「よう、どうしたんだよ。こんなところで4人でさ」
「あ、・・・」

 ハヤト、トウヤ。ナツミ、アヤ。
 ウィゼルから刀を受け取ったはフラットに戻ってきて最初に発した一言に、この4人はいっせいに彼を視界に収めた。
 彼らの表情はどことなく、元気もなさそうで。
 を見るなり苦笑を浮かべ、「おかえり」と告げた。

「昨日のこと、気になるのか?」
「ならないわけ・・・ないじゃないか」

 誰の犠牲もなしに、反乱を止める。

 アキュートという名の反乱分子が仰いだ抗争は、騎士団と召喚師の介入で見事に収まっていた。
 それより早く、そして犠牲を出さずに反乱を止めようと奮闘したのだが、あえなく失敗に終わってしまったために4人は激しく落胆していたのだった。
 気にしたらダメだ、というキールたちの言葉もあったのだが、どうしても気にしてしまう。

「何度も言うようで悪いけど、気にしたらダメだ」

 自分も止めようと思った。
 でも、人間同士が力をもってぶつかり合えば、犠牲が出るのはあたりまえ。

「誰も犠牲を出さずに人間同士の衝突を止めるなんて、所詮は奇麗事なんだよ」

 その言葉に4人はをにらみつけるが、動じることなく言葉をつむぐ。
 刺すような視線を感じながら、ため息をつくと、

「俺も、そういう考えは嫌いじゃない。でも・・・」

 志半ばで死んでいった人間を何度も目にして、得た教訓だった。
 その度に、感じてしまう。

 無力な自分。
 何もできない自分。
 そして、母を殺したと自負する弱い自分。

 それらの存在を。

 だからこそ。

「気にしたら・・・戦うことなんて、できやしないんだ」

 は、4人にそう告げた。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第30話  暴動その後





「・・・・・・」

 あまりにジメジメした雰囲気に痺れを切らしたリプレは、シッシと4人を建物から追い出し、チビッコ3人衆を連れてサーカスへ行ってしまっていた。
 楽しいものでも見れば気分も晴れるだろうという、彼女なりの配慮である。

 庭で新しい刀の具合を確かめていたところに、エドスとジンガが連れ立って出かけていくのが見え、声をかけると。

「へへへ、俺っちさ。エドスと同じ仕事場で働くことになったんだ」
「力仕事の人手としては、申し分ないからな」

 エドスの仕事は石の切り出し。
 よほどの力がなければ、勤まらない仕事である。
 修行にもなるしな、と明るく笑って見せたジンガは、どこか嬉しそうだった。

「無理はしないようにな」
「わかってるって!」
「それじゃ、あとでな」

 2人はそれぞれに告げると、建物を出て行った。
 俺も、何か仕事したほうがいいよなぁ・・・
 出て行く2人を見送ったは、そんなことを考えたのだった。




「しかし・・・」

 気を取り直し刀を抜くと、その刀身は刃の部分を除いてとにかく白い。
 さらに太陽の光を反射する光とは違う、別の光が放たれているのが感じられた。

「本当に、すごいな。コレは・・・」

 発される淡い光と、感じる力。
 ウィゼルは「お主の経験が詰まっている」と言っていたが、本当にその通りだと思った。
 魔力が詰め込んであるわけではない。
 純粋に、自分が歩んできた道が刀を通じて伝わってきているような感じ。

 軽く振ってみると、ヒュ、という風切り音が耳に入り、光る刀身の残像を認めることができる。
 今までのものとはどこか違う力。
 島の抜剣者たちの持つ剣と同等か、それ以上ではないかと感じられた。

