全員どうやら元気のようで、まだまだ戦える、という自信に満ちた笑みを2人に向けた。

「全員で周囲の召喚獣たちを無力化してるから、私たちで元凶を抑える。いいね?」

 レイドは簡単な作戦を立てると、その『元凶』を見やる。
 一昔の王子様風の上着に、かぼちゃパンツ。
 流れるようにきれいな金髪を除くと、とてもじゃないが大人には見えない。むしろ、笑いがこみ上げてくると言っても過言ではなかった。

「ぶっ・・・!」

 は彼を見て、噴出しそうになるのを慌てて抑えたのだった。

「・・・カムランか」

 レイドは表情をゆがめる気配もなく、彼を見やる。
 以前から見ていたので、慣れてしまったのだろうか。
 彼はサモナイト石に魔力を通しつづけ、手のひらの紫色の石が常に光を帯びていた。



「華麗なる私に従い、出でよっ!!」

 カムランの呼び声に応えて、具現したのは小さな悪魔だった。
 ケケケと笑うと、両手を天に掲げる。
 すると、虚空から現れたのは5本の槍だった。
 これは、以前キムランが使っていたものと同種の召喚術。

「!!」

 は両の目を見開いて、迫る槍の群れをすべて叩き落した。
 金属音が響き渡り、5本の槍が地面に落ちて消えていく。

「なっ・・・!?」

 カムランの表情が驚愕へ変わる。
 は以前のように刃こぼれしているのではないかと譲り受けた刀を見るが、刃こぼれはおろかキズ1つついておらず、淡く白い光が溢れ出てきていた。
 それを見て、安堵する。
 間違いなく、以前のものよりはよっぽどスゴイ刀だ。間違いない。

 『その刀は、槌を振るったわしでさえどのような力を秘めているかわからない。だが、間違いなくとんでもない刀なのは確かじゃ』

 そんな特殊な力があるのなら、それは今回のような強度の問題ではないのだろう。
 強度が上がったのなら、それはウィゼルだってわかるはずだ。

「うわ、すっご」
がスゴイのは認めるけど、アホみたいに口あけてないでカムランのところに行くよ、ナツミ」

 刀を鞘に納めるを眺めてナツミは感嘆の声を上げたのだが、トウヤはそれを一蹴してみせる。
 5人はこぞってカムランの元へと駆けていった。
 周囲の召喚獣も散り散りになったフラットのメンバーがあらかた倒していたので、もう動き出してもなんら問題はない。



 ・


 ・・


 ・・・



 結局。

「くっ・・・貸しておくぞっ!!」
「なにをさ?」

 の返し文句を聞くことなく、キチガイ召喚師ことカムランはフラットの面々に背を向け、雑踏へ消えていったのだった。


















「モナティ。もう泣くなよ?」
「うっ・・・えぐっ・・・」

 悲しみに駆られ泣きつづけるモナティの肩に手を置いて、ハヤトが慰める。

「ごめんね、ガウム。モナティのせいではぐれになっちゃったですの・・・」
「きゅー・・・」

 はぐれになった。召喚した召喚師も、すでにいない。
 つまり、彼女たちは帰る家をなくしたと言うことになる。
 自分たちもはぐれであるせいか、ハヤト、トウヤ、ナツミにアヤもどこか浮かない表情をし始めてしまっている。

 ・・・はぐれになった気持ちもわからないでもない。
 しかし、にはかける言葉が見つからなかった。
 自分は最初からはぐれとして召喚されたので、『捨てられる』という経験をしたことがないから。

「・・・君のせいじゃないよ、モナティ」

 彼女たちは、自分たちを拾ってくれた団長の恩義に報いるために、必死に努力してきたのだ。
 トウヤは自分たちのことを二の次にし、視点を下げると笑いかけた。

 ・・・君は、悪くないんだ、と。
 そう言い聞かせて。

「あたしたちもはぐれなのよ」
「え・・・」
「私たちも召喚されて、どうやら捨てられてしまったみたいなんですよ」

 苦笑し、アヤはそう口にした。
 本来なら考えたくもないはずなのに。自らそう口にできることに、彼女の強さみたいななにかをは感じた。
 仲間がいればこそ、なのだろう。

「俺たちと一緒に探そうぜ。この世界で一番、モナティたちが幸せになれる居場所を、さ」

 な?

 ハヤトはできうる限りの笑顔を浮かべ、そう口にした。
 自分たちには居場所があった。運がよかった。
 だから。一時的でもいいから、自分たちが彼女の居場所になってあげよう。
 4人の考えていることは同じだった。

「ううっ・・・ありがとう・・・」

 ぐしぐしと涙を拭うが、拭ったそばから溢れてくる。
 目をぎゅっと閉じて、




「ありがとうですのっ、ご主人様〜〜っ!!」
「きゅーっ!!」




 全員、目が点になりました。
































「ぐっ・・・はぁ、はぁ、はぁ・・・」

 なんだろう。
 大怪我もしていないし、健康体なはずなのに。

 身体がだるい。
 今はまだ軽いが、めまいがする。

 心なしか、熱もあるんじゃなかろうか・・・

 動悸も激しい。




 そして・・・




 なんでだろう・・・




 とても・・・









































 眠たい・・・



















































第32話。
夢主に異変の話でした。
カムランは……どうでもいいっす。


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