空は晴れ。
 雲はなく、蒼穹が視界を覆い太陽の光に目を細めた。

 手には昨日ダメにしてしまった黒塗りの刀を握り、とある建物の前に立っていた。

「ウィゼル、いるか?」

 南スラムの外れ。
 そこは、かつて敵として戦い、刃を合わせた男性の家。
 返事も待たずに、中へと足を踏み入れる。
 普通ならまずいのだが、相手が相手だから気にすら止めない。

 目的の男性は、すぐに見つかった。
 赤く光を放つ炉の前で頭に白い布を巻き、使い込まれて黒ずんだ前掛けをつけて。
 病気を押して、熱で朱に染まった1本の鋼にその槌を振るっていた。


 キィン


 キィン


 槌を振り下ろす度に鋼からは赤い火花が飛び、普通の鍛治師ではありえないような何か白い光が槌と朱いの刀身の周囲を飛び回っていた。
 キィィン、とさらに甲高い音がなったかと思うと、それ以降槌の音がやみ男性が背後を見やると。

「わ、悪い。勝手に入った」

 は苦笑いを浮かべて、刀を持ったひらひらと手を振ったのだった。





    
サモンナイト 〜築かれし未来へ〜

    第29話  界を絶つ風





「よく来たの」

 苦笑いを浮かべるに、ウィゼルは頭に巻いた布を取り去る。
 槌を置いて立ち上がると、微笑を浮かべた。

「あ、あぁ・・・」
「いったい、今日はどうしたんじゃ?」

 それを聞くと、逃れることはできまいと刀を差し出す。
 受け取ったウィゼルは鞘から刀身を抜くと、

「おぉ・・・」

 その惨状に目を丸めたのだった。




 ・



 ・・



 ・・・




「無謀じゃの。お主は昔からそうであったようだが・・・」

 思い立ったら動かずにはいられない。
 互いに刃を合わせたからか、そんな性格を彼は熟知しているようだった。
 今回は、人助けのために召喚術の前に飛び出して。
 普通の刀では召喚術に耐え切れないのはわかりきっていたことなのに、はつい、いつもの調子で飛び出していたのだ。
 今まで使っていた5つの穴のあいた刀――神風(ミカゼ)はそれほどにスゴイ刀だったのだと、改めて理解できたというものだ。

「まぁ、ちょうどよかったと言えばちょうどよいな」
「は?」

 ウィゼルは先ほどまで打っていたまだ朱色を残した刀身を指差し、それを先ほどまで抑えていたはさみのようなもので挟み込んで持ち上げると、ためておいた水の中に突っ込んだ。
 ジュウウ、という音とともに白い蒸気が吹き上がり、徐々に熱が冷めていく。
 蒸気が消えたところでその刀身を引き上げると。

「・・・・・・」

 暗がりの中を照らし出すように、それはとても白かった。





「これにはな、お主が今までに体験・経験したことのすべてが詰まっておる」
「けい、けん・・・?」

 先ほどまで置いてあった石机の上にそれを置くと、がダメにしてしまった刀の黒い柄と鞘をその真っ白の刀身にはめ込んで、目釘を打ち込んだ。
 カシン、と鞘へ納めると、つかつかとに歩み寄る。

「ほれ」

 お主のものじゃ。

 ずい、と差し出す。はウィゼルの顔と差し出されたそれを交互に見やると、

「ありがとう」

 受け取った。
 納めた刀を再び抜くと、白く淡い光を帯びる。
 どこか、自分が持ったから光を放ったかのような感覚に襲われた。

 刃の色は鋼のそれで、白いのは峰部分のみ。
 全部が全部白いというわけではないのに、なぜか刀身全体が白いように感じられる。

「世界を斬り絶つ鋭き風・・・絶風(ゼップウ)。それが、この刀の名じゃよ」

 ここまでいい仕事をしたのは何十年ぶりじゃ、と。
 ウィゼルは病気の身体をおしてまで、自分のためにとその腕を振るってくれたのだ。
 感謝を、せねばならないだろう。
 ふっ、と目を閉じて、

「ありがとう、ウィゼル。これで、俺もまだまだ戦える」
「なに、わしも気持ちのいい仕事ができて嬉しかったわい。それと・・・」

 先ほどのやわらかな表情を消し、真剣な顔つきでを見やると、

「その刀は、槌を振るったわしでさえどのような力を秘めているかわからない。だが、間違いなくとんでもない刀なのは確かじゃ。気をつけて使うことじゃ」
「わかった」

 鞘に納め、それごと腰に装着すると黒がかった赤い瞳をウィゼルに向け、深々と頭を下げた。
 そして、くるりと彼に背を向ける。

「オルドレイクが、なにかをしようとしておる。重々気をつけることじゃ」
「恩に着るよ」

 そう告げて、建物を出たのだった。

「お主は、いったいいつまで戦いつづけるつもりなのじゃろうな・・・」

 ウィゼルがそんなことをつぶやくが、に届くことはない。

「まぁ、いいじゃろ」

 1人、残されたウィゼルは満足そうな笑みを浮かべると、さらに炉へと足を進める。

「わしは老いても魔剣鍛治師。課せられた使命は・・・まっとうしてみせようぞ」

 部屋の置くから持ってきたのは、どこから入手したのかも定かではない大量のサモナイト石。
 それらを床にぶちまけるかのように広げると、長剣2振りと短剣2振り・・・計4振りの刃物を手に取った。

「わしは、わしの道を行く。お主は・・・お主の道を行け。どうか・・・世界を駆ける風とならんことを」

 ウィゼルは、再び槌を手に持ち、振るい始めたのだった。







第29話です。
夢主、ニューウエポンをゲット。
2連載まで、この武器で大暴れです。
デュエル夢もこの武器を使っています。


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