「俺に扱えるのかな・・・こんな刀」

 自分の・・・自分だけの力。
 ウィゼルはそうも言っていたが、とても自分に使うことができるのか不思議でならない。


〜!」
「?」

 刀を納め、声の方角を振り向くと、リプレが笑顔で立っていた。



「俺になにか用事か?」
「夕飯の材料を買ってきて欲しいんだけど・・・いいかな?」
「あぁ、お安い御用だ」

 というわけで、渡された紙とお金を手に街へと出たのだった。






「・・・」

 工場区。
 暴動の跡はまだ新しく、折れた剣や召喚術によってえぐられた地面。そして、飛び散っているようにそこらじゅうにこびりついている血痕が目立っていた。
 商店街へ行くにはここにくる必要はないのだが、なぜか足を運んでしまっていた。

「・・・っ」

 サーカスへ行った4人にはああ言ったものの、暴動を止められなかったのは悔しい。
 ここで起こった出来事を思い返してうつむき、軽く歯噛みして見せた。



「そこにいるのは誰です」
「っ!?」

 急にかけられた声に、思わずうつむいていた顔を上げる。
 その先には、昨日に市民公園で見た少女が訝しげな目を向けていた。
 彼女の後ろには、上官だろう白い甲冑に身を包んだ男性の姿がある。

「・・・なぜこのようなところにいるのです?」
「ここで、暴動が起こったって聞いたので」

 自分もあの暴動の場にいた、などということを悟られてはマズイ。
 そう判断してか、無表情で彼女にそう答えた。

「・・・あなた方は?」

 実は姿は知っているのだが名前は知らなかったのだ。

「ああ、自分は騎士団長のイリアス。彼女はサイサリスだ」

 簡単にだがイリアスはそう説明を加えて、

「君も知っていると思うが、ここは暴動があったんだ。近づかないほうがいい」

 そう口にしていた。

「暴動を率いていた連中がまだ、ここに隠れているかもしれません」

 というのが、理由らしい。


「ここで暴動を起こした人たちはどうなったんです?」

 自分もアキュート同様に見殺しにしてしまったから。
 もちろんそのことを2人に言うことはなかったが、とにかく気になっていた。

「心配するな。ほとんど全員が武器を捨てて、おとなしく捕まったよ」

 騎士団はむやみに人の命を奪いはしない。

 レイドと同じ言葉を口にしたイリアスを見て、は内心で安堵していた。
 自分が関わった場所で人が死んでしまうのも、それを見てみぬふりをしてしまうのも御免だったから。

 すいませんでした、と一言告げると、その場を離れて商店街へ向かったのだった。





「ただいまー」

 食材を買って戻ってきたときには、サーカスに行っていた4人が帰ってきており、居間に集合していた。
 どことなく、硬い表情をしていたのだが。

「そいつ、バカじゃねえのか?」
「ちょっとガゼル。いきなりバカってのは・・・あ。、ありがと」

 リプレに荷物を渡すと、会話に参加しようと空いたイスに腰かける。
 事情を聞くと、話題はサーカスでのことだった。

 サーカスに出てきた召喚獣だという2体。
 召喚師に死なれて途方にくれていたところをそのサーカスの団長が拾ってくれたらしい。
 失敗ばかりでちっとも恩返しできていないけど、いつか団長の役に立ちたいのだと。
 ガゼルのセリフは、その発言に対してのことだった。

「どう考えても、サーカスの団長に利用されてるだけだぜ?」

 その召喚獣の名前はモナティとガウム。
 2人はこの世界の知識をほとんど知らないみたいだった、とナツミがそう口にした。

「それだと、だまされているのに気づかなくても仕方ないですよね」

 自分たちも、一歩間違えていれば同じ道を歩んでいただろう。

 呟いたアヤに続くようにハヤトはそう言うと、表情に影を落としたのだった。




 結局。話し合った結果、同じ境遇で面識のあるハヤトにトウヤ、ナツミとアヤの4人でモナティとガウムに自分たちがだまされていることを伝えることになり、4人は意気揚揚とフラットを後にしたのだった。






ついに第30話を突破しました。
モナティ&ガウムは次回の登場です。
なぜか、文章が書きづらくていけませんね。


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